本末転倒の改憲論議 青山貞一 掲載日:2007年5月3日 |
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今週日曜日(2007.4.29)朝の関口宏氏司会によるTBSサンデーモーニングを見て(聞いて)いて驚いた。 何を驚いたかと言うと、安倍首相の一連の改憲策動に関連して毎日新聞の岸井成格氏が次のように述べたことである。 一字一句正確ではないが次の主旨の発言をしたのである。 「今や実質的に軍隊となった自衛隊の存在に象徴されるように、日本は現行の日本国憲法下で、解釈に次ぐ解釈をしながら今や海外に自衛隊が出て行くところまできた。こうなった以上、現実、実態と憲法との間の齟齬を直す必要があるのではないか。その意味で論憲が必要だ」と。 戦後60数年、実質的に自民党の一党独裁に近い状況のなかで、憲法を勝手に拡大解釈し、世界に冠たる陸、海、空軍をもち、今や海外の陸地にまでその軍隊を派遣(派兵)してきること、既成事実の積み重ね現状追認し、ここまで来たことは、まぎれもない事実である。 しかし、だからといって、現行憲法を絶えずないがしろにし、蹂躙し、そうなったのだから憲法を現実に合わせるという論議は、本末転倒でありお粗末な議論ではないか。 そもそも、憲法をないがしろにしてきた歴代の政権与党や政治、さらに違憲判決を下さない最高裁判所など司法を徹底批判すべきは、マスメディアである。その渦中にいる岸井氏が、上記のような発言を白昼、人ごとのように堂々とすること自体、不見識のそしりを免れないと思う。 冷戦構造終結後、何かにつけ敵をつくり、世界各地で利権的侵略戦争を起こししてきたブッシュ政権を見るまでもなく、現在の安倍政権が考えていることは、本末転倒な戦前への回帰である。 本来、日本がすべきことは、日本国憲法の理念、主旨を生かし、専守防衛に徹し、外交能力をつけ、国際紛争の解決に率先遂行することである。 端的に言えば、戦後の日本は、外交、安全保障において、世界に例のない、いわばオンリーワンの道を歩んできた。もちろん、これには異論があるだろうが、私はそう思っている。オンリーワンの道のバックボーンは言うまでもなく、日本国憲法(昭和憲法)である。 オンリーワンであるが故に、ナンバーワン、すなわち単純な軍拡競争に巻き込まれることなく、ついこないだまでそれなりの経済国家、福祉国家の道を歩んでこれたのである。ついこないだまでと敢えていったのは、なまじグローバル化に強く関与したばっかりに、今の日本がとんでもない格差社会となったからである。 ところで、毎日新聞の岸井氏の言い分は、理無き単なる現状追認である、到底、言論界、とりわけリベラルを気取る毎日新聞の理念、方向性にも反するのではないかと常々感じてきたが、冒頭の番組でのコメントにはあきれた。 イラク戦争勃発直前、朝日新聞がその社説で米英によるイラク戦争開始やむなしと論じたことが、その後、朝日新聞社の基本姿勢を根本から問う論議を呼んだが、憲法記念日直前における岸井氏の発言はそれに類する重大なものと思える。 今の日本のおかしさは、政官業学報、すなわち政治、行政、業界に加え、そのあり方を批判すべき、学者や報道が最も肝心は時の権力を批判する精神を完全に喪失し、現状追認に走っていることにある。 これはまさに、戦前の大政翼賛状況の前触れと言っても過言ではない。 我々国民は、こんな政治家やジャーナリズムによる世論操作にまどさわれてはならず、オンリーワンの道を歩まねばならない。 それが憲法記念日に私が強く感じたことである。 |
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なし崩しの自衛隊、多国籍軍参加 青山貞一 掲載日:2004.6.14〜2005.1.22 |
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■小泉政権による憲法第九条なし崩しの歴史 小泉政権になってこの方、歴代のどの首相もなしえなかった憲法第九条に抵触する可能性が大きい自衛隊の海外派遣を単なる憲法解釈と特別措置法によって、あれよあれよと言う間に実行している。 今国会以前に小泉政権が制定、施行させた防衛、軍事関連法律のリストを以下に示す。今国会でも国民年金関連法案などの影で有事関連七法案など多くの防衛、軍事関連法案が制定されつつある。
■「なし崩しの極み」としての自衛隊の多国籍軍参加 ところで、小泉首相は、G8にてイラク主権の移譲後に編成されるであろう多国籍軍にイラクのサマワに派遣している自衛隊の参加を表明した。 周知のように、小泉政権はイラク特措法そのものが憲法第九条に抵触する可能性があること。同時にそのイラク特措法をもとに実施した陸上自衛隊のサマワへの派遣が「非戦闘地域」条項に抵触する可能性があると言う野党などの批判にも、答えにならない返答を国会で繰り返してきた。 そのなかでの、多国籍軍への自衛隊の参加である。まさにこれ以上のなし崩しはない。 これについては、民主党の岡田代表も、「国会はおろか、自民党内ですら議論していない。重要な問題を国会で議論せずに米大統領に約束した」と強く批判している。当然だ。その岡田氏は、首相の多国籍軍参加表明について「条件反射じゃないか。国民を見ているのではなく、米国のブッシュ政権の顔色をうかがっている」と述べているが、まさに米国追随も来るところまで来たと言える。 また時事通信によると、自民党の野中広務元幹事長は13日、熊本市内で講演し、小泉純一郎首相がイラク多国籍軍への自衛隊参加を表明したことについて「何の議論もなく、国連が(新決議を)決めたからといって、(多国籍軍に)参加する。わが国の憲法や自衛隊法やイラク復興支援特別措置法に恥じないのか」と厳しく批判している。 このように自衛隊の多国籍軍派遣は、イラク特措法による自衛隊派遣における「非戦闘地域」問題に加え、多国籍軍と日本の自衛隊との間での指揮権を巡る問題がある。これについては、野党ばかりか多くの与党議員でさえ疑義を呈するありさまだ。 いずれにしても、冒頭に述べたように、小泉純一郎氏が首相になってこの方、憲法、国会、国民のいずれも軽視され、強引に日本全体が右旋回している。これでは憲法改正以前に、集団的自衛権の行使すら行われかねない状勢だ。これほど重要な外交・暴政政策について、小泉首相は国会で一切の審議がないまま、G8などでブッシュ大統領などに自衛隊の多国籍軍参加を約束していることは論外である。 それにつけても情けないのは、日本の大マスコミである。このような小泉政権を批判するどころか、安直に肯定しているものもある。 4年ほど前、田中康夫氏が私に、このまま行くとそう遠くない将来に、日本でも徴兵制が現実のものとなるよ、と言ったことを思い出す。以下は、自衛隊の多国籍軍参加問題についての最新記事概要。
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