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A Field Survey on
Three Gorges Dam Project
三峡ダム視察@
Teiichi Aoyama 青山貞一
掲載月日:2008年12月1日
■4日目 宜昌から三峡へ:2008年11月23日
武漢(Wuhan)から三峡(Three Gorges)までは、下の長江流域図にあるように確かに400kmある。今日は三峡ダムに近い宜昌市のホテルからマイクロバスに乗ってダムサイトまで視察する。なお、長江流域には、海側から
上海(Shanghai)、 南京(Nanjing)、 武漢(Wuhan)、 重慶(Chongging
)と中国を代表する大都市が位置していることが分かる。
長江流域における三峡ダムの位置
逆に考えると、それら中国を代表する大都市は長江の河畔に出来たと言える。すなわち長江の海運を最大限活用し、また長江の豊富な水を活用して出来た大都市といえるのである。実際、多くの生活物資、鉱物資源などは長江の海運を活用し上流、下流で移動してきた。また重慶だけでなく武漢の重化学工業は、長江の豊富な水資源をもとに成立している。
その三峡ダム(超大型の重力式コンクリートダム)は、1993年に着工、2009年完成予定だから現時点(2008年11月)ではまだ完全に竣工していないことになる。
三峡ダムの地理的位置は、貯水に関しては湖北省宜昌市街の上流に始まり、重慶市の下流にいたる約660kmにも及ぶ。中国政府によると、下流域の洪水を抑制するとともに、長江の水運の大きな利便性をもたらすとされる
三峡ダムの建設目的は、洪水抑制、電力供給、水運改善となっている。完成すれば三峡ダム水力発電所は1,820万kWを発電可能とする世界最大の水力発電ダムとなる。ちなみに原子力発電所の発電量は、一基当たり通常、100万kWであるから三峡ダムの発電量は、原発18基分に相当することになる。
これらの発電量は、中国の年間消費エネルギーの1割弱の発電能力を有し、電力不足の中国において重要な電力供給源となる。また水力発電は火力発電や原子力発電と比べCO
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の発生も抑制することができるとされている。
周知のように三峡ダム開発では、おおよそ85万人の住民が立ち退かされ、世界的に貴重なチョウザメの遡上が困難となることで種の絶滅の危機に瀕するという問題など多くの問題が生じているが、日本同様エネルギー資源に乏しい中国にあって貴重な電力資源を供給することになっていることは間違いないところだ。
他方、三峡ダムの建設では住民110万人(中国政府の公式発表では約85万人)の強制移転、三峡各地に残る名勝旧跡の水没、さらに河川水質の汚染や生態系への悪影響、堆砂対策などダム建設に伴うさまざまな問題も指摘されている。
下の写真は、グーグルマップで見た三峡ダムである。
グーグルマップで上空から見た中国、三峡ダム(広域)。
グーグルマップで上空から見た中国、三峡ダム。
....
