◆青山貞一:破壊される自然と歴史的資産:八ッ場ダム(2)
群馬県吾妻郡の長野原町から東吾妻町にかけ3.5kmにわたり計画、実施されている八ツ場ダム(やんばダム)により水没となるなど破壊される自然と歴史的資産を現地で撮影した写真を中心に紹介しよう。
同地は、吾妻川流域に広がるのどかな田園風景、川原湯温泉周辺には国指定名称「吾妻峡」、天然記念物「川原湯岩脈」、また不動の滝などの景勝地もあり、四季それぞれの景観は別格である。自然の宝庫でもある。
吾妻渓谷全図 出典:東吾妻町ホームページ
長野原町の風景
吾妻渓谷、国道145号線にそって至る所で写真のような
クレーンなど土木工事の光景が繰り広げられている。
国土交通省八ツ場ダム建設事務所による流域の説明
国土交通省八ツ場ダム建設事務所によるダムの位置の説明
至る所の工事現場にある作業許可標識
◆数ある散策コースのうち最も渓谷美が堪能できる
吾妻渓谷散策コース
群馬県吾妻郡の長野原町から東吾妻町にまたがる吾妻渓谷は、大昔、火山から噴きでた溶岩を渓谷を流れる水が浸食してできたものと考えられている。
吾妻渓谷には昔からいくつもの散策コースがあり、とくに秋は日本有数の紅葉を身近に楽しめる格好の景勝地となっている。
また春から夏でも、吾妻川岸に群生するカエデ、クヌギ、アカマツが渓谷の景観とあいまって希有の自然景観をつくりだしている。
八ツ場ダム計画が完成すると、雁ガ沢橋から八ツ場大橋までの渓谷の上流部を水没させる。ダムにより希有な自然景観を一変することになる。事業計画対象地域は、当初計画より上流側に移動したのものの、下流側に残される渓谷も130m以上の高さをもつ重力式コンクリートダムの存在により、現在の景観、風景はなくなり、まさに原姿の風景となろう。
吾妻渓谷(あがつまけいこく)
日本の景勝地である。国指定名勝である。大分県にある耶馬溪よりも美しいといわれ、「関東の耶馬溪」の異名をとっている。また、若山牧水がこよなく愛した景勝としても有名。
現在進行している八ッ場ダム建設に際し、渓谷の一部がダムに沈むこととなる。ダムの建設自体は50年前から持ち上がっており、地域の利権などが絡んで半ば棚上げ状態にあったものが、2000年代になって着工が決まった。
そんな中で、渓谷の自然を守る、無駄なダムの建設をやめる、など、従来とは違った視点からの反対運動が起こった。しかし、そうした声は大勢を占めるにいたらず、工事は着々と進行している。
日本一短いトンネルである樽沢トンネルが近くにあるが、これはダムに沈まず廃線になり吾妻渓谷を見下ろし、また八ッ場ダムを見上げるロケーションになるので、一部遊歩道に転換する動きがある。
歩道は整備されているが、非常に危険である。過去に多くの観光客が足を滑らせるなどして滑落死している。特に、遊歩道からはみ出ることは自殺行為である。
1962年3月7日、地元の消防団員16人が乗った消防車が渓谷に転落。6人が死亡するという惨事が起こった。消防団員は吾妻町内で花見を行い、二次会で川原湯温泉に行こうとしていた。
このとき、運転していた団員が飲酒の上無免許だったこともあり、消防庁長官が「花見をして事故を起こすとは言語道断」と、全国の消防団に飲酒運転の禁止などを通達する騒ぎになった。
さらに、この後、吾妻町長(当時)らは、死亡した団員らに労災を適用してもらおうと申請を行ったが、朝日新聞などが「花見で酒を飲んで死んだ者に労災を出すとは過保護ではないか」という論陣を張ったため混乱した。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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吾妻渓谷散策コース概略
