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入山峠、スキーバス大事故
の原因を探る!

青山貞一

掲載月日:2016年1月15日
 独立系メディア E−wave Tokyo


 2015年1月15日未明、長野県軽井沢町軽井沢の国道18号碓氷バイパスで、スキー客を乗せたツアーバス(乗客39人、乗員2人)が道路脇の崖下に転落し、14人が死亡するという大事故が起きた。

 私達は北軽井沢に保養所(別荘)があり、過去何度となく事故現場やその近くを車で走行していることもあり、本件についてはひとかたならぬ関心がある。


◆事故現場

 下のグーグルマップの衛星写真は、事故が起きた場所を上空から撮影したものである。ただし、この写真は、事故後に撮影されたものではなく、グーグル社が定期的に更新している写真である。写真では右下が群馬県の横川側、左上が軽井沢側である。


出典:グーグルマップ(衛星写真)


出典:グーグルマップ(衛星写真)

 さらに、以下の写真は上の写真の事故現場を拡大したものである。スキーバスは写真中右下から国道18号線を軽井沢側に進み、途中、センターライン、対向車線を突っ切り、ガードレールを壊して樹林の中に落下して止まっている。なお、下の写真でも右下が群馬県の横川側、左上が軽井沢側であ


出典:グーグルマップ(衛星写真)拡大写真
 
 下は朝日新聞の空撮の動画から静止画化した事故現場の写真である。上の図とは方位が少し異なっている。


出典:朝日新聞の空撮の動画から静止画にした事故現場

 下の地図はヤフーマップの地形図で現場を示したものであり、レのマークが事故現場である。


出典:ヤフーマップ地形図を活用しプロット

 下のグラフは、バスの進行方向に沿って標高をプロットしたものである。グラフ中、横軸の0mが横川側のS(スタート)の位置を示し、2kmが軽井沢側のG(ゴール)を示している。ちなみに、事故現場は標高約960.7mであることが分かった。


出典:ヤフーマップ地形図を活用し標高を自動計算

 群馬南部と長野県境を結ぶ道路は、関越自動車道の長野道以外に、国道18号線、国道18号線バイパスの3本がある。事故が起きたのは3つ目の国道18号線バイパスである。一般道路の国道18号線はいずれも1000m以上の峠まで登るため急カーブが続く部分があるが、今回事故が起きた箇所はそのつづら折りのカーブを終えた後の緩やかなカーブの箇所である。

 したがって、運転手が全長12mの大型バスの運転ははじめてであるという報道があるが、9mであれ12mであれ、事故が起きた場所は急カーブではなく、全長の長さが事故に関連したことはないと思える。


◆事故原因は?

 事故原因としては、国道18号バイパスの事故現場手前にある左側のガードレールに、バスが接触したとみられる痕跡があったことから、県警はバスが接触後に急ハンドルを切ってバランスを崩し事故を起こしたとみている。

 一方、生存者である複数の学生は、事故現場のかなり手前から運転がかなり荒くなっていたと証言している。これは、左側ガードレールに接触する前からなのか、それとも接触後からなのかは不明であるが、ひょっとすると左側ガードレールに接触する前からの可能性がある。

 さらに現場検証では、大型バスのタイヤの跡が片方の側しかなく、センターラインを超え対向車線側に突進した際、バスは大きく傾き最後は片側だけで前進した可能性もある。下の毎日新聞が撮影した写真はその片方だけのタイヤの跡を撮影したものである。このタイヤの後を見ると、非常に狭い。すなわち大型バスが傾いてガードレール側に突進したことを物語っているものと思われる。


出典:毎日新聞


 県警の事故原因は、バスが左側ガードレールに接触した後に急ハンドルを切りバランスを崩し事故を起こしたとみているが、それが事実だとしても、なぜ、かなり幅員がある国道18号線で左側ガードレールに接触したのか、その原因は不明である。

 通常考えられるのは、居眠り運転や突然、道路に野生生物が横切ることで運転手が動転し、ハンドルを切るなどがあり得る。

 しかしながら、それ以外に、運転手が以下に示す、脳梗塞、脳溢血、脳卒中、心臓発作、喘息大発作などを起こしたために、ハンドル操作が十分出来ず、左側のガードレールに衝突し、その後、ブレーキを踏めないまま対向車線を横切り、ガードレールに衝突したと考えることもできる。


脳梗塞
 脳梗塞は壊死した脳の部分によって失われた脳機能が違ってくる。それにより、症例によって様々な症状が起こりうる。症状によって、脳のどこに病巣ができているのかが分かる。脳梗塞のほとんどは、突然の発作にはじまり、病状が急速に進んで数分から数時間で脳の組織が壊死してしまう。

