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植草一秀先生が、非常に意味深長な論考を書かれている。以下に少々長くなるが引用させていただく。 ★植草一秀:「国民の生活が第一」示した仏・ギリシャ選挙結果 欧州の政治激変については、昨日付のメルマガに記述したところだが、ブログにもその概要を記載させていただく。 フランスではサルコジ大統領が大統領選での再選を果たせなかった。再選を目指した現職大統領が大統領選で敗北したのは、1981年にジスカールデスタン大統領がミッテランに敗北して以来31年ぶり。社会党は1995年に退任したミッテラン大統領以来、17年ぶりに政権を奪還した。 ギリシャでは、経済緊縮政策を主導してきた連立二大与党が惨敗し、第一党の全ギリシャ社会主義運動が第三党に後退した。 欧州政府債務危機の発火点であるギリシャで緊縮経済政策を主導した連立与党が惨敗し、欧州政府債務危機処理を主導した一人であるサルコジ仏大統領が落選したことは、欧州情勢の激変を意味する事象である。 メディアは一斉に、欧州政府債務危機処理スキーム破綻を警告する論調を強調している。また、易きに流れる民主主義、ポピュリズムを批判する論調を強めている。 しかし、これらの批評に欠落している視点は、日本を含めて、これらの国が民主主義制度を採用しているという重要な事実だ。 ものごとの是非を判断するのは主権者である国民であって、特定の大資本、官僚機構、ましてやマスメディアではない。 最近の論調を見ると、この根本の部分をはき違えているとしか思えない論評があまりにも多い。 主権者である国民を下々の位置に置いて、高みから、資本の論理、グローバリズムの視点から、別の主張を展開し、下々の国民は、官僚機構の提案する方策を黙って受け入れていればよいのだとの、傲慢な論調が幅を利かせている。 民主主義を否定する、一部の特権層が世界を支配することを当然視する発想を、根本から否定する必要が生まれている。 日本の消費増税提案なども、その典型例のひとつである。 官僚機構の驕り、為政者の勘違いが甚だしい。 欧州政治情勢激変の背景に、経済のグローバル化に対する批判、資本の論理の矛盾、民意の軽視に対する修正圧力が存在する点を見落とせない。 主権者である国民、市民の意志を軽視する為政者に対する警鐘が鳴らされたと受け取れる。 ギリシャはユーロに加盟し、ユーロに留まるために、いま、超緊縮経済政策を強制されかかっている。しかし、ユーロに加盟することも、ユーロに加盟し続けることも、必ずしもギリシャ国民の悲願ではない。 ユーロに留まるために緊縮政策を強制されるより、ユーロから離脱して、成長しなくとも悠々自適の生活を楽しみたいというのが、多数のギリシャ国民の本音ではないのだろうか。 引用ここまで 日本の御用学者やマスコミにはまったく存在しない主張である。とくに最後のユーロに留まるために緊縮政策を強制されるより、ユーロから離脱して、成長しなくとも悠々自適の生活を楽しみたいというのが、多数のギリシャ国民の本音ではないのだろうかの部分はとりわけ新鮮である。 もちろん、私は日本が抱える国、地方で1000兆円になんなんとする累積債務をよそに、野田政権下で続く巨大公共事業を再開するような愚作は論外である。 しかし、国民の生活、さらに幸福をそっちのけでトヨタ、パナソニックはじめ輸出型の巨大企業の論理、そしてIMF、世界銀行体制下で経済のグローバル化の視点、さらに先進諸国に類例を見ない官僚独裁国家など、日本の行状を見るにつけ植草先生の主張はまさに卓見かも知れない。 私が呼称している「松下政経塾内閣」を見ていると、まさにパナソニックなど輸出型巨大企業をありとあらゆる面で支援する政策のオンパレードだ。円高阻止政策、法人所得税軽減政策、TPP政策、消費税増税政策、どれをとっても国民の生活、幸福など一考だにしない輸出型巨大企業の優遇策ばかりだ。 