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2008年8月16日午後6時、栃木県鹿沼市の市道で軽乗用車が冠水中のアンダーパス道路に入り運転中の女性が死亡した(以下の記事参照)。 女性は、同市内の主婦、高橋博子さん(45)。中国から帰国する一人息子を迎えにいく途中だったという。 下はそれを伝える共同通信と読売新聞の記事である。
以下は現場の状況図である。 出典:青山貞一作成 出典:TBS JNN ニュース 2008.8.26 出典:TBS JNN ニュース 2008.8.26 以下は現場の推定地図。東北自動車道鹿沼インターチェンジ近くの市道で近くにガソリンスタンドがある。複数の地図を見たところ東北自動車道鹿沼インター近くの市道で近くにガソリンスタンドがある箇所か以下しかない!。間違いようもないはず。 出典:グーグルマップより作成 出典:ライブドアよ作成
高橋博子さんが軽乗用車に閉じこめられたことの経緯は、以下の通り。 @高橋博子さんが母親に携帯電話で「助けて〜」と連絡(16日午後6時18分) A直後、母親が消防本部に119番通報したが出動せず(同6時19分) B博子さん自ら「車に閉じ込められた」と、110番通報(同6時21分)が まさにその通りだ。 記事やテレビ報道では、同時刻に多くの電話連絡が入り、110番や119番の関係者がパニックになっていたと言うが、緊急時対応、危機管理が本務、本業の公務員が、パニックになってどうするのか、と言いたい! 娘さんからの現場実況中継の携帯電話を聞いた! 出典:TBS JNN ニュース 母親の気持ちは察して余りある。 「最後は『お母さん、さよなら』でした。あの絶叫は一生忘れられない」 出典:TBS JNN ニュース 現場には市役所の降雨センサーがあり、大雨が降ると市役所にすぐさま情報が入り、同時に警報のサインがでるという。さらに水位が上がると、バリケード(通行止め)が道路上に置かれるという。 しかし、今回はそのバリケードは置かれていなかった。鹿沼市によれば、バリケード設置は土建業者に民間委託していたが、その業者はバリケードを設置していない。 何でも市内には、今回事故が起きた場所と類似の場所が4箇所もあるという。 TBSのニュースによれば、「道路を管理する鹿沼市では事故発生のおよそ45分前に、道路が冠水したことを把握。車両が進入・水没しないように、委託業者にバリケードを設置するよう要請していましたが、想定以上の雨だったために、現場に保管していたバリケード自体が水没。道路を封鎖することができませんでした。 「高橋さんの車はここで浮いていた。ここら辺ぐらいまでは水位があったかもわからないんですけど」(バリケードを設置しようとした業者) 通報に正しく対応していたら、高橋さんの命は救えたのではないか・・・。バリケードが設置できていたら、車は水没せずに済んだのではないか・・・。 もともと「危険」といわれていた場所での事故。行政・鹿沼市に強い憤りを感じているという高橋さんの遺族ですが、26日開かれる市側の会見を見て、今後の対応を決めるとしています。(25日17:09) 」ということである。 ........ ところで、今回の事故の現場は東北自動車道の下をくぐる片側1車線の道路で、地面より低くなっていたことに構造的原因がある。 この事故は警察や消防の対応とは別に、大きな問題を投げかけているはずだ。 それは何かと言えば、鹿沼市など建設行政、土木行政の不作為だ。 都道府県から市区町村まで、日本では土木行政は旧建設省、現在の国土交通省の補助金や設計標準などにもとづき、道路建設、立体交差建設、河川改修、ダム建設をしている。 その国土交通省は、八ツ場ダム建設を見れば分かるように、当初50年に一回の確率、次に100年に一回の確率、最近では150年に一度の確率で起こるという大降雨に備え、河川の治水を行っている。 そのために全国各地で毎年数1000億円の税金や特別会計の巨額な公金が使われている。群馬県の八ツ場ダムでは、すでに4600億円の巨費が投じられている。 しかし、どうだろう国や自治体は片方で巨額の公金を使い150年に一度起こるかどうか分からない大降雨、大洪水に備え、いつできるとも知れない巨大なダムを建設している。 他方、今回の現場のように、かなり以前から大降雨によって市道のアンダーパスの窪みに水が溜まり、自動車が水没する可能性が指摘されていながら、まったく修理もせず、交通規制もせず、案内表示もせずに、尊い人命をうしなわせてしまっているのである。 もし、市役所の土木課などが、常識の範囲で洪水対策のための構造設計の変更と工事をあらかじめしていれば、高橋さんが亡くなることはなかったはずである。 国土交通省は、大降雨、大洪水が起きるとことさら流域住民や国民に恫喝をやめ、巨額な土木工事費でいつ完成するとも知れない治水事業など中止し、国、都道府県、市区町村は今回のようなことが起きる可能性がある場所の修理に全力を挙げるべきではないか? 今後、都市内部で短時間にピンポイント的に大降雨が起きる可能性は高まるだろう。 最近の例でいえば、神戸市灘区の都賀川が大雨による鉄砲水で増水し4人が濁流に流されて死亡した事故、東京都豊島区の下水道で作業員が流され東京都豊島区の下水道で作業員が流され、2人が死亡、3人が行方不明になった事故など、都市内部での水害危険箇所を徹底的に調べ、改善することが急務である! この国の土木行政は、不要不急で巨大な事業ばかりに巨費を投じ、本来的に必要な事業には、いくら指摘を受けても対応していないことが問題である。 いずれにせよ、今回の一件は、人災であり、警察行政、救急行政そして土木行政の不作為であり過失であり、国会賠償訴訟を起こされても仕方ないだろう! 最後に、今回の軽乗用車の水害事故を教訓として、自動車メーカーは、自動車の天井に、いざというときのために首から上だけを自動車の外にだせる天窓を常設すべきである。 |