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1.はじめに 筆者(青山貞一、池田こみち)が非常勤講義を担当していた福島大学行政社会学部があった金谷川キャンパスを対象として国設福島市モニタリング・ポスト、福島大学による時系列測定および東京都市大学と環境総合研究所の現地測定データを用い、2011年3月15日〜10月末におけるγ線外部被ばくの積算値を推計した。 2.使用した測定データ 本論では、以下に示すように3つのデータを用いた。 @福島市に設置している国設モニタリング・ポストの時間データ これは主として、事故直後の2011年3月15日〜3月17日の時間値データとして用いた。国設福島モニタリング・ポイントでは、3月15日の午後5時に20.3μSv/h、3月16日の午前9時に、19.8μSv/hを記録している。 A福島大学金谷川キャンパスの野球グランドで測定された時系列データ これは福島大学により2011年3月24日〜10月13日の期間、22回に分けて測定されている。福島大学は、福島市内の福島大学関連施設、45箇所(地上1m)で放射線を測定しているが、福島大学金谷川キャンパスの野球グランドが最も放射線量が高い地点であった。 ◆福島大学関連空間放射線量測定結果 金谷川キャンパス内の空間放射線量率(μSv/h) (福島市金谷川1番地) B東京都市大学青山研究室と環境総合研究所による福島県内放射線量の時間測定データ この測定は2011年6月18日に福島大学金谷川キャンパスで行われ地上1mと地表面の両方を測定している。 ◆東京都市大青山研究室・環境総合研究所:福島放射線測定現地調査 上記データ(詳細は別途)を使用し外部被ばく量の積算を試みた。ただし、測定していない日は、内挿法(一部外挿)により近似値を求めている。測定高は地上1m、自然線量は除外してある。 3.外部被ばく積算値(推計値) すべて福島大学金谷川キャンパス屋外にいたと仮定した場合の積算値は、事故後最初の一か月(3/15〜4/15)で約5ミリシーベルトとなった。ただし、測定高は地上1m。 さらに2011年10月15日までの積算値は12〜13ミリシーベルト、さらに来年の3月14日までの予測値は15〜16ミリシーベルトと推定された。 なお、筆者らが福島大学金谷川キャンパスで2011年6月に行った地上1mと地表面での実測では、地表面が約40%、地上1mより高かったことから、地表面での積算値は上記の値よりかなり高くなるものと推定される。 上記はいずれも試算であり、より詳細なデータが入手できた時点で再推計する予定である。 以下はヨウ素131、セシウム134、137を想定した「福島大学金谷川キャンパスにおける放射線外部被ばく積算量の推計」のグラフである。 図1 福島大学金谷川キャンパスにおける放射線外部被ばく積算量の推計 さらに、50年後までの年間放射線量を試算すると以下のようになった。 1年目:15.6mSv/年 2年目: 7.5mSv/年 3年目: 6.1mSv/年 4年目: 5.1mSv/年 5年目: 4.4mSv/年 10年目: 2.8mSv/年 20年目: 1.9mSv/年 30年目: 1.5mSv/年 40年目: 1.2mSv/年 50年目: 1.0mSv/年 上記はバックグラウンド(0.05μSv/h)を含めない場合である。年間1mSvの目安はバックグラウンドを含めないことになっていることから。 4.評価について 福島県内各所の積算外部被曝量は、いずれも3/15から1か月の間でその後半年に受ける積算値の約半分の被曝を受けていることがおおむねわかった。 したがって、3月15日から4月上旬にどう、どこに避難したかが積算被曝量推計の観点できわめて重要なものとなる。 さらに初期段階での避難が非常に重要なことに加え、その後半年の積算量も大きいことから、その後、福島市に居住し続けることも大きな課題であることが分かった。 |