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衆院予算委員会
TPP集中審議と
マスコミに誘導される世論
青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2013年3月19日 
独立系メディア E−wave


 2013年3月18日の衆議院予算委員会は、政府に対する各党のTPP問題への集中質問となった。

 この衆院予算委員会の模様は、NHKでも放映されたのでご覧になった方も多いと思う。

 衆院予算委員会質疑で分かったことは、安倍総理大臣が先の訪米でオバマ大統領にTPP参加を言明したにもかかわらず、安倍総理はじめ甘利TPP担当大臣ら政府首脳は、TPPの実態をほとんど何も分かっていない、知らなかったことである。

 質疑を聞いている限りでは、ほとんど何も分かっておらず、遅れてTPPに参加する国は、カナダ、メキシコ同様、先に決まった内容について異議申し立てができないこと、農業分野ですら先に決まった内容をひっくり返すことが不可能なことであった。

 私がブログで何度も繰り返しているように、TPPは単なる「貿易に関する協定」ではなく、化粧品、医療機器、医薬品、農薬、殺虫剤から著作権、知的所有権、さらには金融規制、インターネットプロトコル、政府調達などに係わる非関税品目、各種基準、制度まで係わっている。
 
 その結果、TPPは雇用、賃金、農業、移住、環境、消費者の安全などにも大きな影響を与える世界最大の自由貿易協定であり、結果的に国民生活や各国の既存のルールを踏みにじる可能性が高い協定であるはずだ。

 にも係わらず、衆院予算委員会における質疑では、著作権、知的所有権など非関税分野については、「ソフトの海賊版がなくなるだろう」程度の回答しかない。

 さらに肝心なところは、「外交的な交渉事なのでお答えできない」の連発である。もちろん、知っていてとぼけていることもあるかも知れないが、安倍総理に至っては、日本を美しい国にするためには...とか、海洋国家、日本の将来にとっては...など、およそ回答にならないレトリックまで述べる有様だった。

 このブログの冒頭に記したように、この予算委員会は2013年3月18日に衆院で行われている。

 一方、以下の朝日新聞、毎日新聞、讀賣新聞、共同通信のTPPに関する世論調査結果を見て欲しい!! 

◆TPP参加表明「評価する」71% 朝日新聞世論調査
朝日新聞 2013年3月17日
http://www.asahi.com/politics/update/0317/TKY201303170178.html

 朝日新聞社が16、17日に実施した全国定例世論調査(電話)によると、環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を安倍晋三首相が表明したことについて、「評価する」が71%に上り、「評価しない」の18%を大きく上回った。

 以下略


◆本社世論調査:TPP交渉63%支持 安倍内閣支持70%
毎日新聞 2013年03月17日 22時05分(最終更新 03月17日 22時24分)

 毎日新聞は16、17両日、全国世論調査を実施した。安倍晋三首相が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加を正式表明したことについて「支持する」との回答は63%で、「支持しない」の27%を大きく上回った。安倍首相の経済政策により、景気回復が「期待できる」と答えた人は65%に上り、「期待できない」は30%にとどまった。安倍内閣の支持率は70%に達し、2月の前回調査から7ポイント上昇。「支持しない」は5ポイント低下し、14%だった。

 TPP交渉参加の支持は30代以上の世代で6割前後に及び、不支持を上回った。一方、20代では不支持が50%を占め、支持の47%と逆転。市場開放で雇用機会が奪われることに警戒感もうかがえる。地域別にみると、北海道の不支持は53%に上り、支持40%より高い。

 以下略


TPP「評価」60%、内閣支持72%…読売調査
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130317-OYT1T00760.htm

 読売新聞社は15〜17日に全国世論調査(電話方式)を実施した。安倍首相が表明した環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加を「評価する」と答えた人は60%に上り、首相の決断を支持する人が多数を占めた。

 TPPに参加する場合、コメなど農産物の一部を自由化の「例外とすべきだ」との回答は62%となり、今後の交渉によって関税撤廃の例外扱いとすることを望む人が多かった。

 以下略


◆TPP賛成63%に増 内閣支持上昇72% 共同通信世論調査
2013.2.24 19:29

 共同通信社が23、24両日実施した全国電話世論調査によると、環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加に賛成は、前回1月調査の53・0%から10ポイント増の63・0%に上った。日米首脳会談で「聖域なき関税撤廃が前提でない」と認められたのを受けて賛成論が広がった形だ。反対は24・7%。安倍内閣の支持率は前回比6・1ポイント増の72・8%に上昇。民主党支持率は6・0%で、旧民主党などが合流した平成10年の結党以来最低となった。

 TPP交渉参加に賛成する理由(二つまで回答)は、「貿易自由化は世界の流れで、日本にとっても不可欠だから」の59・2%、「日本企業の輸出機会が増え、韓国などに対抗できるから」の43・0%が上位。反対理由の最多は「農業が打撃を受け、農地が荒れて環境面への影響があるから」の45・4%。内閣支持率の70%超えは平成21年9月の鳩山内閣発足当初以来となる。

 以下略


 上記の世論調査は、いずれも予算委員会質疑以前に行われたものである。にもかかわらず、朝日新聞の71%を筆頭に、毎日新聞60%、讀賣新聞60%、共同通信63%と、国民は60%〜71%がTPPに賛成ということである。これには驚いた!!

