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<総選挙>
旧態依然大メディアの定番
情報操作で世論誘導
(2)世論調査

青山貞一
掲載月日:2012年12月7日
 独立系メディア E−wave Tokyo



 周知のように2012年12月5日、新聞、通信社、テレビなどマスコミは、総選挙に関連した情勢調査、世論調査を公表した。

 下は、朝日新聞の記事の主要部分である。

◆自民、単独過半数の勢い 衆院選序盤、朝日新聞情勢調査
朝日新聞 記事2012年12月5日23時58分

 前半略

  自民は、前回2009年の衆院選で民主に大敗した小選挙区で優勢な戦いぶりが目立つ。09年に惨敗した首都圏などで一転して優位に立ち、小選挙区全体で前回の64議席から200議席を超す勢い。比例区では不振だった前回の55議席は上回りそうだが、60議席台に届くかどうか。

 公明は候補を立てた9小選挙区で全勝の可能性があり、比例区でも前回並みかやや上回る20議席台前半をうかがう。この結果、自公で計300議席に達する可能性がある。

 民主は、前回221議席を得た小選挙区で軒並み苦戦し、「民主王国」と言われる北海道や愛知県でも厳しい戦いを強いられている。閣僚でも、議席確保の見通しが立っている人は多くない。

 前回87議席を獲得した比例区も30議席台に激減。合計で公示前230議席から80議席前後に大きく減る可能性がある。

 維新は、大阪府内で躍進が目立つ。優勢な選挙区が五つあるほか、ややリードや激しく競り合う小選挙区も多い。全国では小選挙区で10議席台、比例区で30議席台をうかがっている。

 みんなの党は、比例区で前回の3議席から大きく伸ばし、13議席前後に達しそう。小選挙区と合わせると公示前8議席から倍増の勢いだ。

 一方、未来は公示前の61議席から大きく減りそうだ。小選挙区は数議席にとどまり、比例区と合算しても10議席台の見通し。

 共産は比例区で現有9議席に届くかどうか。社民と新党大地は小選挙区と比例区で議席を得る可能性がある。

 後半略

 もとより、この種の世論調査は、よほど正確な世論調査手法、統計手法にもとづいて行っても、情報操作による世論操作となることから慎重でなければならない。

 いわゆるアナウンス効果、勝ち馬に乗ったり、逆に判官贔屓(びいき)になったりすることで、選挙結果に少なからず影響を及ぼすからである。

 上記の朝日新聞の記事には、冒頭に以下が書かれている。

 「16日投開票の衆院選について、朝日新聞社は4、5日、全300小選挙区の有権者を対象に電話調査を実施、全国の取材網の情報も加えて公示直後の序盤情勢を探った。それによると、現時点で(1)自民は小選挙区が好調で比例区と合わせ単独で過半数を確保する勢い(2)民主は惨敗で100議席を割り込む公算が大きい(3)第三極の日本維新の会は比例区で民主と肩を並べ、小選挙区と合わせて50議席前後に(4)日本未来の党は比例区で8議席前後を確保しそうだが小選挙区では苦戦、などの情勢になっている。
 調査時点で投票態度を明らかにしていない人が小選挙区でほぼ半数、比例区でも4割いる。公示直後は各候補が有権者に十分浸透しているとは限らず、今後、情勢が大きく変わる可能性もある。」


 上記にはどこにも調査手法、母集団のサンプル数などが一切無い。

 標本(サンプル)抽出にはじまり、世論調査には統計上有意な結果を出すための前提がある。しかし、どの記事を見てもそれらがまともに書いてあるところがない。
 
 さらに、サンプリング問題以外に、実際どのようにしてサンプルに意向を問うのか、その方法、手法が書いていない。また意向を問う際の設問もないのである。

 この種の世論調査は、郵送据え置き式あるいは個人面談式以外は、各新聞社、通信社、テレビ局ともに電話、それも固定電話を対象に、個人あるいは世帯を対象に行っている。

 ところで、下の図を見れば明らかなように、現在、携帯電話(スマホ、PHSを含む)の世帯普及率は95%に及んでいる。


出典:総務省情報通信政策局データをもとに作成されている

 世論調査は、まず間違いなく、平日に各世帯の自宅にある固定電話を使って行われるが、上の図にあるように現在、携帯系の電話が圧倒的に普及しており、とりわけ若者世代が固定電話を日常的に業務以外で使用する可能性はほとんど無い。また正規労働者やもとより非正規労働者、アルバイト労働者が自宅の固定電話に出る可能性もほとんどないだろう。

