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2013年3月18日の衆議院予算委員会は、政府に対する各党のTPP問題への集中質問となった。 この衆院予算委員会の模様は、NHKでも放映されたのでご覧になった方も多いと思う。 衆院予算委員会質疑で分かったことは、安倍総理大臣が先の訪米でオバマ大統領にTPP参加を言明したにもかかわらず、安倍総理はじめ甘利TPP担当大臣ら政府首脳は、TPPの実態をほとんど何も分かっていない、知らなかったことである。 質疑を聞いている限りでは、ほとんど何も分かっておらず、遅れてTPPに参加する国は、カナダ、メキシコ同様、先に決まった内容について異議申し立てができないこと、農業分野ですら先に決まった内容をひっくり返すことが不可能なことであった。 私がブログで何度も繰り返しているように、TPPは単なる「貿易に関する協定」ではなく、化粧品、医療機器、医薬品、農薬、殺虫剤から著作権、知的所有権、さらには金融規制、インターネットプロトコル、政府調達などに係わる非関税品目、各種基準、制度まで係わっている。 その結果、TPPは雇用、賃金、農業、移住、環境、消費者の安全などにも大きな影響を与える世界最大の自由貿易協定であり、結果的に国民生活や各国の既存のルールを踏みにじる可能性が高い協定であるはずだ。 にも係わらず、衆院予算委員会における質疑では、著作権、知的所有権など非関税分野については、「ソフトの海賊版がなくなるだろう」程度の回答しかない。 さらに肝心なところは、「外交的な交渉事なのでお答えできない」の連発である。もちろん、知っていてとぼけていることもあるかも知れないが、安倍総理に至っては、日本を美しい国にするためには...とか、海洋国家、日本の将来にとっては...など、およそ回答にならないレトリックまで述べる有様だった。 このブログの冒頭に記したように、この予算委員会は2013年3月18日に衆院で行われている。 一方、以下の朝日新聞、毎日新聞、讀賣新聞、共同通信のTPPに関する世論調査結果を見て欲しい!!
上記の世論調査は、いずれも予算委員会質疑以前に行われたものである。にもかかわらず、朝日新聞の71%を筆頭に、毎日新聞60%、讀賣新聞60%、共同通信63%と、国民は60%〜71%がTPPに賛成ということである。これには驚いた!! 一体これはどういうことであろうか? 3月18日の衆議院予算委員会のTPP質疑で、総理大臣、担当大臣、担当副大臣らが先に述べたように、まったくおそまつきわまりない回答しかできない、していないにもかかわらず、国民の過半数はTPPに賛成しているのである! その理由は、簡単である。 私達が何度となくしてきたように、日本国民は世界中で最も新聞、テレビの報道内容を鵜呑みにしている。自分の頭で考えず、新聞、テレビの報道内容を、世界中で最もそのまま鵜呑みにしている国民なのである。ちなみに世界で最も鵜呑み度が低い、英国民は14.2%、欧米諸国のそれは25%〜35%であるから、日本国民の70%という鵜呑み度は異常である。 日本国民が新聞テレビの報道内容を鵜呑みにする割合である70%という数字は、私達が調べた限りで、3つ、4つの調査で明らかになっている。しかも、その数字は2000年に70%、2005年に72.5%と、年を追って高くなっている。
つまり、日本国民の多くは、ここ数ヶ月の新聞、テレビによるTPPは国益にかなっており、問題があってもそれは農業分野に限定されるものであるという報道内容をそのまま信じ込んでいることになる。 だが、どうみても、日本の新聞、テレビがこの間、カナダ、メキシコはじめ外国そして国内でまともな調査やインタビューをしてきたとは言えない。 実際、TPPがきわめて秘密裏にその交渉をしていることをリークしたのは、私がブログに書いてきたように、米国のパブリックシティズンというNPOであり、それをフェースブックやYouTubeなどのソーシャルメディアで報じてきたのはデモクラシーナウという、やはり米国のNPOなのである。
信じられないことだが、事実なのは、いつものように日本のメディアはあらゆる記事、番組、ニュースでろくに実態を知ることもなく、調べることもないまま、TPPは必要であるという一方的な情報の垂れ流しをしてきたのである。 おそらく、こうして日本国民は事実、真実を政府からもマスコミも知らされることないまま、TPPに賛成する大きな国民の意識や意向の方向性が形成され、時の政府に利用されることになるのである。 これは何もTPPに限ったことではなく、消費税問題、原発問題、沖縄問題、総選挙問題、小沢一郎氏問題など、枚挙にいとまがない。 最もはずかしいのは、それら大メディアの情報をそのまま鵜呑みにしてきた日本国民の多くであり、これほどお目出度い国民性はないのではないか!? そして気づいたときには、日本の経済社会は、かつてないほど巨大企業、多国籍企業が内部留保を蓄え、未だかつてない格差社会となっているのである。 そこには、日本の農業が壊滅するだけにとどまらず、巨大企業、多国籍企業が肥え太り、一般国民や途上国の人々がますます貧しくなって行く構図が見え隠れする。
さらに自動車排ガス問題、BSE問題、遺伝子組み換え問題などで過去経験してきたように、環境、食の安全や軽自動車、国民皆保険などに象徴される日本ならではの技術や制度も危うい物となって行く可能性が大きい。 もとより、グローバル化はイコール、アメリカ化である。TPPの本質は、世界各国を米国化することにあると思える。そしてアメリカのTPPにおける真のそして最大意図は、おそらく世界最大の人口を持ち、世界最大の市場となる中国を巻き込むことにあると推察できる。 |