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◆識者「基準の厳格化を」 沖縄市ドラム缶 国内法の限界指摘 琉球新報 2013年9月3日朝刊29面 沖縄市のサッカー場で見つかったドラム缶について国や市が調査した結果をドイツの環境基準と比べた場合、ドラム缶のほとんどの検体でダイオキシン類が基準値を超えることが明らかになった。 環境調査の専門家や識者らは、日本は海外と比べて環境基準が甘く、土壌汚染対策が遅れているとして「厳しい基準を採用すべきだ」と指摘し、今回の調査結果を再評価するとともに、国の環境基準の見直しを求めた。 調査を環境総合研究所(東京都目黒区)に依頼した沖縄生物多様性市民ネットワークの河村雅美ディレクターは、土地再開発のためにできた日本の土壌汚染対策法が汚染を見逃してしまう可能性があると強調し「米軍基地汚染への適用には無理がある」と国内法の限界を指摘した。 枯れ葉剤問題に詳しいフォトジャーナリストの中村梧郎氏は「基準値はやむを得ず設定した『我慢値』みたいなものだ。基準値以下なら安全だと考えてはいけない。国はなるべく低く基準値を設定し安全を確保するべきだ」と求めた。 東門美津子沖縄市長は、国が今後、サッカー場を前面調査することを踏まえ、「国の調査でドラム缶などが新たに出れば、市も独自に調査し、分析の精度を高める・調査結果を踏まえ汚染土壌除去や原状回復を国に求めたい」と話した。 ◆汚染対策、米に20年遅れ 識者談話 桜井国俊氏 沖縄大学教授(環境学) 琉球新報9/3朝刊 29面 日米の地位協定の中で、基地内に関して日本の法律は適用されないと決められているが、それとは別に、日米合同委員会の下にある環境分科委員会で策定された日本環境管理基準(JEGS)がある。これが在日米軍の施設・区域の環境管理の規範となる。 JEGSは、日米の環境基準の中でもより厳しい方の基準を採択する方針だが、それは建前で実際にはそうなっていない。JEGSにのっとれば、今回のダイオキシンによる土壌汚染に関しても、日本より厳しい米側の基準を採択するのが本来のあり方だ。 日本はダイオキシン濃度の環境基準がドイツに比べて緩いが、その基準値を決めるのは国民の主権の範囲だ。ドイツと日本の違いは、国民の視点から見て基準値の必要性や妥当性を批判する力があるかないかという批判力の違いではないか。 一方、米国は土壌汚染の浄化という点で先進国といえる。石油系の土壌汚染が多い米国は問題解決の必要性から全石油炭化水素(TPH)という指標を早い段階で作ったという歴史的背景がある。 日本は土壌汚染への問題認識が強まるのが遅く、バブル崩壊後に被ノンノ工場が海外に出て行き、工場の敷地を売りに出す段階で土壌汚染が判明した経緯がある。日本の土壌汚染対策は米国に比べて20年遅れている。土壌汚染に対して環境基準が必要だという議論もなかったため、今もTPHの環境基準が日本にはないと考えられる。 |