 となると、仮に電話番号簿を対象にランダムサンプリングし2000の標本を集め、外部委託した電話サービスのスタッフが一斉に平日に固定電話に電話した場合、日中に世帯にいるのは、定年後の高齢者か自営業者程度となる。

 18歳から60歳の働き世代が、固定電話で世論調査に対応することはほとんどない。仮に2000サンプルのうち70%が回答したと言う場合でも、その多くは世帯における高齢者や自営業者であろう。明確なのは、40代以下の若者世代は全く世論調査の対象となっていないことである。

 したがって、同じ電話調査の場合でも、もし携帯電話(スマホ、PHSを含む)によって世論調査したら、まったく異なる結果になることは明らかである。ただし、携帯電話は世帯に一台ないし数台ある固定電話と違い、電話番号簿に電話番号はない。当然、プライバシー保護からであり、万一、あちこちで携帯番号を入手しても、いきなり世論調査で携帯電話がかかることはないだろう。

 他方、各種世論調査によれば、国民の50%−60%が政党の投票先が未定であるとされている。このことを新聞社やテレビ局がどうやって知ったのか? 今は、昔のように調査員が一軒一軒回って調べることはないから、おそらく固定電話調査時に得たデータであろう。

 となると、平日の日中に調査した結果でも、国民の50%−60%は投票先政党を決めていないということである。

 となると、幸いにも固定電話に出られる自営業者、専業主婦、自営業者、年金生活者でさえ、半数が投票先を決めかねているということになる。

 以上から分かることは、新聞社、通信社、テレビ局の世論調査は、その対象が有権者の一部でしかないことである。

 平日に日中に固定電話に出られる世帯、個人
   自営業者、専業主婦、自営業者、年金生活者などの一部

 平日の日中に固定電話に出られない世帯、個人
   男女を問わず20歳〜60歳の正規労働者、非正規労働者、アルバイト
   労働者、学生などのほとんど


 これは大メディアによる情報操作による世論誘導以外の何物でもない!

 想定される調査対象の圧倒的多くは、平日、自宅にいて新聞、テレビを見ている高齢者である。となると、私がこのシリーズの本シリーズの論考その1で述べた<鵜呑度>が70%を超えるひとびとが圧倒的多いはずである。

 本論の仮設を実証するデータに類するものとして、以下を掲げる。

 図1は2005年8月5日〜8日の時点での年代別の自民党支持者と無党派の割合である。一目して分かるように、20代、30代の自民党支持者は著しく低く、50代、60代が顕著に高いことが分かる。とりわけ定年世代に自民党支持者が多いことも分かる。一方、無党派はその真逆となっており、20代、30代に圧倒的に多い。

図1 郵政解散・総選挙前の年代別自民党支持率(前)
    2005年8月5日〜8日


出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率
   より青山貞一、池田こみちが作成

 上記の年代別支持率は、郵政選挙直後で図2のように年代別の自民党支持率が全体的に増加するものの、やはり高齢者の支持率は高いことが分かる。

図2 郵政解散・総選挙後の年代別自民党支持率(後)
2005年9月14日〜19日


出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率
   より青山貞一、池田こみちが作成
 
 その後、ライブドアショック(事件)が起き、図2に比べ大幅に支持率は低下するものの、やはり高齢者、とくに60代の自民党支持率は顕著に高いことが分かった。

図3 ライブドアショック後の年代別自民党支持率
    2005年8月5日〜8日


出典:前田幸男:最近の時事世論調査における政党支持率と内閣支持率
   より青山貞一、池田こみちが作成

 となると日夜、間違った政治報道で国民に情報操作に世論誘導している新聞、通信社、テレビ局の記事、ニュースを鵜のみにしているひとびとが世論調査の対象となっていると見て大きく間違いはない。

 そうなると、以下のような信じられない情勢調査結果がでるのであろう!これは朝日新聞に限ったことではなく、他の新聞、通信社、テレビ局についても妥当する。

◆自民、単独過半数の勢い 衆院選序盤、朝日新聞情勢調査
朝日新聞 記事2012年12月5日23時58分

 前半略

  自民は、前回2009年の衆院選で民主に大敗した小選挙区で優勢な戦いぶりが目立つ。09年に惨敗した首都圏などで一転して優位に立ち、小選挙区全体で前回の64議席から200議席を超す勢い。比例区では不振だった前回の55議席は上回りそうだが、60議席台に届くかどうか。

 中略

 一方、未来は公示前の61議席から大きく減りそうだ。小選挙区は数議席にとどまり、比例区と合算しても10議席台の見通し。

 後半略

つづく