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今年、胆嚢ガンで亡くなられた日隅一雄弁護士が翻訳され青山貞一が監修しました「審議会革命〜英国の公職コミッショナー制度に学ぶ〜」について、この制度が本場英国で、どのような政府行政機関のどのようなポストのひとに対応しているのかという質問を受けました。 日隅一雄翻訳、青山貞一監修 「審議会革命」英国の公職コミッショナー制度に学ぶ 現代書館 以下はそれに対する私見です。参考にしていただければ幸いです。 まず、英国の主要な政府関係機関(制度)には、 @執行機関(Executive Agency)、 A省外部門 NMD(Non-Ministerial Department)、 B政策遂行型政府外公共機関(ExecutiveNDPB:Non-Departmental Public Body) の3つがあります。 ひとつ目は、Executive Agencyであり、日本が英国の真似した独立行政法人(Agency)などがそれに相当すると思います。 ふたつ目は、直訳すると省外部門ですが、特定の専門性の強い政策領域において、その政策の企画立案と執行とを一体的に推進するために設けられる政府内の組織(department)を指します。 ここに言う省外はけっして省庁外という意味ではなくトップがministerである通常のdepartmentと同格です。ただし、組織上のトップがministerではないと言う意味です。 このNMDは、特定の専門性の強い政策領域において、その政策の企画立案と執行とを一体的に推進するために設けられる政府内の組織(department)。個々のnon-ministerial departmentとしてのステータス及び特性は当該政策領域の特徴を反映して長年かけて作り上げられてきたものであり、共通のクリアカットな基準があるわけではなく、バラエティに富む。共通の特性としては、日々の業務運営が大臣(内閣)の直接の統制から一定の独立性を確保しているということを意味しています。 このNMDは、2010年7月現在29の機関があります。 みっつ目に、政策遂行型政府外公共機関(Executive NDPB:Non-DepartmentalPublic Body)があります。 これは高度な専門的・技術的な意思決定を伴い、透明性、中立性が要求される業務が中心で研究開発の実施やファンディングは、執行型NDPBにより実施されます。英国には2010年10月時点で約679の機関が存在しています。これには日本の審議会に類する諮問型NDPBが含まれます。 日本は英国と同じ議員内閣制をとっている国ですが、もとより日本でいう審議会に相当する組織はなく諮問型NDPBがそれに相当すると思われます。 それぞれの行政組織をそこに従事する職員の資格から見ると、前二者は公務員ないし准公務員です。そして三つ目のNDPBは政府の外で個別法により設置されており、資格は非公務員です。但し、守秘義務や罰則規定など公務員に適用される規定が準用されています。 次に任用面からみると、一つ目の責任者は公募手続を踏まえ、主務大臣が任命します。二つ目の責任者は組織のトップが首相から任命されます。これに対し、三つ目のNDPBは、公募手続を踏まえ、主務大臣が任命となっています。 したがって、一つ目と三つ目の場合の責任者が、英国の公職コミッショナー制度の対象となっており、この公募手続をとっているという部分が公職コミッショナーとの関連で重要だと思います。 日本の行政関連組織との関連で見た場合には、いわゆる独立行政法人(執行機関)が一つ目に相応し、審議会が三つ目に相応するはずです。 周知のように、日本には国、地方とも審議会、委員会、検討会、審査会などがありますが、個別法で設置されているのは審議会と審査会だけであり、その他は要綱などにより設置されたり、大臣、局長などの私的諮問会議の色彩が強いです。 2012年秋に発足した原子力規制委員会は、審議会ではありませんが、個別法により規定された組織であり、その委員長らは国会承認事案となっています。田中委員長らには、すでに2度にわたり国会の不承認がでています。 おそらく英国であれば、国会承認以前に公職コミッショナーによる選定手続きがあり、その後、国会の承認手続きを踏むことになります。日本の場合は、審議会同様、実質的に省庁(官僚)による恣意的な選定となっており、その選定過程では透明性、公平性、実績とともに利益相反性がほとんどないがしろにされている現実があると思います。 |