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今まで政府、自治体さらにNHKなどの報道機関が福島第一原発からある地域における放射線量を伝えるとき、水戸で1時間当たり何μシーベルト、東京で1時間当たり何μシーベルトとしてきました。 また、国の独立行政法人が行ってきたSPEEDIによる各地の放射線の推定値についても、浪江で25日間で何mシーベルトとか、いわきで何mシーベルトとされてきました。 さらに、原発作業員が年間受ける積算放射線量についても、年間積算で何mシーベルトというように報道されてきました。 しかし、それらの放射線の測定値あるいは積算値は、さらに推定値は、一体、地上からどの高さで計測したものなのか、まったく示されていませんでした。 先に私(青山貞一)は、 ◆青山貞一:子供の外部被曝限度(年積算20mSv)問題への所見 で次のように書きました。 すなわち「大気中の放射線量のモニタリングは、通常、地表1〜1.5mの高さで行っています。同じ場所でも地上1〜1.5mと地表面では約10倍地表面の方が高く計測されます。以下では、地表1〜1.5mの高さにおける測定を前提としています」と。 これは、私たちがこの4月16日と17日、いわき市の被災現場を視察に行ったとき、いわき市の広田法律事務所で、同行された弁護士が地表1〜1.5mで放射線検知器で測定した場合と地表面(GL)で測定した場合で約10倍違うとおっしゃっていたので、実際にいわき市内で地表約1mと地表面それぞれで放射線を計測したところ、実際に約10倍違っていたことをもとにしています。 一応、応用物理を専門としている者として、たまたま、いわき市で計測しただけで約10倍というのも問題ありなので、全国各地で原発問題に取り組んでいるグループのメーリングリストで、各地で実際に計って報告してくださいと要請していました。 そんな中、以下の記事を発見しました!
何と、福島第一原発のすぐ北にある浪江町でジャーナリストが「空間線量(地表から160cm、記者の肩の高さで測定)はおよそ毎時20マイクロシーベルト、地表ではなんと毎時240マイクロシーベルに」という記事を書いていました! 何と、ここでも高さに若干の違いがあるものの、地表面で計測した場合の方が、地表1.6mで計測した場合より12倍高いとあります。 少なくとも私たちがいわき市で計測した約10倍に類する値です! そこで環境総合研究所の同僚の鷹取敦さん(調査部長)に、ごく簡単に数値モデルを組んでシミュレーションをしてもらいました。エクセルで簡単に計算できるものですが、ここでは、電磁波や放射線が距離の二乗に反比例するという単純な理論に基づいたものであり、一切の遮蔽や吸収は考慮していません。
以下の図は、地面と地上30cm、1mなどに放射線検知器を置いて測定した場合のイメージ図です。 出典:環境総合研究所(東京都目黒区) 上記の仮説と単純な数値モデルがそれなりに合理性をもつとすると、たとえば、この間、福島県だけでなく、原発が立地されている各地で大問題となった日本政府による「子供の外部被曝を年積算の限度を20mSv」問題は、どうなるのでしょうか? 仮に福島県浪江町で毎時20マイクロシーベルトと行った場合、これは地表1.6mの高さで測定したものですが、もし、地表で測定すると毎時240マイクロシーベルと12倍高いことになります。 仮に日本政府が「子供の外部被曝を年積算の限度を20mSv」とした場合、1mの高さでの測定値をベースにしていたとすると、小中学生は背の高さも大人より低く、また校庭などの地表面で遊び回ることが多く、さらに泥遊びも好きなので、実際に受ける放射線量は、10倍、すなわち200mSvとなります。 たまたま上記のメーリングリストに福島健在中の方がおり、「 国、福島県は、通常測る時は地上1m中学の校庭では、これと同じ地上1mで判断、小学校、幼稚園等では、身長が低いことを考慮して、地上50pで判断としています。」と情報提供してくれました。 となると、やはり中学生の場合は、放射線検知器で計測した値の約10倍、小学生、幼稚園生の場合には、50cmとして、6〜7倍の放射線を受けることになり、とんでもないことになりかねません。 ちなみに10倍は年間200mSv、6〜7倍で120〜140mSvとなり、まるで原発労働者の年間限度値のような値となります。 上記の仮説と検討について、メーリングリストで、ある大学の教員から次のような意見が出されました。
◆読者の皆様へのお願い 読者ご自身が計測、実験した結果(データ)や上の仮説に関するご意見を募集します。 実験にご協力いただける場合は、 1)測定年月日、 2)測定場所、たとえば福島県いわき市中央など、 3)天気(晴れ、曇り、雨など)、 4)測定高(cm)別の放射線量、 5)地表面の性状(土壌、アスファルト、板、校庭など)、 6)検量器の型番(わかれば) 7)測定者のご氏名、連絡先 などをご記入いただけると幸いです。 寄せられた意見は本Web(独立系メディア E−wave)上で公開しますが、ご氏名はご本人の承諾なしには公表いたしません。 aoyama@tcu.ac.jp 以下は、あくまで参考としてください。 ところで、冒頭に書いたように、政府、自治体さらにNHKなどの報道機関が福島第一原発からある地域における放射線量を伝えるとき、水戸で1時間当たり何μシーベルト、東京で1時間当たり何μシーベルトとしてきました。 これらの測定は地上何mで行っているのかが気になります。以下は、地域別の測定高さデータです。実際に現地で確認したわけではありませんが、地上1〜1.5mは北茨城・高萩・太子だけであり、宇都宮や前橋、新宿、横浜などは地上20m前後にあることになります。 県 区・市町村 MP地上からの高さ ========================================== 茨城県 北茨城・高萩・大子 約1.3m(可搬型) その他 約2.7m 栃木県 宇都宮 20m その他 ビル屋上 群馬県 前橋 20m 埼玉県 さいたま 18m 千葉県 市原 約6〜7m 東京都 新宿 18m 神奈川 横浜 23m そこで、上記のように計測地点が高い場合について試算するため、100m四方を対象として、測定高ごとの相対放射線量を計算してみました。格子の間隔は1mのままです。 すると以下のようになりました。 地上高さ 相対線量 ================ 5cm 428 10cm 128 50cm 31 1.5m 23 10.0m 11 20.0m 7 30.0m 5 ただし、上記の計算では空間における放射線の吸収、遮蔽は考慮していません。地表と地上1mの場合に比べて距離があるので、この場合には放射性物質の移流、拡散なども考慮しなければなりませんので、あくまで放射線量が距離の二乗に反比例するという法則だけに基づいたものです。 上記については、まだ実験で検証しておらず、おそらく大気の組成や吸収、遮蔽をもたらす要因により、これだけ著しい違いがあるとは思えません。 しかし、最低限、地上高が高くなると地表面に残存する放射性物質からの放射線の累積的な影響を受けることは間違いありません。 上記の仮説に基づけば、政府、自治体、NHKなどが連日出している大気系の放射線量は、地表、地上で生活する人々が受ける放射線量よりも遙かに小さい(少ない)値となっていることになります。 |