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1.はじめに 本論では、東京都新宿区を対象として国設東京都新宿区モニタリング・ポスト(文科省設置、東京都管理)のデータを用い、2011年3月15日〜10月末におけるγ線外部被ばくの積算値を推計した。 2.使用した測定データ 本論では、以下のデータを用いた。 東京都健康安全研究センター測定の時間データ 東京(新宿)のモニタリング・ポイントでは、東京で初期降雨があった3月21日の午後8時に0.07μSv/h、3月22日の0時00分に0.142μSv/h、23時に、0.154μSv/h、3月24日の午前9時に、0.138μSv/hを記録していた。 上記センターは、東京都新宿区で2011年3月15日以降現在まで空間放射線量を測定している。以下はそのデータである。 http://monitoring.tokyo-eiken.go.jp/mon_air_week_list.html 上記データ(詳細は別途)を使用し外部被ばく量の積算を試みた。測定高は地上18m+1.8m、測定は自然線量は含めている。ここでは、福島第一原発事故以前の自然放射線量を0.0345μSv/h(事故直前の実測値平均)と前提している。 3.外部被ばく積算値(推計値) 以下はヨウ素131、セシウム134、137を想定した「東京都新宿区における放射線外部被ばく積算量の推計」の2011年3月15日から2012年3月15日までの放射線量および積算線量グラフである。 図1 東京都新宿区における放射線外部被ばく積算量の推計 さらに、70年後までの年間積算線量を試算すると以下のようになった。 年間積算線量 年間積算線量 (BG含む) (BG除く) 1年目:0.53mSv/年 0.23mSv/年 2年目:0.45mSv/年 0.14mSv/年 3年目:0.43mSv/年 0.12mSv/年 4年目:0.41mSv/年 0.10mSv/年 5年目:0.40mSv/年 0.09mSv/年 10年目:0.37mSv/年 0.07mSv/年 20年目:0.35mSv/年 0.05mSv/年 30年目:0.34mSv/年 0.04mSv/年 40年目:0.33mSv/年 0.03mSv/年 50年目:0.33mSv/年 0.03mSv/年 60年目:0.32mSv/年 0.02mSv/年 70年目:0.32mSv/年 0.02mSv/年 4.評価について 東京(新宿)における屋外の積算外部被曝量は、3/15から1年後には自然線量を含めた場合、約0.53mSv、含めない場合、0.23mSvとなることがわかった。 ただし、上記の測定値は、地上約20mの高さで測定した値であり、基準となる地上1m高の場合には、実測値が上記より高くなる可能性がある。 ◆ICRP(国際放射線防護委員会)による線量限度1mSvとの関係 個人がさまざまな線源から受ける実効線量を総量で制限するための基準として設定されている。数値的な根拠は、確定的影響を防止し、確率的影響を合理的に達成できる限り制限するという考え方に沿って設定されている。特定の組織(水晶体、皮膚)については、確定的影響の防止の観点から、それぞれのしきい値を基準にして線量限度が決められている。 確率的影響(がん、遺伝的疾患の誘発)に関しては受け容れられない(Unacceptable)リスクレベルの下限値として被ばく年数によるリスクの蓄積を考慮し、公衆の(実効)線量限度を1mSv/年としている。ただし、その実効線量限度には、自然放射線による年間被ばく線量を除外し設定されている。 東京のように福島県内などに比べ外部放射線量が相対的に低い地域では、福島第一原発事故に起因する外部被曝線量より、各種の自然放射線による線量の方が事故当初以外の時期では大きくなる可能性が高い。 実際、本積算推計では、3/15から1年後には自然線量を含めた場合、約0.53mSv、含めない場合、0.23mSvとなっている。 ただし、東京新宿での測定は地上18m+1.8m高で行われていること、またあくまで外部被曝のみであり、いわゆる内部被ばくを考慮していないことに留意しなければならない。 |