私たちは宜昌市内のホテルを午前8時30分頃立ち、三峡ダムの開発現場に向かった。
ダムサイトまでの所要時間は50分ほとだ。途中、下の写真にあるような検問所がある。マイクロバスには三峡ダム建設事業の顧問、王さんがおり、通行許可書をもっているので、それを見せる。
次第に道の両側の地形が下の写真のように険しくなってくる。あちこちに奇岩があり、それらの谷間に川が流れている。
そうこうしているうちに、三峡ダム事業の展示館に到着する。この展示館で1時間ほど説明を受ける。最初は三峡ダムプロジェクトのDVD、その後、模型やポスター、展示物をもとに説明を受ける。
入るとすぐのところに三峡ダム事業の歴史的回顧というポスターがあり、孫文先生にまでさかのぼり、同事業の意味と価値が示される。
その後、スクリーンにDVDにより三峡ダム事業の歴史と現状が映し出され、皆で20分ほど見る。残念ながらこの歴史的巨大事業によって85万人(事業者側公式数字)もの住民が立ち退かされた写真、映像はついぞ見られなかった。もっぱら、これは何も中国に限ったことではない、日本の国土交通省の広報センターなどでも同じだ。
他方、過去、地域が遭遇した大洪水の被害については、DVDの中だけでなく、館内に展示される写真でもことさら強調されている。日本でもこれは同じだ。八ツ場ダムの広報センター(やんばかん)に行くと、カスリーン台風来週時の映像や写真が何度も強調されている。どこの国も同じだなぁと「感心」する(笑い)。
DVD終了後、スクリーンの直下にある三峡ダムの水利模型の解説を受ける。このような展示や紹介方法は、どこの国でもお定まりのコースだろう。
水力発電タービンの模型
水力発電タービンの大きさは人間と比べると分かる
その水力発電タービンが5台収納されている
下の写真は、三峡ダムによる水力発電が中国のどのちいきまで供給されているかを示す立体地図。かなり広範囲に及んでいることが分かる。
三峡ダムの水力発電所で発電された電力の供給先を示す立体地図
下は三峡ダムの横に建設された大型客船や貨物船が流域を行き来するためのバイパス。パナマ運河同様、5カ所設けられたプールによって高低差の問題を解消している。
ダムの横に建設されたミニ「パナマ運河」の模型。
三峡ダムの建設によって中国が世界に誇るカラチョウザメ
(Aclpenser Sinensis Grdy )
が種の絶滅の危機に瀕している。カラチョウザメはいわゆる「キャビア」のもととなる魚だ。
チョウザメ問題については別途詳しく報告する。今の中国では85万人の強制移住よりこのカラチョウザメの絶滅問題の方が遙かに大きな社会経済問題となっているようだ!
チョウザメ類には海産と淡水産がある。海産は稚魚期の一時期を淡水で過ごしてから海に下って暮らし、産卵期に再び川に帰ってくる。サケと異なり産卵後に死ぬこともなく、海に戻り何回も産卵を繰り返す。チョウザメ類の肉は食用となるが、有名なのは卵の塩漬けである。いわゆる高級食材キャビア(caviar)となるからだ。
中国の切手にもなっているカラチョウザメ(中華チョウザメ)
このころ筆者の体調は絶不調。
つづく
■4日目 宜昌から三峡へ:2008年11月23日
武漢(Wuhan)から三峡(Three Gorges)までは、下の長江流域図にあるように確かに400kmある。今日は三峡ダムに近い宜昌市のホテルからマイクロバスに乗ってダムサイトまで視察する。なお、長江流域には、海側から上海(Shanghai)、 南京(Nanjing)、 武漢(Wuhan)、 重慶(Chongging)と中国を代表する大都市が位置していることが分かる。
長江流域における三峡ダムの位置
逆に考えると、それら中国を代表する大都市は長江の河畔に出来たと言える。すなわち長江の海運を最大限活用し、また長江の豊富な水を活用して出来た大都市といえるのである。実際、多くの生活物資、鉱物資源などは長江の海運を活用し上流、下流で移動してきた。また重慶だけでなく武漢の重化学工業は、長江の豊富な水資源をもとに成立している。
その三峡ダム(超大型の重力式コンクリートダム)は、1993年に着工、2009年完成予定だから現時点(2008年11月)ではまだ完全に竣工していないことになる。 三峡ダムの地理的位置は、貯水に関しては湖北省宜昌市街の上流に始まり、重慶市の下流にいたる約660kmにも及ぶ。中国政府によると、下流域の洪水を抑制するとともに、長江の水運の大きな利便性をもたらすとされる
