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本性を露わにした
安部総理の「重大発言」


青山貞一

掲載日:2007年5月31日


 佐藤清文氏もコラム「半ズボン総理と死の内閣」のなかで指摘しているが、自殺した松岡利勝農相が緑資源機構の官製談合事件に絡み関連法人から献金を受け取っていた問題を指摘されていることに関連し、
「本人の名誉のために言うが、緑資源機構に関しては、捜査当局から『松岡農相の取り調べを行っていた事実はないし、これから行う予定もない』という発言があったと承知している」と述べた。

 この発言は、単に違和感があるなどということではなく、大げさに言えば、立憲国家における民主主義を完全に否定するものであると言える。もっとも総理がしてはならないこと、してはならないことであるはずだ。

 東京地検が緑資源機構本社やその熊本県の出先まで家宅捜査に及んだのは、いうまでもなく松岡利勝農相(当時)との関連においてであるはずだ。それは、誰の目にも明々白々である。それ以外あり得ないとも思える。

 にもかかわらず、安部首相が
「本人の名誉のために言うが、緑資源機構に関しては、捜査当局から『松岡農相の取り調べを行っていた事実はないし、これから行う予定もない』という発言があったと承知している」などと
記者会見で述べたのは、まさに血迷ったとしか言いようもないものである。

 そもそも安倍総理は、何を根拠、出典として上記の発言をしたのか?法務大臣、検事総長経由か? それすら明らかにせず、上記のようなトンデモ発言をぶら下がり会見で述べたとすれば、それ自身、大問題である。

 なぜなら、安倍首相は歴史認識などに関連し、絶えず事実、真実、根拠などを口にしてきたからだ。根拠も示さず上記の発言を国民の前にするとすれば、それはまさに独裁者のすることではないだろうか?

 たとえば、これは、
ある裁判で判決前に総理大臣が判決の内容を裁判官から聞き出しているのに等しい。また○○県の官製談合問題に関連し、総理大臣が地検に電話し、現在、県庁舎に家宅捜査がはいっているが、△○知事はそれとまったく無関係である、などといっているのに等しいのである。

 結論から言えば、安部総理がしたことは、立憲国家の民主制度、すなわち三権分立を職権で犯したことであり、司法権への立法である。

 もちろん、実態としては以下に示すように、検察庁は独立官庁であるとともに、行政機関でもあることから、賢治総長を長とした指揮命令系統に従う、という側面はある。

概要

 検察庁は検察官各人の独任官庁としての性質を持つが、行政機関であることから検事総長を長とした指揮命令系統に従う(検察官同一体の原則)。

法務大臣は行政機関たる検察庁を擁する法務省のトップであり、下部機関である各検察官に対し指揮する権限を有しているともしうるところ、必要以上の政治的介入等を防止する観点から、検察庁法において具体的事案に対する指揮権の発動は検事総長を通じてのみ行い得る(いわゆる指揮権の行使)との制限が規定されており、直接特定の検察官に対し指揮することは認められていない。

 このことにより、検察官は政治からの一定の独立性を保持しており、法の正義に従った職能を行使することが期待される。いわゆる指揮権については、法務大臣と検事総長の意見が対立した場合に問題となり、かつては法務大臣の指揮に従わないこともありうる旨を述べた検事総長が国会で問題とされたこともあったが、法的には「法務大臣の職務命令に重大かつ明白な瑕疵がない限り違法なものでも服従する義務がある」とされ、その結果の是非については、指揮権を発動した法務大臣が政治的責任として負うことになる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


 上記の実態があったとしても、安部総理の今回の発言は、とんでもない捜査妨害であり司法への介入である。今後、地検の腰が引ける可能性は高いし、現にそうなっている可能性も高い。

 ....

 ところで、今回、はからずも安部総理のトンデモ発言で明らかになったのは、今までも安部総理、小泉総理はもとより、その時々の総理なり官邸が地検など司法にさまざまな雑音を入れたり、捜査状況を職権により聞いていたのではないかということがある。

 ひょっとしたら、
司法捜査の現場にさまざまなプレッシャーをかけている可能性もあるかもしれない。少なくとも今回の一件は、国民にそう思われても仕方ないことを安部総理はしたことになる。

 ....

 さもなくとも、ここ数年、司法と行政との癒着が目立っている。冤罪事件ひとつをとっても、警察行政と検察との癒着はもとより、どうみても検察と判事との癒着以外考えられないような判決も目立つ。


 裁判にあっても、初審はまだしも高裁、最高裁と上に進めば進むほど、時の政権の意向が強く働いていることは国民の知るところである。

 いずれにしても、地検には安部総理大臣の違憲的トンデモ発言、捜査妨害にめげず、がんばって真相を究明してほしい。もし、ここで地検が緑資源機構やその関連団体が絡む捜査から手を引いたり、手を緩めるようなら、国民はやっぱりそうだったのかと思うだろう。

 安部総理がしていることは、安部総理が忌み嫌う東アジアのかの国の首領がしていることと変わらないことになるだろう。

 松岡農林大臣の自殺によりはからずも安部晋三氏の非常に危うい側面が国民の前に露わになった。

 松岡農水大臣の自殺により安部総理の本性が露わになったと思える。このようなひとを総理とすることは国民ばかりでなく、自民党、公明党にとっても戦後最大のリスクを負うことになりかねない。

 今の日本は「昔きた道」に回帰する危機的なターニング・ポイントにたっているといえる。

 それにしても、この問題を正面から取り上げたのは東京新聞だけだ。何ともなさけない。本来、全マスコミはこの問題を徹底追求しなければならい。これほど重大な総理の発言を追求しない、できないマスコミは、到底マスコミとはいえないだろう。何とも情けないことだ。マスコミの堕落もここまで来たか、と言うのが実感である!

 以下は東京新聞記事のリード文。

安倍首相の捜査言及発言、あえて禁を破った真意は

 松岡利勝前農相が自殺するという事態にあたって、安倍晋三首相が発した言葉が波紋を広げている。緑資源機構談合事件の捜査が同氏に及んでいないことを、伝聞の形式を採りながらも明言したからだ。首相は間接的に検察庁を統括できる立場にある。だからこそ捜査への政治介入を疑われる言動は、慎むべきだとされてきた。あえて“禁”を破った理由は何だったか。 (竹内洋一、中里宏)

....本文略

(東京新聞 2007年5月31日 朝刊)