鷹取敦氏が以下の論考で明快に解説しているように、輸出型巨大企業は、消費税率がアップすればするほど、受けられる「輸出戻し税」の還付が大きくなる仕組みの恩恵を受けている。 鷹取論考によれば、業種別で見ると製造業が約45%、卸売業が約43%とこの2つの業種がほとんどであるが、製造業の細分類をみると「一般機械」が3809社でトップ、自動車関連(529社)を含む「輸送用機械」は688社を占めることになる。 このデータだけをみると自動車関連メーカーの割合は小さいように見える。 ところが、還付金の総額でみると違った姿が見えてくる。2010年の「消費税還付金上位10社」をみるとトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱など巨大輸出型自動車企業はとんでもない還付金を受けていることが分かる。 すなわち、消費税還付金は上位10社だけで8700億円、全体で2兆円近くに達し、トヨタ一社の5年間の還付金の合計は1兆3,009億円にも上るのである。 ◆鷹取敦:輸出型大企業には痛くもかゆくもない消費税アップ
今後、消費税率5%から10%に上がれば、同一輸出額であっても還付額は2倍になる。さらに上がればというよに、まさに濡れ手に泡なのである。これでは消費税増税=>社会保険・国民年金という政府の言い分は、まるでウソ。輸出型巨大企業を税制面で積極支援ということになる。 日本の巨大企業の多くは輸出割合が大きなグローバル企業であるから、仮に円高となってもこの還付金が増えればウハウハなのである。 出典:経済産業省(通商白書2010) 出典:経済産業省(通商白書2010) 一方、輸出型巨大企業はもともとロボットなどの導入で生産過程の自動化、合理化を極限まで進めており、日本国内ではどんどん雇用を削減し、また非正規雇用を増やしている。同時に賃金が安いアジア諸国にどんどん直接投資を行って収益を増やしている。 このように輸出型巨大企業は、国内で払う法人税をどんどん減らし、海外生産販売でタックスヘイブンを謳歌、同時に国内雇用を極限まで減らしてている。一昔前の言い方ならまさに売国奴ではないのか。 周知のように、リーマンショックの時、トヨタは一気に従業員を解雇したが、そのとき税引き後利益の内部留保額は16兆円にも達していた。これだけの内部留保があるなら少しでも雇用を守るべきではなかったのか? しかも、赤字転落後は法人税も払っていない。 菅内閣は、官僚独裁国家の手のひらで消費税増税を選挙公約として参議院選挙に大敗した。松下政経塾内閣の野田政権は、命を賭けて消費税率を上げると言うなど、トチ狂っているとしか思えない。いずれも2009年秋の政権交代時に何も国民に公約していない政策であるからだ。 植草先生が、「これらの批評に欠落している視点は、日本を含めて、これらの国が民主主義制度を採用しているという重要な事実だ。 ものごとの是非を判断するのは主権者である国民であって、特定の大資本、官僚機構、ましてやマスメディアではない」とのべているように、今の民主党政権は、まさに自民党同様。民主主義をはきちがえ、マスコミは輸出型巨大資本、グローバリズム、独裁官僚機構の広報機関、手先となっていると言っても過言ではない。 いずれも経営が左前になっているマスコミが広告収入ほしさにトヨタ、パナソニックなどの輸出型巨大企業を支援し、消費者増税やTPP政策を支援しているのは本末転倒である。 永年電力業界からの広告収入欲しさに、原発推進に手を貸し、外国における深刻な原発関連事故を報じて来なかったのが、日本のマスコミである。このようなマスコミはとっとと倒産し消えて欲しいものである。 公金、税金を湯水のように使いまくる官僚機構や天下り実態に手を付けず、安易に消費税率アップやTPPに走れば、主権者である国民の生活や幸福はさらに劣化することは明らかである。 ギリシャ同様、EUのお荷物国とされているスペイン、ポルトガル、イタリアなどのラテン系諸国やバルト諸国を見れば分かるように、それぞれ小さいが魅力ある独自の国づくりをすすめてきた諸国、地域が、ユーロに留まるために緊縮政策を強制されるのは、ばかげていると思う。 