 一体これはどういうことであろうか?

 3月18日の衆議院予算委員会のTPP質疑で、総理大臣、担当大臣、担当副大臣らが先に述べたように、まったくおそまつきわまりない回答しかできない、していないにもかかわらず、国民の過半数はTPPに賛成しているのである!

 その理由は、簡単である。

 私達が何度となくしてきたように、日本国民は世界中で最も新聞、テレビの報道内容を鵜呑みにしている。自分の頭で考えず、新聞、テレビの報道内容を、世界中で最もそのまま鵜呑みにしている国民なのである。ちなみに世界で最も鵜呑み度が低い、英国民は14.2%、欧米諸国のそれは25%〜35%であるから、日本国民の70%という鵜呑み度は異常である。

 日本国民が新聞テレビの報道内容を鵜呑みにする割合である70%という数字は、私達が調べた限りで、3つ、4つの調査で明らかになっている。しかも、その数字は2000年に70%、2005年に72.5%と、年を追って高くなっている。

参考

◆<論点>青山貞一:日本人のマスメディア<鵜呑み度>は世界一
出典:土田修(東京新聞編集委員)著、調査報道、緑風出版

◆青山貞一:マスコミ報道「鵜呑度」、日本人70%、英国人14%

表  主要国における国民のマスコミ鵜呑度 単位:%
        2000年     2005年    差分
日本      70.2      72.5    +2.5
韓国      64.9      61.7    −3.2   
中国      64.3      58.4    −5.9 
オランダ    55.7      31.7   −24.0
ドイツ      35.6      28.6     −7.0 
フランス    35.2      38.1     +2.9
ロシア     29.4      36.0     +6.6 
アメリカ     26.3      23.4     −2.9
イギリス     14.2      12.5     −1.7
元データの出典は、日本リサーチセンター(東京都)



 つまり、日本国民の多くは、ここ数ヶ月の新聞、テレビによるTPPは国益にかなっており、問題があってもそれは農業分野に限定されるものであるという報道内容をそのまま信じ込んでいることになる。

 だが、どうみても、日本の新聞、テレビがこの間、カナダ、メキシコはじめ外国そして国内でまともな調査やインタビューをしてきたとは言えない。

 実際、TPPがきわめて秘密裏にその交渉をしていることをリークしたのは、私がブログに書いてきたように、米国のパブリックシティズンというNPOであり、それをフェースブックやYouTubeなどのソーシャルメディアで報じてきたのはデモクラシーナウという、やはり米国のNPOなのである。

<参考>

◆TPPに関連し米国400超の団体が連邦議会へ送った書簡 

★ワラックさんが訴える「日本のTPP参加は主権の放棄」You Tube

 信じられないことだが、事実なのは、いつものように日本のメディアはあらゆる記事、番組、ニュースでろくに実態を知ることもなく、調べることもないまま、TPPは必要であるという一方的な情報の垂れ流しをしてきたのである。

 おそらく、こうして日本国民は事実、真実を政府からもマスコミも知らされることないまま、TPPに賛成する大きな国民の意識や意向の方向性が形成され、時の政府に利用されることになるのである。
 
 これは何もTPPに限ったことではなく、消費税問題、原発問題、沖縄問題、総選挙問題、小沢一郎氏問題など、枚挙にいとまがない。

 最もはずかしいのは、それら大メディアの情報をそのまま鵜呑みにしてきた日本国民の多くであり、これほどお目出度い国民性はないのではないか!?

 そして気づいたときには、日本の経済社会は、かつてないほど巨大企業、多国籍企業が内部留保を蓄え、未だかつてない格差社会となっているのである。

 そこには、日本の農業が壊滅するだけにとどまらず、巨大企業、多国籍企業が肥え太り、一般国民や途上国の人々がますます貧しくなって行く構図が見え隠れする。

<参考>

企業の本質については以下の米国映画をご覧頂きたい!
★ザ・コーポレーション その1  その2  その3  その4  その5 

 さらに自動車排ガス問題、BSE問題、遺伝子組み換え問題などで過去経験してきたように、環境、食の安全や軽自動車、国民皆保険などに象徴される日本ならではの技術や制度も危うい物となって行く可能性が大きい。
 
 もとより、グローバル化はイコール、アメリカ化である。TPPの本質は、世界各国を米国化することにあると思える。そしてアメリカのTPPにおける真のそして最大意図は、おそらく世界最大の人口を持ち、世界最大の市場となる中国を巻き込むことにあると推察できる。