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環境総合研究所の北軽井沢研究室から車で約20分ほどのところに、日本最大のダム系公共工事である八ツ場ダムの工事現場がある。 私たちは北軽井沢に行くたびに、幾度となく現場を視察し、工事や自然破壊の現状況を監視、「独立系メディア」でブログで公開してきた。 そんな中、2008年5月2日〜5月6日に保養所に出かけた。そして八ツ場ダムの現場(長野原地区)に足を運び、ダム工事による自然環境及び自然景観がどのように破壊されてゆくかを写真撮影により監視した。 ●八ツ場ダム関連橋梁工事の位置 現地では、以下の地図(図1)にあるように大型の橋梁工事が付け替えと新設が5本も同時並行的に行われており、日本有数の絶景は見るも無惨となっている。 ここでは橋梁工事に着目し、現状の実態を紹介する。 橋梁の内訳は、国道145号線の付け替えに伴う橋梁が2本(@)、新設一般県道用橋梁が1本(A)、両者を結ぶ橋梁が1本(B、C)、それにJR吾妻線の付け替えに伴う橋梁が1本(D)である。 図1 群馬県長野原町の八ツ場ダム工事現場の全体図 図2 群馬県長野原町の八ツ場ダム工事現場の3次元図 出典:八ツ場ダム、国土交通省 このようにダム関連工事は、橋梁工事だけをとってもすさまじいものがある。 その他の工事としては、一般国道145号線の付け替えに道路工事、トンネル工事、新設される一般県道の道路工事、トンネル工事、さらにJR吾妻線の付け替えに伴う高架軌道工事、トンネル工事(両岸)、吾妻渓谷の河川改修工事などがある。 以下、最新の橋梁工事の現場を見てみたい。 ●国道145号線付け替えに伴う橋梁【@】 下の写真は、群馬県長野原町における国道145号線付け替えに伴う橋梁の建設現場である。図1の@に相当する。 日本有数の景勝地で進む国道145号線付け替え橋梁工事 群馬県長野原町にて 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2008年5月 日本有数の景勝地で進む国道145号線付け替え橋梁工事 群馬県長野原町にて 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2008年5月 日本有数の景勝地で進む国道145号線付け替え橋梁工事 群馬県長野原町にて 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2008年5月 以下の図2は国土交通省の計画図に見る国道145号線の付け替え橋梁部分である。 図2の青い○の部分が撮影写真部分である。 図2 国道145号線の現在の付け替え計画案 出典:国土交通省資料より青山が作成 下の写真は昨年夏に同じ場所で工事現場を撮影したものである。 わずか半年で橋梁工事がかなり進み、その結果、自然景観破壊が一段と進んでいる状況が分かる。 八ツ場ダム、国道145号線付け替え橋梁工事 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2007年9月 国道145号線の橋梁工事。群馬県長野原町にて 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2007年9月 国道145号線の橋梁工事。群馬県長野原町にて 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2007年9月 ●新設一般県道に伴う橋梁工事【A】 現場では、新設の県道の開発に伴う2つの橋梁(湖面1号橋、湖面2号橋)の橋梁工事がある。図1のBとAがこれに当たる。具体的にはBが湖面1号線橋梁、Aが湖面2号線橋梁である。 これらの新設一般県道の橋梁工事では、地元の要望を押し切って構造を変更し吊り橋からエクストラドーズド橋にした。そのため、下の図2にあるように橋桁が1本増え地質への影響が増えているという。 図2 一般県道の付け替えにおける橋梁構造の変更案 出典:国土交通省 下の写真は今回撮影したものである。橋桁2本が自然のなかにそびえ立っているが、上述のように、これら2本の橋脚の真ん中に図2にあるようにもう一本の橋脚が建設されることになった。 