実際、それらの国々、たとえばイタリアを旅して強く感じるのは、成長しなくとも悠々自適の生活を楽しんでいることである。もちろん、これはローマではなく、アマルフィ海岸やソレント半島などかつての都市国家でのことである。 もちろん、同じイタリアでもローマなど巨大都市は巨大資本、グローバリズム、官僚主義の強い影響を受けているが、地方都市の多くは現在でも成長しなくとも悠々自適の生活を(つつましやかに)楽しんでいるのである。 昨年3月、私たちは南イタリアにいた。周知のようにイタリアはチェルノブイリの翌年、国民投票で脱原発を国民が選択した。現地で体験すれば分かるが、イタリアの地方都市では2月でも暖房温度は上げない。おそらく電気代が高いからだろうが、それだけはない。自分たち国民が自ら選択した結果だからである。 日本ほど輸出型巨大企業、それを支援する政権、官僚組織などのために国民の生活や幸福が台無しになっている国はそうない。 自動車工業と道路土建業が栄え、国民の生活は貧しくなる。これが日本だ! 日本中どこに行ってもイタリアでは考えられない国土幹線道路、都市高速道路、高規格道路が走っている。しかし、津波被災地である三陸地域ひとつをとってみても、何らこれらが地域の観光や産業に生きていない。 世界有数の景勝地で観光地の南イタリア・アマルフィ海岸には、9世紀から今日に至る曲がりくねったがたがたの狭い道しか存在しない。その道を路線バスやレンタカー「小さいがキラリと光る」ポジターノ、プライアーノ、アマルフィ、マイオーリ、セターラといった漁村、農村を結び、ひとびとが行き交う、これが国民生活を第一にしたまちづくりなのである。 いくら談合土建で巨額の税金を使いトンネルと橋梁ばかりの超豪華な道路を整備しても、地域の反映はない。これが私たちがよくゆく、南イタリアの経験である。当然、その背景にはかつての都市国家(自治、民主主義、)の存在と持続可能社会を維持してきた歴史がある。 道路功成って万骨枯れるである! アマルフィ、ミノーリの上空からソレント半島の先端(カントーネ)を見た立体図 ソレント半島の左側がアマルフィ海岸。半島の右側にソレントがある。急峻な断崖絶壁の地形にカントーネ、ポジターノ、アマルフィなどのまちがへばりついている IMF体制下後の韓国のように極限状態まで格差社会、競争社会が進み、国民全体や地方都市までががそれに巻き込まれている国をみるまでもなく、何が国民の生活、幸福にとって大切なのかについて、私たちは本気で考えなければならないときにある。 |
●日本国民の幸福度は世界43位!(ミシガン大学調査) 「国民の生活が第一」ということからすると、看過できないことがある。 日本ではあまり知られていないが、ミシガン大学は幸福度という社会指標にもとづいて世界各国をランキングしている。これはブータンが第一位の幸福度ランキングとは異なり、本格的な定量的な指標によるものだ。 ミシガン大学の幸福度ランキングでは、日本は何と43位である。GDPで世界2位、3位にあり、これほど勤勉な国民が43位とは驚きである。 もう少し詳しく見るとミシガン大学社会調査研究所が、世界97か国(世界人口の90%が在住)の幸福度ランキング調査し2008年に結果を公表している。 ミシガン大学の社会調査研究所のランキングによると、第1位はスカンジナビアのデンマーク、第4位がアイスランド、米国は第16位、わが日本は第43位であった。 春から秋の季節のコペンハーゲンの景観 出典:Wikipedia コペンハーゲンの中心部にあるクリスチャンボー宮殿の前の池田さん 撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 15 Feb. 2010 |
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