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目に余るNHKの
情報操作による世論誘導
〜放射線量報道(福島市)〜
青山貞一

環境行政改革フォーラム(FEAR)代表幹事
掲載月日:2012年5月4日
 独立系メディア E−wave Tokyo

転載禁


 2012年のGW中の5月1日〜3日、今年に入ってはじめて福島県内の放射線測定調査を敢行した。

 会津若松のホテルでNHKの総合テレビを見ていたら、夕方の定時ニュースで福島県内の空間放射線測定値を報道していた。

 以下は5月2日夜の報道内容である。


図12 2012年5月2日夜 NHKの総合テレビ定時ニュース
の福島県内の空間放射線測定値(1)


図13 2012年5月2日夜 NHKの総合テレビ定時ニュース
の福島県内の空間放射線測定値(2)


●福島市の場合

 一方、私たちは今回、川内村では測定していないが、昨年来何度も測定をしている福島市の場合では次のようなことが言えよう。

 NHKは5月4日に0.63μSv/hという値を報じており、私たちが2012年のGW中の5月2日に福島市内で測定した放射線量でも、国道、県道、除染した住宅地では0.5〜0.6μSv/hという値が多かった。


福島市渡利地区における除染  
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012.5.2

 しかし、たとえば福島市内渡利地区にある保育園の前では、以下にあるように、地上1mでも1.08〜1.22μSv/h、地表面では、1.89〜2.00μSv/h、渡利地区の一角にある近くにある花見山公園では、地上1mで1.2〜1.5μSv/h、地表での測定では2.02〜2.60μSv/h、また渡利地区の弁天山公園地区では、地表面で1.85〜2.50μSv/hと高かった。福島市は原発から60km近くも離れている。その地での測定値である。

●渡利の住宅地道路上(推定除染後)
 地上1mで0.52〜0.57μSv/h

●渡利の保育園直近の春日神社
 地上1mで1.08〜1.22μSv/h、
 地表面1.89〜2.00μSv/h、


渡利の住宅地のすぐ隣にある春日神社。草地の表面は
非常に放射線量が高かった
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012.5.2


渡利の住宅地のすぐ隣にある春日神社のすぐ隣にあった保育園
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012.5.2

●花見山公園内
 地上1mで1.20〜1.50μSv/h、
 地表面で2.02〜2.60μSv/h


渡利地区の春日神社から花見山公園はわずか0.9km
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012.5.2


花見山公園は桜の名所、すばらしい里山景観だが放射線量は高い
撮影:池田こみち Nikon CoolPix S8 2012.5.2

●弁天山
 地表面で1.85〜2.50μSv/h


弁天山公園の草地で放射線量を測定 線量は非常に高かった
撮影:池田こみち Nikon CoolPix S8 2012.5.2


原発事故当時から放射線量が高い福島市渡利地区
出典:グーグルマップ

 さらに福島県庁となりにあるもみじ公園の地表は、1.68μSv/h、市民会館となりの合同庁舎の草地では1.6μSv/h、さらに阿武隈川の陸橋脇の草むらでも2.25μSv/hと福島市は道路面以外はいずれも線量率が高い。


福島県庁と知事公邸の間にある「もみじ公園」の放射線量はいつも高い
撮影:池田こみち Nikon CoolPix S8 2012.5.2

 しかし、NHKニュースは、図1にあるように、福島市は0.63μSv/hなど、道路面の測定値あるいは除染後の住宅地並の低い値を連日報道している。

 以下は、この5月2日、青山貞一、池田こみちが行った福島市空間放射線量現地調査データをもとに環境総合研究所のSuper Geigerシステムを使ってスプライン補間した結果を示している。

 NHKが報道しているのは図5のNHK報道地点近くであり、非常に低い地点であることが分かる!


図12 スプライン補間法による福島市中心部の放射線線量率分布の分析結果
    下の高線量率(紫、赤、橙)が渡利地区の弁天山、浜見山地区 
    単位:μSv/h
    現地測定:青山貞一、池田こみちが2012年5月2日に現地測定
    解析:青山貞一、鷹取敦、環境総合研究所Super Geigerで解析


図13 福島市中心部の地形図 出典:グーグルマップ

●NHKは情報操作による世論誘導をやめよ!

 原発事故を巡り、科学の在り方、報道の仕方が厳しく問われている。小中高等学校の教育にどう放射能、放射線、放射性物質などを組み入れるかも問われている。そんな中にあって、NHKの報道は情報操作による世論誘導そのものであり、何ら県民、市町村民のためにもなっていないだろう。

 そして、実態からかけ離れた低い値を連日連夜、視聴者に情報提供することにより、多くの人々の積算被曝線量を増やすことをNHKは知るべきである!

 ではどうすべきか?

 私見だが、NHKの定時ニュースの場合、たとえば各市町村の全地点の放射線量データの@最低限、A最高値、B平均値の3つをグラフなどで示すべきである。さらにデジタル放送の特徴を生かして、文字多重などで詳細を示すべきであろう!

 従来の方法では、福島県民が情報操作され、今までそして今後とも被曝量を増やすことが大いに懸念される! NHKはその責任をとれるのであろうか?