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みなさま 青山貞一です。 他国の経験を参考にするのは、当然ながら必要ですが、当然のこととして自分で現場に入り、実証することがなによりなのです。もちろん、現在、PAZ(5km圏)だけでなくUPZ(30km圏)も容易に入れなくなっています。 私見では、やはり可能な限り、自分や友人、知人の現場主義的な実感、さらには仮説を設定しての調査が大切だと思います。これは何も大げさなことではありません。 私たちの場合、幾度も現地に入り空間放射線量を測定し、その都度公表してきましたがが、健康への影響、被害でもっとも身近にあって着目しているのは、3.11から2〜3か月間、福島第一原発から4km−5kmの双葉町で置き去りにされ、その後拾われたブリティッシュ・ショート・ヘアのメスネコ、自宅では「まるちゃん」が重要な指標であり、生き証人となっています。 |
2011年6月時点での福島放射線現地調査結果 (移動測定結果の主要市町村別平均値) 出典:環境総合研究所(東京都目黒区) 南相馬市浜通り海浜被災地で放射線を測定する 撮影:青山貞一 地上1mでの放射線測定(飯舘村にて) 撮影:青山貞一 地上5cmでの放射線測定(飯舘村にて) 撮影:青山貞一 まるちゃんが双葉町にいたのは、生まれて推定半年後、体重で2kg前後のときです。双葉町はいわゆる原発から5km圏のPAZに属します。推定では原発事故時、すなわち3月12日にヨウ素とセシウムで100〜200μSv/hの空間放射線量、その後、半減期が7日のヨウ素が減ってゆきますが、1か月後でも50μSv/h近くあったはずです。 ※ 国設空間放射線量測定値 もらわれてきたころのまるちゃん。おどおどしていました まるちゃんの故郷、双葉町をグーグルマップで見てみます。 まるちゃんが捨てられた状況は不明ですが、家族が無念の思いで飼い猫を双葉町に置き去りにした後、まるちゃんは、おそらく当初、家族が与えたエサを食べ、その後は、家の縁の下などに住みながら、近くに生息する昆虫、哺乳類の小動物、両生類、爬虫類、魚類などを食べて飢えをしのいでいたものと推察されます。ネコも植物をたべますが、それは例外的です。 これら早期段階での内部被ばくに通ずる食物連鎖がどうなっていたのか、それぞれどのレベルの放射能レベルなのかはほとんど分かりません。本来、生物・生態学者はこの辺を実証しデータを出すべきでしょう。 しかし、近くの水たまりや小川で水を飲み、その近くにいた上記の生物をたべていたことは推測されます。 ところで、事故後から2−3か月でのまるちゃんの被ばくは相当なものになったことが推察されます。 その間の猫の平均体重を2kgとした場合、体重あたりでは人間の30倍となりますが、ここでは、それを考慮せず、単純に外部被ばくの累積線量を計算すると 50μSv/h×90日×24時間=108mSv となります。平均線量を20μSv/hとした場合は 20μSv/h×90日×24時間=43mSv となります。前者は3か月で100mSvを超すことになります。 上記は実効線量のうち外部被ばくですが、当然のこととして内部被ばく(等価線量より計算)がこれに加わることになります。原発事故時の等価線量推定では、実行線量と同等以上となっていることが多いので、実際には外部と内部で上記の2倍程度被ばくしていると思われます。 上述したように猫の体重はひとの数十分の1ですから体重あたりでいえば、上記にそれを掛け合わせることになります。一方で、体重あたりでは増加しますが、身体が小さい分、放射線が当たる体積が小さく、食べる量が少ないという側面もあります。 では、まるちゃんはその後どうなったかですが、もらわれてきた当初、非常におじけづいていて、それこそ相当のストレスを受けた様子でした。 ほとんど人になつかず、ひとりじっと寝ていました。食欲もそれほど旺盛ではありませんでした。 そして、頻繁に激しいクシャミをし、鼻血を出していました。 下はもらってきて1年半後のまるちゃん。 それから2年ちょっと、現在、クシャミをほとんどしなくなり、鼻血もほとんど出さなくなりました。 ただ、もらってきたときはすでに虚勢手術されており生殖機能への影響は分かりません。ダイオキシン類、PCB類、重金属類でもそうですが、暴露量、DOSE(摂取量)が少なくて問題となるのは、まず生殖毒性、胎児毒性、それに免疫毒性であり、比較的高い暴露量で問題となる催奇形性も、そのもとは遺伝毒性、胎児毒性です。 最近のまるちゃん 撮影:青山貞一 最近のまるちゃん 撮影:青山貞一 青山家では、過去ネコを20歳以上飼ってきました。ドッグイヤーは上記に5を掛けるので、おおむね人でいえば、100歳となります。 私自身、高齢なのでまるちゃんの寿命を見届けられるかどうかわかりませんが、まるちゃんは3.11を現場でみとどけた重要な生き証人(ねこ)のひとりだと思って飼いつづけています。 今考えれば、被災地のペットの救出活動をしている坂本博之弁護士の奥様らが、里親になられた家族に定期的に猫や犬の定性的であれ症状を添付ファイルなどで送ってもらい、エクセルなどに整理するのがよいと思います。 下は今日(2013-8-1)のまるちゃんです。 今日のまるちゃん 撮影:青山貞一 BB 今日のまるちゃん 撮影:池田こみち BB |