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石原都政の検証D

〜異文化交流としてのオリンピック開催!?〜

青山貞一


2007年3月15日


 石原都知事は以下にあるように、2007年3月15日「宣戦布告」で選挙公約を公表した。

 そのひとつに東京での2度目のオリンピック開催のための大会招致がある。

◆品位、品格のなさ

 石原氏は上の公約のなかで異文化コミュニケーションからオリンピック開催の必要性を強調している。多くの日本人が海外に行く中、東京始め日本に海外からお客があまり来ないと。

 本気でそう思っているのだろうか?

 日本、東京に最も近い外国はいうまでもなく韓国、中国、台湾である。

 しかし、石原都知事はそれら観光客予備軍を「三国人」と呼ぶにはばからないことに象徴されるように、中国、韓国などに差別的な発言の限りをつくしてきた。これでは、異文化コミュニケーションも何もないだろう。

 およそ国際化、文化、異文化コミュニケーションを語る資格が石原都知事にあるとも思えない。

 異文化コミュニケーションが最も必要なのは石原慎太郎氏そのものとも言える。差別発言や誹謗中傷と思われる言いたい放題の言動の圧倒的多くは、当事者がいない場所、それもテレビなど一方通行的なメディアにおいてである。

 いやしくもコミュニケーション、それも国際、異文化のコミュニケーションを問題にするなら、まずご自身のコミュニケーション能力、リテラシーを高めることが先ではないかと思う。

◆物価が高い

 海外から東京にお客が来ない理由、いやこれない理由は、東京のあらゆる物価が異常に高いことである。これは海外から来るひとびと、とくに若者にとって致命的である。

 これはお隣の韓国のソウル市と比べれば歴然としている。

 お隣のソウル特別市は、バス、地下鉄、列車、タクシーなど公共交通料金がきわめて廉価だ。地下鉄は1時間近く乗っても80円から約130円だ。しかも、どの地下鉄に乗り換えても、都営から東京メトロへの乗り換えるよるバカ高料金などない。

 ソウルから世界遺産都市、水原などに行く際に、列車が地下鉄に乗り入れている長距離鉄道の場合でも、交通料金は200円とかからない。

 バスは路線、高速ともに日本に比べはるかに安いのである。

 ありとあらゆる歴史的、文化的資産、遺産、建築物、構造物、公園などを残し、しかも無料から最高でも350円と無料同然の入場料で市民、海外からの観光客に開放している。

 食べ物はどうだろう。ソウル市中心部、東京で言えば有楽町、八重洲に相当する地域である鐘路地区での夕食は日本円で約800円あれば十分である。

 日常物価も南大門市場、東大門市場などの市内にたくさんある市場に行けば、どんな日常品でも超廉価で購入できる。

 いずれにしても海外から来る観光客やバックパッカーにとって、東京は公共料金はじめ何でも高額であり、異文化コミュニケーション以前の問題がなっていないのである。

◆歴史、文化資産保存

 歴史、文化的資産、建築物、公園などをことごとく壊してきたことと無縁でない。

 歴史的、文化的資産にしても、ソウル特別市内には、世界文化遺産である宗廟(チョンミョ)、昌徳宮(チャンドックン)、景福宮、国立民族博物館、故宮博物館、国立中央博物館、ソウル歴史博物館、安重根義士記念館、青瓦台大統領府(40数年ぶりに一般公開されている)、西大門刑務所歴史館などが無料同然で全面公開されている。

 江戸東京博物館のようなちゃちなつくりものとは違う。しかも、昌徳宮西大門刑務所歴史館に象徴されるように、日本の植民地支配の痕跡をしっかり海外からの探訪者に見せる場所も多い。

 きわめつけは、ソウル市中心部を流れていた清渓川が埋め立てられ二階建ての高速道路となった後、道路を全面的に壊し、運河を復活すると言う離れ業もやっている。

 東京はと言えば、江戸の中心、日本橋に象徴される水辺、運河ははちんけな首都高速道路のために大部分が埋め立てられどの上にアグリーな道路がのさばっている。東京都心部はどこも高架道路。さらに一般道路も歩道が狭く到底安心して歩けない。

 ハコモノ開発と経済活性化一辺倒の東京都とは雲泥の差なのである。それが多くの旅行客を海外から集客している大きな理由である。

オリンピック開催に絡むハコモノ利権

 ところで、石原都知事の東京オリンピック開催については、早くからいろいろな批判が出ている。そのなかには、またぞろ利権に関するものもある。たとえば、

■ 《2016年東京五輪招致》
  早くもささやかれる森派・石原都知事“巨大利権"

