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洞爺湖サミット(1)

死に体同士の日米首脳が重要課題先送り!?

青山貞一
掲載月日:2008年7月7日
無断転載禁


 
 2008年7月7日より北海道の洞爺湖でG8サミットが開催されている。

 洞爺湖サミットには警備費だけで500億円もかけいるという。会場周辺ばかりか東京はじめ各地で異常な警備を展開している洞爺湖サミットだが、果たしてこのサミットに何が期待できるのか? 私見では後述するように、原因の多くが米国にあること、そもそも米国は問題解決のリーダーシップを発揮するどころか開き直ったり、うそぶいたり、さらに自己中心主義的な対応に終始している。しかも、その米国のブッシュ大統領が任期わずかであることだ。

 議長国日本の福田総理、首相は、こともあろうかそのブッシュ大統領に依然として追随しているのだからどうしようもない。

 いずれにせよ、ハッキリしていることは、国民から20%台しか支持がなく、すべて他人事、問題の先送り、外務省、経済産業省など依然として官僚主導となっている死に体内閣、福田政権には、山積する世界的難題・課題に、自らのリーダーシップを発揮することなど到底できないことである。

 その背景には、いうまでもなくあと半年で大統領を退任する自己中、ブッシュ大統領に依然として、こびへつらい、盲従していることがある。

 だが考えてみればすぐにわかるが、上述のように洞爺湖サミットの重要課題である@地球温暖化政策、A世界的食料受給の逼迫、BWTI原油先物価格の暴騰、Cバイオエタノールなど、はどれをとっても米国の失政や自己中心的な戦略、戦術によって世界各国が大きな迷惑や影響、被害を被っていることばかりだ。しかも、上記の重要課題はいずれも他の課題と密接に関連しているところに大きな特徴がある。

 上記の問題解決の多くには、米国と中国の関与、参加が不可欠であり、本来日本は、米国、中国とそれぞれに意見を述べ提案することができる立場にある。

 しかし、残念なことに、日本政府は、問題を起こしている米国に未だ何から何まで気をつかい、どこまでもへつらっている。 これで本当に、日本は独立国、民主義国家なのか疑問を感ぜざるを得ない。

 日本政府は、拉致問題についても、ブッシュ頼みを繰り返している。しかし、そもそも六カ国協議段階から、ブッシュ米大統領の戦略、戦術がこうなることはわかっていたはずである。にもかかわらず、核廃棄を前提にテロ国家指定を解除し、辞め際で点数を稼ごうとしているブッシュ大統領に、土團場で懇願している日本政府の対応は、まさにこれが主権国家と首をかしげたくなるものだ。

 以下、@地球温暖化政策、A世界的食料受給の逼迫、BWTI原油先物価格の暴騰、Cバイオエタノールなどについて、順次、私見を述べてみたい。

(1)地球温暖化対策:

 洞爺湖サミットの中心議題となっていることもあり、このところ世界各国の地球温暖化対策がにわかに問題となっている。

 IPCCなど科学的見地からは、相当以前から地球温暖化回避のためには、最低限、世界中で排出される二酸化炭素(CO2)の半分の削減が必要であることが分かっていた。

 しかし、1997年に京都で開催されたCOP3では、主要締結国は表1に示すように、1990年を基準年とし、それを100とした場合2008年から2012年の間に、マイナス8%からプラス8%まで削減させる義務を負った。

表1 締約国の数量的な排出抑制又は削減の約束
   (基準年又は基準期間の割合)1990年対比削減率
オーストラリア   108    +8%
カナダ         94    ー6%
欧州共同体      92    ー8%
日本国            94    ー6%
ロシア連邦*    100     0%
アメリカ合衆国    93    ー7%

 我が国(日本)は京都会議の議長国として世界に公約した1990年対比でマイナス6%という削減目標を2012年までに達成する義務を負っているが、現状ではマイナス6%を達成するどころか、プラス6〜7%と大幅に二酸化炭素排出が増加している。

 1990年の排出量に対比すると実にプラス13%近く増加したことになり、EUなど目標をすでに達成している国に顔向けできない常態にある。

 日本政府はこれまで<京都メカニズム>と言って、@吸収源、A排出権取引、B共同実施、CCDM(クリーン開発メカニズム)といった、いわばつじつま合わせ政策づくりに奔走してきたといえる。その背景にあるのは、国、とくに旧通産省、現在の経済産業省が産業界、とくに鉄鋼、電力など大量の二酸化炭素を排出する産業に必要以上に気遣ってきたことがある。

 一説には議長国としてマイナス6%を日本は目標としたが、経済産業省幹部は当時の経団連や基幹産業の幹部に、ことのはじめから削減は業界の努力目標であって、義務ではなく、「規制的な対策はとらない」という趣旨の裏約束をしていたという。

 もともと環境庁のちの環境省は、日本の環境政策立案で主導的な立場にない。環境影響評価法制定をみるまでもなく、たえず通産省、のちの経済産業省が裏で経済産業界と取引を行い、環境省の動きを牽制し、蹂躙してきたと言える。

 ....

