青山さま
憲法改正に絡んで何でもかんでも、ドイツのことが悪用(!!)されるのには怒りを覚えます。ドイツで閣僚、議員が、ナチスのことを持ち出して発言をすれば、すぐに辞任ですね。
現代ドイツの体制は、ナチスが民主主義体制の下で生まれたことの反省から成り立っています。ですから、民主主義体制において二度とそうした独裁体制が生まれないように、戦後いろいろな配慮がなされてきました。それで、憲法を大切にして、憲法のもとに法治国家を造るという基本が出来上がっています。
たとえば(新大久保で起こっているような)ヘイトスピーチも、ドイツでは民衆扇動罪として犯罪になります。ホロコーストを否定するのも民衆扇動罪で犯罪になります。ですから、これを日本に適用すれば、慰安婦問題、南京事件を否定すれば、犯罪だということです。
この春にべルリンで、ドイツ憲法裁判所裁判長(地方分権化されたドイツではべルリンではなく、ドイツ南西端のカールスルーヘという小さな都市にあり)と記者団の懇談会がありました。その時、裁判長は憲法改正条件として国会決議に3分の2が必要だというのは(ドイツもそうです)絶対に変えてはならないと主張していました。
この3分の2条項こそが、憲法の安定性と持続性をもたらし、市民が憲法と一体感を持てるようにしてくれているたいへん大切な条項だというのです。それを変更することは、憲法の根幹を破壊することだといわんばかりでした。
それから、安倍首相がよくドイツの憲法は何回も改正されているとよく発言します。ドイツ在住の日本人ジャーナリストにも、そう主張している人もいるようです。
ドイツの憲法は基本法がその代わりをしていますが、確かに基本法は西ドイツのできた1949年から2009年秋まで(国会の前任期終了時点まで)に57回改正されています。
改正内容をみますと、連邦(国)と州の役割分担、財政負担の分担にかかわるもの(地方分権化されているドイツならではのもの)
男女平等の強化
郵政民営化
違憲申し立て権の導入
動物保護の導入
選挙権取得年齢の引き下げ
東西ドイツ統一による変更条項
など、時代の変化に応じて改正した制度的なもので、憲法の根幹、国の根幹にかかわるものはほとんどありません。
憲法、国の根幹に関わるものは、多分以下だけだと思います。
1954年の改正で、バリ条約(EUのはじめになるもの)を承認して、それに伴って独仏対立が終結したことから、ドイツの再軍備が認められました。
それで、西ドイツが55年に連邦軍創設、NATO加盟となっています。
ふくもと@ベルリン |