石原都政の検証@ 〜巨大財政規模と巨額土建事業推進〜 青山貞一 2007年2月8日 |
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今年の夏までに行われる選挙の序盤の目玉は、東京都知事選挙である。ここでは、あまり知られていない都政の実態について報告する。 ◆予算規模・財政規模 以下の表1にあるように、一般会計規模で見ると東京都の財政規模はゆうに6兆円を超えており、29ある特別会計を含めた財政規模は実に12兆4千億円にも達している。 ※東京都のGDPは、数年前のカナダ一国と同じ規模である。 図1は東京都の一般会計の予算規模を過去約15年間を見たものである。グラフより明らかなように、東京都の一般会計予算の規模は、平均でも6兆円を超えており、平成4年には7兆2千億円にも達していることが分かる。 ※これら東京都の予算規模は小さな国家はもとより、なまじの国家よりはるか大きい。
図1 東京都の財政規模の推移 出典:東京都 世界有数の中央集権国家である日本は、政治だけでなく経済も東京都に一極集中している。 その結果、地方自治法で一つの自治体に過ぎない東京都は、日本の首都として1200万人を超える人口が住み、多くの巨大企業の本社が立地することで、他の道府県に比べはるかに富裕な税収を得ている。 東京都の税収には、都民税、事業税、固定資産税、不動産取得税、事業所税、繰入地方消費税、自動車税、自動車取得税、たばこ税、ゴルフ場利用税などが含まれる。それらの合計は平成18年度では予算レベルで4兆5円億円にも達している。 平成17年度実績で見てみると、東京都の一般会計予算は5兆8,540億円、その72.6%にあたる4兆2,508億円が都税で賄われており、図2にあるように、東京都の歳入総額に占める国庫支出金の割合は6.7%、地方特例交付金の割合は3.0%、地方譲渡税が1.1%もあり、東京都の公債は6.2%に過ぎないのである。 図3 東京都の歳入構造 出典:東京都 要約的に言えば、東京都は極度に中央集権化した日本の首都であることの強みで、他の道府県が極度な財政悪化、累積債務に苦しんでいるさなか、歳入の約3/4が都税で賄えられているのである。 こんな自治体は東京都以外にない。 まさのこれは極度に中央集権化している日本と言う特殊な国の地の利と言う恩恵を東京都がひとり享受していることに他ならない。 そんなことから、東京都が平成16年5月に発表した「地方分権改革に関する東京都の見解」の中で次のように述べている。 「中央集権・官治の統治のシステムは歴史的使命を終えた」と言いつつも、税制面で極度な地の利の恩恵を受けていることについては、「東京独り勝ち論」が意図的に流布されているとして、問題のすり替えをしている。 いずれにしても東京都の独り勝ちは、何も石原都政の努力と言うよりは、間違いなく極度に中央集権化している日本の首都という特殊な事情によっているのである。 ◆臨海開発 その東京都における財政悪化の主因とされたのが東京臨海副都心開発である。 石原都知事は議会ともどもこの東京都臨海副都心開発を強引に推し進めてきた。この臨海副都心開発のシンボル的存在だったのが都市博であった。青島前知事は、結果的に都庁の官僚に取り囲まれ沈没したが、都市博を中止した功績は大である。 しかし、石原都政となってから東京臨海開発にはすでに2兆円が投じられている。そして今後さらに1兆円をつぎ込もうとしている。 臨海副都心は石原都政による数々のてこ入れにもかかわらず、第三セクターのテナントの多くは撤退、空室が目立っている。これら第三セクターの多くは、東京都が銀行などの金融機関などと共同で出資してつくったものである。 ◆第三セクター経営 その象徴的なものとして、株式会社東京テレコムセンターがある。 株式会社東京テレポートセンターは、東京都などが出資する第三セクター会社であり、臨海赤字3セク5社の一つで、多額の負債を抱え事実上経営は破綻している。 東京都の放漫経営の象徴ともなったこの東京テレポートセンターの財政破綻の経緯を以下に見てみる。ちなみに石原都知事の就任は1999年である。