 今回の洞爺湖サミットでは、二酸化炭素排出の削減目標の設定割合と目標設定が大きな課題となっている。西暦2050年に世界中の二酸化炭素排出量を半分に削減することが、すでに安倍政権時代提案されているが、これには課題はいくつかある。

 まず図1を見てもらえれば分かるように、日本を例とした場合、1990年から2008年まで13%も二酸化炭素排出量が増加しているのに、2050年に1990年対比でマイナス50%削減が可能かどうかということである。2050年と言えば、首相、政治家はじめ現在の政策担当者はいなくなっている。できもしないことを先のことは誰も分からないとばかり、長期目標としていないか? という大きな、本質的な課題がある。


図1 地球温暖化対策のための長期目標の設定

 具体的な課題としては、二酸化炭素排出量の半減という場合、西暦何年を基準年とするかである。京都会議のとき対比すべき基準年は1990年とされたが、今回の長期目標では1990年なのか?それとも2012年なのか?が問われる。この基準年問題は、未だ各国の間で合意は得られておらず、うやむやとなっている。
 
 次の課題は、仮に1990年を基準年とし2050年を目標年次とした場合、たとえば、2015年、2020年、2025年、2030年、2035年、2040年、2045年などに各国がどれだけ目標に向かっているかを監視あるいは進捗管理を実施するための中間目標年(削減目標値)を設定するかどうかである。

 1997年から2008年の間にマイナス6%の宿題を達成できず、あれこれ言い訳をしたり、姑息な手段、すなわち京都メカニズムでお茶を濁そうとしている日本政府がいくら2050年に50%削減といってもEU諸国や新興国、発展途上国は誰も信用しないだろう。

 3番目の大きな課題は、いうまでもない世界で排出されている二酸化炭素の1/4を一国で排出している米国は、2001年にブッシュ大統領が京都議定書から離脱を表明した。この傲慢、勝手な米国をどう復帰させるか?がある。

 図2は2000年における中国、インドを含む世界各国の二酸化炭素排出割合データである。出典はOECD/IEAである。


図2 2000年における国別の二酸化炭素排出量割合
    米国は一国で世界全体の1/4を排出している! 

 図2は、図3に示す世界の国に別石油消費割合に符合している。世界人口のわずか4%の米国が、世界全体の石油の25%以上を消費している現実がある。


図3 世界の国別石油消費消費割合 単位%
    世界の人口のわずか4%の米国が世界のエネルギーの
     1/4近くを一国で消費している。

 ブッシュ大統領は、中国、インドなど人口が多く経済成長が著しい新興国の参加がなければいくらその他の国が目標を設定をしても意味がないという主旨のことを言い続けている。

 図2を見ると、確かに中国とインドからの排出量は17%もある。しかもBRICS諸国は今後、今まで以上に経済成長を達成するであろうから、米国の言い分にも一理はある。しかし、本来、一国で世界の1/4近くを排出する米国こそ、削減のためのリーダーシップを発揮すべきである。しかし、現状はいわばガキ大将が言いたい放題いって開き直っている。これにどう対応するか?が問われる。

 日本は今までもそうだったように、今後も死に体のブッシュ大統領が洞爺湖サミットで中国、インドなどの新興国問題について言及した途端、それにまともに反論できないと思える。それは単に米国追随というだけでなく、京都会議の議長国として何らマイナス6%の宿題を果たしていないからである。

 その日本政府は、今回の洞爺湖サミットでも、セクター別削減量積み上げ方式を提案しているが、これも産業セクターをさらに鉄鋼、電力、セメントなどに細分化し、各セクターにおいて日本の高エネルギー効率技術を諸外国に移転すれば、二酸化炭素は大幅に削減できるというものだ。

 だが、マイナス6%という目標をまったく達成していない日本がセクター別削減や京都メカニズムなどの方法に固執すれば、各国からは日本は自らの目標を達成せずして、商売、すなわち鉄鋼、電力などの個別産業技術を各国へ輸出する口実を与えると反対されるのは必至だ。逆に、日本政府が環境ODAや二国間援助などの無償援助で実施すれば、さくなくとも1000兆円になんなんとしている日本の累積債務を増やすと、国内的な批判を浴びることになるだろう。

 一方、米国はスリーマイルズ島事故以来、新規建設が止まっていた原子力発電所をCO2を出さないエネルギー源として国内外に売り込む戦術を携えて洞爺湖サミットに乗り込んできたようだ!


つづく