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リトアニアで日本政府と
日立が原発推進する背景
青山貞一
掲載月日:2012年10月15日
 独立系メディア E−wave Tokyo



 原発立地を巡る住民投票で投票者の62%が反対を表明したバルト三国のリトアニアだが、その後、リトアニア議会選で得票率第一党となった野党、労働党が原発計画を中止しない考えを示したという。

 その背景には、昨年までベトナムとともにリトアニアに売り込みを図ってきた日本政府と日立製作所の思惑がある。

 日本政府や日立の関係者は新政府に対し二〇二一年ごろ稼働予定の原発計画を予定通り進めるよう、ロビー活動などを強化する構えとされている。

 日立製作所は民間企業として推進するのだろうが、日本政府は日本国内で脱原発やゼロ原発の政策を表明したばかり、他国に売り込むことは別という考えか?
 
◆リトアニア 原発計画当面は推進 第1党の野党党首言明
 2012年10月17日 朝刊

 【モスクワ=共同】十四日のリトアニア議会選で得票率第一党となった野党、労働党のウスパスキフ党首は十六日付のロシア紙イズベスチヤとのインタビューで、議会選と同時に行われた国民投票で反対が約63%に達したビサギナス原発の建設計画を現時点では中止しない考えを示した。

 労働党は次期組閣の中心となる見通し。日立製作所が事実上受注した同原発計画は当面、推進される可能性が高まった。

 原発計画についてはグリバウスカイテ大統領も十五日、推進するよう促している。日本政府や日立の関係者は新政府に対し二〇二一年ごろ稼働予定の原発計画を予定通り進めるよう、ロビー活動などを強化する構えだ。

 党首は「国民投票は国民の助言であって、命令ではない」と指摘。原発建設についての具体的情報がもっと明らかになれば「新原発が国にとって経済的にどれほどプラスになるかが分かるはずだ」と述べた。その上で、全ての情報を公開した後に、あらためて国民投票を実施し、建設の是非を最終的に決めるべきだとの考えを示した。労働党は過去に与党だった際、新原発計画を推進してきた経緯がある。

 リトアニアは〇九年に旧ソ連型原発を閉鎖し、隣国ロシアへのエネルギー依存が急増。クビリウス首相の与党側はビサギナス原発の建設計画を進めてきたが議会選で低迷、政権が交代する見込み。

リトアニア、原発計画を当面継続 第1党の野党党首が方針
2012/10/16 23:32 日経新聞

 14日のリトアニア議会選で第1党となった野党・労働党のウスパスキフ党首は、日立製作所が事実上受注したビサギナス原発の建設計画を当面は継続する方針を示した。コストなどを精査し、最終的に国民投票で原発計画の是非を改めて問う可能性に言及した。

 ロシア紙イズベスチヤで明らかにした。労働党は議会選での得票率が約20%となり、野党連合で形成する次期政権の中心となる見通し。

 14日に実施された国民投票では原発建設への反対が62%に達したが、同党首は「国民投票は国民の助言であって、命令ではない」と指摘。建設コストや原発によるエネルギー料金などを調べ、国民投票を再度実施すべきだとの考えを示した。国民の利益とならないと明らかになれば計画を中止するとも表明した。(モスクワ=金子夏樹)

 これは菅直人首相(当時)と前原誠司大臣(当時)がトップセールスとして原発の売り込みを図ってきたベトナムについても言える。
 
 実際、2011年1月時点での菅首相(当時)関連のブログを見ると、下にあるように、トップ・セールス成就!「日本を挙げて」の舞台裏など、トップセールスでベトナムに原発を売り込んだことで大はしゃぎしている。

 昨年10月31日午前、ベトナムの首都ハノイで開催された菅総理とズン・ベトナム首相との首脳会談で決定された瞬間である。「よし!」出席者一同、喜びの表情を浮かべました。このプロジェクトは総額約1兆円規模。日本にとって、受注は大きな成果です。

 中略 

 菅内閣は、昨年6月18日に「新成長戦略 〜元気な日本復活のシナリオ」を決定しました。これは一昨年の秋から菅「国家戦略担当大臣」が直接陣頭指揮にあたってきた「成長戦略」を集大成したものです。その「新戦略」の大きな柱の一つが「パッケージ型インフラ海外展開」で、そのまた中心の一つが「日本の原子力発電の輸出」。関係大臣や民間の関係者がしばしば集まって、その方策について議論を重ねてきました。


  ※出典:トップ・セールス成就!「日本を挙げて」の舞台裏

 健忘症の日本国民は忘れているかも知れないが、ほんの2年弱以前のことである。

 リトアニアでは、国民の過半数が原発立地に反対しているのに、日本政府と日立が連携し、脱原発にならないよう、必死にリトアニア政府にロビーをかけている背景には、おそらく菅政権時代の上記の経緯があるからである。

 何とも、笑止千万ではないか。

 売り込む国や企業の原発事故時の責任をどうとるのか、とれるのか、しっかり見届ける必要がある。

 私は一昨年、バルト三国に現地調査で行っているが、バルト三国はナチスドイツその後スターリン(ロシア)に蹂躙された歴史をもち、現在はロシアから天然ガスなどを勝っている。

 http://eritokyo.jp/independent/today-column-balt1.htm


リトアニアはポーランド同様カソリック信者が圧倒的に
多い国。写真は首都にある大聖堂
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 16 Feb. 2010

 いつなんどきエネルギー供給を遮断されるか分からないので、原発をという理由は分からないわけではない。

 しかし、それを言い出したら、日本の自民党や民主党のタカ派議員がいう核武装論と同じになってしまう。

 私見では、リトアニアは首都のヴィリニウスやカウナス以外は、都市はなく、人口規模も325万人であるから、スコットランドやデンマークのように将来的には風力はじめ各種の再生可能エネルギーで十分電力の供給が可能な国だと思う。

 スコットランドの人口は525万人、デンマークは551万人である。以下にバルト三国、スコットランド、デンマークの人口と面積を示す。これらの国々は、面積規模、人口、緯度などで類似している。参考のため北海道も含めている。

 ちなみに、私は以下に示した国、地域にこの2年の間に、すべてでかけているが、いずれもさまざまな意味で共通項があり、再生可能エネルギーの可能性でも共通項があると思う。

           人口(万人)   面積(平方km)
 リトアニア    325        65200    バルト三国
 ラトビア     225        64589    バルト三国
 エストニア    134        45226    バルト三国
 スコットランド  525        78772    
 デンマーク   551        43094
 北海道     548         83457


欧州の国々

 いずれにしても、日本の成長戦略のために他国に原発を売り込むのは、死の商人に近いものを感ずるのは私だけだろうか?

 そういえば、今の民主党は、武器輸出三原則まで緩めている。トンデモ政権、政党である。