東京テレポートセンターの負債総額である約3800億円は、他の道府県であれば、自治体そのものの経営が破綻し、夕張市化するほど巨大な物である。 ◆巨大環状道路 石原都政は、公共事業天国日本の債務内訳のトップをなっている道路事業でも就任以来、強引に建設を強行してきた。本来、国、地方の累積債務(借金)の元凶である道路事業の最右翼である幹線道路事業についても、ことごとく強行突破をはかってきた。 たとえば、石原知事は永年凍結されていた東京外郭環状道路(世田谷区部分)を盟友(?)の扇千景建設大臣(第2次森内閣当時)とともに、強引に着工させた。 ※ 鷹取敦:東京外郭環状道路「地下化」のまやかし 東京多摩部の巨大幹線道路、首都圏中央連絡自動車道(八王子、秋川部分)についても、なし崩し的に建設を進め、中央道との交差する八王子ジャンクションでは、激しい住民側の反対を最後は土地収用法で強制収用し建設を強行している。 ※ 意見広告:高尾山が泣いている! ※ 青山貞一:民営化も何のその! 既成事実の積み重ねで進む巨大道路建設(圏央道) ※ 鷹取敦:高尾山の自然と生活環境を守る天狗集会参加記 これらは、まさに「道路が通れば道理が引っ込む」というたとえの通り、 建設省道路局型の強引な事業手法の典型である。 ◆ダム 、さらに、少子化と産業構造の変化からまったく必要性に乏しい巨大ダム開発についても国と歩調を合わせ開発を進めている。群馬県上野原の八ツ場ダム(やんばと読む)である。このダム計画は50年も前に立案された国直轄の事業である。 この間、東京都は何度となく非現実的な需要予測によりこのダムの財政面の”支援”を群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉の各県と一緒にしてきた。いうまでもなく、首都圏に巨大なダムは利水、治水を含め実質的に不要となっているにもかかわらず、すでに数1000億円を浪費し、今後を含めると実に8000億円から一兆円の税金や建設国債、地方債がこの巨大事業につぎ込まれようとしている。その中心に東京都がいるのである。 このように、石原都政は国と歩調を合わせ、国、地方の財政を悪化させる不要な各種土木系公共事業を住民を蹴散らしながら推し進めてきたといえる。 ◆ゴミ処理 さらに石原都政は、土木系公共事業だけでなく、環境系公共事業、すなわちゴミ処理問題でも強引かつ独裁的とも言える方法で事業を推し進めてきた。 世界有数の巨大都市、東京のゴミ問題は、思考停止の「都会で燃やし田舎に埋める」を繰り返している。 石原都政は、この日本流の劣悪な資源浪費、環境汚染型のゴミ行政を継続してきた。 とくに石原知事は国に働きかけ、土地収用法を改正させてまで、東京都日の出町に新たな二ツ塚最終広域廃棄物処分場を強制収用により建設した。 日の出町には、すでに世界有数規模の巨大な谷戸沢最終処分場がある。 過去数10年、日の出町の住民は高濃度ダイオキシンや重金属など有害物質を含む焼却灰のリスクを一手に受けてきた。 ※ 鷹取敦:「日の出」に象徴される日本のゴミ行政 ※ 鷹取敦:23区廃プラ焼却「実証確認」のまやかし にもかかわらず石原知事は何らまもともなゴミの削減、リサイクルなどの政策、施策をとらぬまま、土地収用法改正により処分場の土地を強制収用してまで新たな巨大な最終処分場を建設を強行したのである。 一方、23区のゴミは東京港の中央防波堤に処分されている。世界一の焼却主義となっている東京都のゴミ焼却は、いくら高い煙突にしても最後は半閉鎖性水域である東京湾にダイオキシンや重金属類が落ちる。 その結果、東京湾内のスズキ、コノシロなどの近海魚や貝類は米国の警告基準からすると、1ヶ月に一度も食べれないほど高濃度となっている。 ※ 環境総合研究所:魚介中のダイオキシン汚染の実態報告 〜行政調査データをもとに〜 ◆大気汚染 石原都知事が2期就任後、ある程度評価に値する施策と言えば、それは、一極集中で悪化し、高値安定化している大気汚染を削減したことぐらいである。 具体的には、首都圏の7都県市と共同で、トラック、バスなど直噴ディーゼル車にDPFと言うひとつ数十万円から100万円する汚染除去フィルターを強制的に付加させることで、浮遊粒子状物質(SPM)を削減させた。 この唯一評価に値する施策も、DPFを販売する会社のひとつ、三井物産が効果を水増しして東京都に報告し、東京都の担当者がその水増しを見過ごしていた。 これらDPFには東京都などからの補助金が出されている。何ともお粗末な話である。
石原知事のこの施策は、永年、喘息など健康被害を受けてきた患者の緊急避難的にはまだしも、中長期的には間違った施策である。 というのも、東京都は問題の本質的な解決、すなわち経済、政治、文化などすべtねお一極集中に目をつむり、同時に土地利用の規制を大幅に緩和しているからである。 本来、東京都は都市の成長管理政策をとるべきであり、慢性的な渋滞、それも桁外れの交通量、トリップをもつ自動車交通そのものを削減させることが問われている。 活性化のなのもとに、もともと世界有数の巨大都市、東京をさらに肥大化させる野放図な都市を土地利用、容積率の規制強化、都心部への自動車流入の抑制強化などを推進すべきである。 つづく |