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◆個人の価値観の多様性 以上、日本の幸福度の低さ、そして逆に貧困率の高さについて、経年データをもとに見てきた。 問題は日本は世界そして先進諸国にあって幸福度が低位にとどまっているだけでなく、単調に幸福度が減少し、貧困率が上昇している現実があることである。 今まで見てきたデータは社会経済指標のうち、経済指標に関わるものが多かったが、ミシガン大学の「幸福度」調査指標の最後の部分には、個人の自由、個人の価値観など、価値観に関わるものがあった。 次にそれらについて見てみたい。これらは定量化が困難な指標であるが、日本の場合、とくに若者世代の幸福度に密接に関わる重要な指標であるように思える。 以下はWikipediaを参考にしている。 @価値観の多様性と分布、変化 人々が抱くあるいはもっている価値観が多様であることは言うまでもない。価値観の形成は親から教えられることもあれば、書物を読むことで教えられることもある。 海外旅行をするなど個人的な体験をきっかけに独自に新たな価値観が構築されることもある。古くは1970年代のように学生運動、政治運動のなかで当時の学生、若者の価値観が形成されたこともある。 さらに組織や共同体に属することによって継承されることもある。同じ価値観を抱く人同士では、そうでない人同士に比べて、互いの行動が理解しやすかったり共同作業がしやすく、接近する傾向があると言える。 たとえば環境問題、食の安全などへの認識から有機農業を志し、同じ価値観を共有する人々によって新たな農業共同体が形成されることもあるだろう。 A価値観の多様性と社会組織 一方、企業組織では価値観は企業風土や社風、従業員の行動などから形成され、結果として企業の存続/消滅 にも影響することがある。 その企業に適していて社会的にも適切な価値観を構築し、それを従業員に提示し共有してもらうということは経営者・リーダーの重要な仕事である、とされることも多い。 逆に、組織の価値観がそこで働くひとびとにとって、自由な発想、考え、行動を束縛することで、結果的に個人の多様な価値観や自由が拘束されることになり、人間の幸福度の大きな影響をもたらすこともあるだろう。 出典:青山貞一 これは何も営利企業だけでなく、行政組織やその外郭団体(独立行政法人、公益法人など)にも当てはまることである。 下図は、さまざまな組織の価値観と個人の価値観との相互関係を図式化したものだが、価値観の多様化は、組織内で働く個人の価値観と共鳴せず、個人の価値観、自由を圧迫することもあり得る。 欧米諸国では多くの労働者は、企業など組織は、あくまで生活の糧(給与)を得る場と割り切り、個人の多様な価値観、自由は、企業組織外の市民社会やNPO・NGO活動の中で発露、体現すると思われる。 図 個人の価値観、自由と組織 出典:青山貞一、東京都市大学、公共政策論授業パワーポイント とくに欧米には、営利組織(企業社員、PO)、行政組織(公務員、GO)以外に営利組織でもなく、行政組織でもないNPO(非営利組織)、NGO(非政府組織)が多数存在し、企業組織や行政組織の価値観と自分の価値観が相容れないと考える人々は、それらNPO,NGOの組織で働く機会がある。 もちろん、報酬はPOより少ないことが多いが、それでも価値観と共有する人々と協業し、社会に貢献することを目的に活動している。 しかし、日本では、NPO,NGOが欧米に比べ圧倒的に組織数が少ない。 そればかりか組織の経営、財政を支援する法制度が無いに等しいため、結果的に日本NPO,NGOの経営は非常に脆弱である。給与所得も日本人の平均所得より遙かに低いものが多い。そのため、自分の価値観を体現するためにNPO、NGOを働きの場として選ぶことの大きな壁となっていることも事実であろう。 図 欧米型と日本型の社会勢力図 出典:青山貞一、東京都市大学、公共政策論授業パワーポイント B価値観の多様性と家族関係 個人の価値観、自由との関係では、夫婦そして家族において価値観がうまく共有されているかどうかも重要である。 現代社会では、結婚前に相互の価値観を確認しあうということが自然な形で行われていることが一般的であるが、その齟齬も個人の価値観から見た幸福度を下げる大きな要因となっている。 下のグラフは日本の離婚率の年次推移をみたものだが、離婚件数及び離婚率は、昭和30年代は7万組前後、0.7〜0.8で推移し、増加してきた。昭和58年に18万組、1.51まで増加した。その後減少、昭和63年から再び増加していた。 図 戦後の離婚率の年次推移 出典:厚生労働省 近年、離婚率は減少し平成18年は26万組、2.03となっているが、日本社会ではいわゆる婚姻率が1970年代はじめから一気に落ち込み、その後も単調減少しているという事実がある。これについては以下の戦後の婚姻率・離婚率グラフを参照のこと。 図 戦後の婚姻率・離婚率の推移 出典:Garbagennews.com つづく |