新設一般県道の橋梁工事 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2008年5月 新設一般県道の橋梁工事 この橋梁工事は不動の滝のすぐ隣で進められている 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2007年9月 新設一般県道の橋梁工事 この橋梁工事は不動の滝のすぐ隣で進められている 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2007年9月 新設一般県道の橋梁工事のすぐそばにある不動の滝。 このたきも水没することになる! 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2007年9月 ●JR吾妻線付け替えに伴う橋梁工事【D】 下の写真はJR吾妻線の付け替えに伴う大規模鉄橋建設工事である。この橋梁工事では、地表に近いところでアーチ型橋梁をくみ上げ、地表30mの高さに持ち上げる方法を採用している。 図1のDに相当する。 JR吾妻線の付け替えに伴う大規模鉄橋建設工事 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2008年5月 JR吾妻線の付け替えに伴う大規模鉄橋建設工事 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2008年5月 JR吾妻線の付け替えに伴う大規模鉄橋建設工事 撮影:青山貞一、Nikon Cool Pix S10、2008年5月 JR東日本は押し黙っているようだが、終点の大前駅を見るまでもなく、JR吾妻線の乗降客はもともと非常に少なく、近年の若者のスキー離れがそれを加速化している。 実際、終点の大前駅はこれ以上ないほど寂れた駅であり、万座鹿沢口駅も乗降客が少ない。仮に首都圏から万座鹿沢口まで吾妻線で電車で行ったとしても、万座鹿沢口から草津などに行くバスは一時間に一本程度しかなく、草津温泉やスキー場に行くひとは、東京からバスか自家用車、さらには新幹線の軽井沢駅からバスを使うのが圧倒的である。 敢えて言えば、吾妻線は吾妻渓谷のすばらしい渓谷の景勝が車窓から見れることにある。その渓谷がダム湖になったとすれば、残された最後の利用理由も吹き飛んでしまう可能性すらある。 現状のままでJR吾妻線を存続させるならまだしも、巨額の税金を投入してまで、ダム関連部分だけ最新技術で巨額の公共工事を行う意味はどこにあるのか? 仮に吾妻線の大規模付け替えにかかる費用を国がもったとした場合でも、当然のこととしてJR東日本側の負担も相当なものとなる。そうなった場合、JR東日本が採算を理由に吾妻線を廃線としない保証はないだろう。事実、その種の話しも聞こえてくる。 考えてみれば国土交通省はJR東日本にとって許認可官庁であり、文句などいえない関係にある。JR東日本のホンネを聞いてみたいところだ。 ●JR吾妻線付け替えのトンネル、橋梁工事【A付近】 長野原地区の多くでJR吾妻線の軌道は事業計画では水没する計画になっており、早くから鉄道軌道を現在位置より高い位置に付け替える工事が行われてきた。 下の写真の上に写っているトラス構造鉄橋が新たなJR吾妻線の軌道である。一方、下の写真の下に写っている鉄橋が既存の鉄道軌道である。信じられないことだが、現場ではダム建設がなければ、まったく不要な公共工事のオンパレードとなっている。 いずれも国土交通省現場事務所の広報センターである「やんば館」駐車場から撮影。 JR吾妻線の軌道付け替え工事 群馬県吾妻郡長野原町にて撮影 撮影:青山貞一、デジカメ ニコン CoolPix, 2008年5月 JR吾妻線の軌道付け替え工事 群馬県吾妻郡長野原町にて撮影 撮影:青山貞一、デジカメ ニコン CoolPix, 2008年5月 なお、下の写真は2007年8月に撮影したトラス構造橋梁ができる前の状態。 山肌をくりぬき作られる巨大なトンネル群 撮影:青山貞一、デジカメ ニコン CoolPix, 2007年8月 ところで、自然破壊、景観破壊以外の何ものでもない上記の巨大橋梁工事だが、これがマスメディアでどのように報道されているのであろうか? グーグルで検索してもほとんど記事はないが、以下はやっとのことで見つけた日経BPの記事である。これまた国土交通省の広報と成り下がっているような記事だ。
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