散策コースとなっている吾妻峡遊歩道の入り口
渓谷散策コースの上流側入り口、滝見橋付近
滝見橋から見たJR吾妻鉄道の鉄橋。これも水没予定。
渓谷散策コースはこのような風景が続く。
散策コースから見える砂防ダム
営林署の標識があちこちにある。
渓谷散策コースのあちこちに、ダイナマイトを使った作業
のお知らせがある。
フラットの散策コースで一息つく。
コース途中にはあちこちにわき水が。
急斜面で勾配がきついので散策コースとはいえ結構厳しい。
渓谷散策コース。こんな風景が続く。
これは紅葉の吾妻渓谷の写真。(出典:やんば散策マップ、国土交通省)
この写真は秋のもの。この上なくすばらしい自然景観だ。
写真の部分は全て水没する。
散策コースの終了地点。鹿飛橋。
渓谷散策コースの出口にある鹿飛橋から撮影した夏の吾妻渓谷
写真の部分は全て水没する。
渓谷散策コースの出口にある鹿飛橋から撮影した夏の吾妻渓谷
ダム本体予定位置から数100m下流にある鹿飛橋
ここが渓谷散策コースの下流側出入口となっている
鹿飛橋遠景。ここから国道145号線に歩いて戻れる
◆貴重な歴史・文化遺産、川原湯温泉地域
歴史ある川原湯温泉をめぐるコース。
吾妻川の渓谷上部に小さな旅館が張り付くように存在している。共同浴場の「王湯」「笹湯」は源頼朝時代からの歴史ある温泉である。
川原湯温泉は1193年、源頼朝が狩をしている最中に発見されたと言い伝えられている。上記の温泉街の入り口にある共同浴場の「王湯」には、それに因み源氏の家紋が掲げられている。
これらの川原湯温泉がある川原湯地域の大部分は八ッ場ダムで完成すると湖の中に沈むこととなっており、現在、移転が進められているが、当然のこととして移転に反対する温泉、世帯も多い。
川原湯温泉の源泉も温泉同様、八ツ場ダムの湖底に沈む予定となっている。地形的にみて温泉街上部に、水没移転対策で新たな温泉街開発の計画が進行中であり、ボーリングで新たな源泉も見つかったが、歴史ある川原湯温泉が国により造成された新たな場所で、果たして温泉が再興できるかどうかが大きな課題となっている。
川原湯温泉の新源泉は非常に高温であり、温泉たまごづくりが川原湯温泉近くの川原湯神社入り口近く行える。新源泉近くでは足湯が楽しめる。
川原湯温泉街で昔から行われてきた祭に湯かけまつりがある。450年も前に源泉が一時枯渇し、にわとりを生け贄にして祈願したところ湯が再び湧いたことに起源をもつという。この湯かけ祭りは毎年1月の大寒未明に行われている。
川原湯温泉の入り口。国道145号線をそれて入れる。
川原湯温泉の中心、王湯。散策コースであせだくだく。
共同浴場で一風呂浴びる。
皆で共同浴場、王湯からでてきたところ。
川原湯温泉の効能
川原湯温泉のパンフレット
紅葉の季節の川原湯温泉郷
(出典:やんば散策マップ、国土交通省)
写真の部分は全て水没する。
新川原湯温泉の源泉標識
川原湯温泉にある芭蕉の碑
山路来て 何やら床し 菫草 松尾芭蕉
川原湯神社入り口
川原湯神社
いつもお世話になる食堂
◆不動尊・不動の滝地域
川原湯と不動の滝の間にある牛乳工場。ここで飲む牛乳は格別。
トイレも借りれる。
牛乳工場で撮った青空にはえる赤松
川原湯温泉からほど近い不動の滝。
不動の滝は、青森県、岩手県にもあるが、吾妻渓谷のなかに
ひっそり落ちる不動の滝は、知る人ぞ知る名滝といえる。
不動の滝のすぐ隣で進められる橋梁工事。
およそ吾妻渓谷にそぐわない。
橋梁工事の遠景。
国道145号線の付け替え工事の一環、トンネル出口。
やんば館の駐車場で撮影。
やんばる館から見た川原湯温泉。
中央の山の下側に温泉はある
つづく