三峡ダムの建設目的は、洪水抑制、電力供給、水運改善となっている。完成すれば三峡ダム水力発電所は1,820万kWを発電可能とする世界最大の水力発電ダムとなる。ちなみに原子力発電所の発電量は、一基当たり通常、100万kWであるから三峡ダムの発電量は、原発18基分に相当することになる。
これらの発電量は、中国の年間消費エネルギーの1割弱の発電能力を有し、電力不足の中国において重要な電力供給源となる。また水力発電は火力発電や原子力発電と比べCO2の発生も抑制することができるとされている。
周知のように三峡ダム開発では、おおよそ85万人の住民が立ち退かされ、世界的に貴重なチョウザメの遡上が困難となることで種の絶滅の危機に瀕するという問題など多くの問題が生じているが、日本同様エネルギー資源に乏しい中国にあって貴重な電力資源を供給することになっていることは間違いないところだ。
他方、三峡ダムの建設では住民110万人(中国政府の公式発表では約85万人)の強制移転、三峡各地に残る名勝旧跡の水没、さらに河川水質の汚染や生態系への悪影響、堆砂対策などダム建設に伴うさまざまな問題も指摘されている。
下の写真は、グーグルマップで見た三峡ダムである。
グーグルマップで上空から見た中国、三峡ダム(広域)。
グーグルマップで上空から見た中国、三峡ダム。
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私たちは宜昌市内のホテルを午前8時30分頃立ち、三峡ダムの開発現場に向かった。
ダムサイトまでの所要時間は50分ほとだ。途中、下の写真にあるような検問所がある。マイクロバスには三峡ダム建設事業の顧問、王さんがおり、通行許可書をもっているので、それを見せる。
次第に道の両側の地形が下の写真のように険しくなってくる。あちこちに奇岩があり、それらの谷間に川が流れている。
そうこうしているうちに、三峡ダム事業の展示館に到着する。この展示館で1時間ほど説明を受ける。最初は三峡ダムプロジェクトのDVD、その後、模型やポスター、展示物をもとに説明を受ける。
入るとすぐのところに三峡ダム事業の歴史的回顧というポスターがあり、孫文先生にまでさかのぼり、同事業の意味と価値が示される。
その後、スクリーンにDVDにより三峡ダム事業の歴史と現状が映し出され、皆で20分ほど見る。残念ながらこの歴史的巨大事業によって85万人(事業者側公式数字)もの住民が立ち退かされた写真、映像はついぞ見られなかった。もっぱら、これは何も中国に限ったことではない、日本の国土交通省の広報センターなどでも同じだ。
他方、過去、地域が遭遇した大洪水の被害については、DVDの中だけでなく、館内に展示される写真でもことさら強調されている。日本でもこれは同じだ。八ツ場ダムの広報センター(やんばかん)に行くと、カスリーン台風来週時の映像や写真が何度も強調されている。どこの国も同じだなぁと「感心」する(笑い)。
DVD終了後、スクリーンの直下にある三峡ダムの水利模型の解説を受ける。このような展示や紹介方法は、どこの国でもお定まりのコースだろう。
水力発電タービンの模型
水力発電タービンの大きさは人間と比べると分かる
その水力発電タービンが5台収納されている
下の写真は、三峡ダムによる水力発電が中国のどのちいきまで供給されているかを示す立体地図。かなり広範囲に及んでいることが分かる。
三峡ダムの水力発電所で発電された電力の供給先を示す立体地図
下は三峡ダムの横に建設された大型客船や貨物船が流域を行き来するためのバイパス。パナマ運河同様、5カ所設けられたプールによって高低差の問題を解消している。
ダムの横に建設されたミニ「パナマ運河」の模型。
三峡ダムの建設によって中国が世界に誇るカラチョウザメ(Aclpenser Sinensis Grdy )が種の絶滅の危機に瀕している。カラチョウザメはいわゆる「キャビア」のもととなる魚だ。
チョウザメ問題については別途詳しく報告する。今の中国では85万人の強制移住よりこのカラチョウザメの絶滅問題の方が遙かに大きな社会経済問題となっているようだ!
チョウザメ類には海産と淡水産がある。海産は稚魚期の一時期を淡水で過ごしてから海に下って暮らし、産卵期に再び川に帰ってくる。サケと異なり産卵後に死ぬこともなく、海に戻り何回も産卵を繰り返す。チョウザメ類の肉は食用となるが、有名なのは卵の塩漬けである。いわゆる高級食材キャビア(caviar)となるからだ。
中国の切手にもなっているカラチョウザメ(中華チョウザメ)
このころ筆者の体調は絶不調。
つづく