  日刊ゲンダイ  2006年 9月 1日号

 2016年夏季五輪の立候補地が東京都に決まった。

 都は競技会場を都心に集め、財政負担も少ない「世界一コンパクトな大会」をブチ上げている。しかし関係者からは「ヒドい皮算用」という声が圧倒的。

 それでも都が五輪招致をゴリ押しした裏には、ベラボーな利権が見え隠れする。

◆ 結局、いくらカネがあっても足りなくなる ◆

 既存施設の利用を掲げる都の計画では、五輪に使用する36会場のうち既設は22、仮設は12、新設はメーン五輪スタジアムなど2会場だけ。

 施設整備費4956億円を見込んでいるが、都の負担はたったの453億円だ。残りはほとんどを国や民間資金で賄ってもらう計画。

 大会運営費2943億円も国や民間にオンブにダッコで、都の負担はゼロ。石原都知事は「民間の協力を得ながら努力を重ねる」とか言っているが、すべて絵に描いたモチだ。

 「資金集めはあくまで見込みで、国や民間の協力が100%得られる保証はありません。

 節約のために既存施設の改修も打ち出していますが、駒沢オリンピック公園などは老朽化が著しく、新設と変わらないくらいカネがかかる。

 日本武道館は使えても、近くに練習場がないので、新たに仮設の建物が必要です。

 最終的に都の負担がどれだけ膨れあがるかも分からない。

 都の計画では五輪が開催されなくても16年夏までにすべてを完成させる予定です。最初から再開発ありきとしか思えません」
(都関係者)

 .......

 東京都がオリンピック開催関連の準備会を開催したところ、ゼネコンの営業関係者ばかりが集まったと言う記事をみたことがある。

 愛知万博開催でも同じだったが、この種の大イベント開催の背後には、ハコモノ、土建、公共事業関連の利権が渦巻いている。何も利権にありつこうとしているのはゼネコン、ミニゼネコンばかりではない。都市産業者、マンション建設業者まで、さまざまである。

最終決定される可能性は?? 
 
 東京でのオリンピック開催が決まるのは、2009年10月に予定されている国際オリンピック委員会(IOC)である。この場で、2016年のオリンピック大会開催都市が決まることとなっている。

 東京でオリンピック開催と石原知事がはしゃいでも、上記で他の都市となれば絵に描いた餅に過ぎない。

 周知のように、オリンピックは、2008年に北京で開催されることが決定されている。その8年後、再度東アジアで開催されることと思っている関係者はほとんどいない。100%ないと言い切る関係者もいるくらいだ。

 もちろん、長野冬季オリンピック開催招致に係わる金銭疑惑があったように、東京都の公費や利害関係者が金を集め、IOC委員会の多くの委員を接待付けにしたり、つけとどけなどをすることで、万が一、東京に決まることがないことはないとしても、まともに考えれば、東京開催はないと見るのが普通である。

 そもそも、上述のように中国、韓国など東アジア近隣諸国への誹謗中傷など舌禍を繰り返す石原都知事に対し、東アジアの国々の委員がぎりぎりの場面で東京開催に一票を入れることは考えにくいだろう。

オリンピック開催は3選出馬目当て

 いうまでもなく、東京オリンピック開催は、石原都知事及びごくごく一部の人々がはしゃいでいるだけで、大部分の都民や国民はしらけているのが実情、実態ではないか。

 塚田博康は2007/03/15のJanJanで、“オリンピック戦略”に揺れる都職員〜石原都政の内幕ばなし(3) と言う論考を書いている。いわく、


・ そもそも東京都民に、オリンピック開催へ向けた盛り上がりが感じられない。まして日本全体ではまるで他人事だ

──と、まあこんな調子です。
 
 それどころか、石原知事がオリンピック開催を言い出した理由についてさえ「3選出馬の名目ではないのか」という見方が根強いのです。

 オリンピックほどの大プロジェクトともなれば、都庁内はもちろん、政府、各政党、都内や近県の自治体、スポンサー候補企業、各種スポーツ組織などの一致団結が欠かせません。日本的な風土のなかでは、十分な根回しが大切です。

 にもかかわらず、石原知事が05年に招致を表明した時、都民はもちろん多くの都職員にとってもサプライズそのものだったのです。

と書いている。さらに、万一東京に決まった場合でも実施は2016年であり、石原氏は83歳となる。

 ところで、その1で述べたように、石原都知事は、国、とくに旧建設省、現国土交通省と歩調を合わせ、幹線道路建設、そして土地収用法を改正させてまで広域最終処分場などを強引、強権的に開発してきた。

 もし、さもなくとも高齢な石原氏が敢えて東京都知事の3期目もでる大きな理由がそこにあるとしたら、

 「それなら、3選後の2年半で、石原知事が念願としている首都高速中央環状線の都内全通、外郭環状線の着工、首都圏中央連絡道の都内全域開通、臨海副都心地域の開発、羽田空港第四滑走路建設などの都市基盤整備を軌道に乗せることができれば、それで「我がこと成れり」ではないか。」(出典:“オリンピック戦略”に揺れる都職員〜石原都政の内幕ばなし(3) )

ということもありうるだろう。

 いずれにしても、世界一の巨大都市、東京でオリンピック開催は、時代錯誤以外のなにものでもないだろう。