◆脳溢血
 脳卒中のうち脳出血(脳溢血)は、前ぶれや兆候が見られず突然に発症する。そのおもな原因は高血圧であり、血圧の高い状態が長く続いていると、脳の中にある細い血管壁が少しずつもろくなっていて、小さなコブができていく。その状態でさらに高い血圧がかかるとコブの一部分が破裂してしまい、脳の中で出血が起こる。この状態が脳出血であり、その血液がかたまりになって血腫をつくるとまわりにある脳細胞もダメージを受ける。その周囲でも脳細胞が圧迫されてしまうため、脳のはたらきにもさまざまな障害が起こる。出血を起こした脳の部位にもよるが、発症時には大部分で突然の頭痛や吐き気が起こり、手足が片側だけ麻痺する。出血した量が多ければ、突然に倒れ意識も失ってしまう。
出典:http://kenko.karada555.info/category/atama/nosottyu/nosyukketsu/

脳卒中
脳卒中のことを、西洋では、古くからストロークと呼んでいました。これは「打つ、たたく」と言う意味のストライクと言う言葉に由来している。脳卒中の原因の分からなかった時代には、「神の手でたたかれて急に倒れる病気」と言う風に考えられていたため、こう呼ばれていたのある。以上から分かるように、脳卒中の最大の特徴は、今まで全く症状のなかった人に、晴天の霹靂(へきれき)のように突然に起こることである。
出典:http://www.yamamotoclinic.jp/dir6/

心臓発作
 心臓発作とは、循環器に関わる持病の突発的な発作を意味する。発作の原因としては大抵は一般に20分以上冠動脈の血流が悪化して、その部分の心筋細胞に供給される酸素が減って細胞が壊死し始めた時に起こる。

喘息大発作
 大発作とは、激しい咳や呼吸困難で横になれず、苦しみが続いて会話や日常生活が困難な状態のことをいう。はじめは軽症でも、急激に悪化することがある。症状がすすんで重篤になると、自分で動くことはほぼ不可能となり痰が乾燥して呼吸が止まり、意識を失う場合もある。


 警察などの調べでは、関連会社の担当者が、当日65歳の12年の運転経験を持つ運転手は、特段、体調不良などを訴えていなかったと述べていたが、定期健康診断はしていないとも述べている。

 心臓発作や喘息大発作は、持病化することが多いので、過去の病歴などを見ることでその可能性が推察できる。しかし、脳梗塞や脳溢血のほとんどは、突然の発作にはじまり、病状が急速に進んで数分から数時間で脳の組織が壊死してしまう、だけでなく高齢者にはいつなんどき生じてもおかしくない。

 脳梗塞は司法解剖すれば、ある程度判明するので、ぜひとも運転手の司法解剖をするべできある。(以下の読売新聞の記事では、司法解剖を行うとある)

 本来、バスは関越自動車道(高速道路)を運転していくはずなのに、なぜか一般道を運転していたことが判明しているが、もし、運転手が脳梗塞でハンドル操作が出来なくなったとすれば、一般道、高速道を問わず大事故を起こすことになると思われる。

 ちなみに、青山の友人の父親が関越自動車道が開通してまもなく、一人で乗用車に乗り、練馬から関越でゴルフ場に向かう途中、脳卒中を起こし、このときは左側にハンドルを切ったため切り土構造の道路側壁に激突し即死している。


◆死亡原因?

 以下は県警による死亡原因の記事です。

◆バス事故犠牲者の死因、ほとんどが頭や首に衝撃
 読売新聞 1月16日(土)11時54分配信

 県警は16日、死亡した14人のうち、当時の運転手を除く13人の死因について発表した。脳の損傷など頭蓋内損傷が8人、首の骨折など頸椎(けいつい)損傷が4人、多発性外傷が1人で、ほとんどが頭や首への強い衝撃で死亡したとみられる。

 当時の運転手については、県警が司法解剖して死因などを調べている。

 バスの車体は、転落時の衝撃などでくの字形に大きく曲がり、屋根がつぶれていた。県警はバスが転落した際、乗客の多くが就寝中で、無防備のため防御できず頭に直接強い衝撃が加わり、座席にぶつけるなどして死亡した可能性があるとみて調べている。

 県警によると、亡くなった人の一部は車外に投げ出されて見つかっており、シートベルトを着用しなかった乗客もいた可能性がある。

 2008年6月施行の改正道交法で、高速バスなどの乗客についてもシートベルトの着用が義務づけられた。乗客が高速道路でシートベルトを着用しなかった場合、運転手が罰則の対象になる。だが今回、乗客の一人は取材に対し「運転手からの指示はなかった」と証言している。

 ところで、死亡原因の多くは脳挫傷や頸椎損傷とされているが、脳挫傷はもとより、頸椎が骨折したり損傷を受けるとその背後や周辺にある脊髄や神経系に損傷を与えることが多い。

 このような場合、仮に一命を取りとめても下半身不随やいわゆる植物人間化することになる。私(青山貞一)は2010年11月は深夜に自宅の階段から落下し、第二頸椎を完全に破断するという大怪我をしたことがある。しかし、この大怪我では第二頸椎は骨折したものの、脊椎や神経系の破損を免れたため、不随はなかった。

 ところで、生き残られた学生はインタビューに応え自分はシートベルトをしていたと述べている。高速、一般を問わずバスの乗客はシートベルトを着用するのが常識である。おそらく亡くなられた方々の多くはシートベルトを着用していなかったのではないかと推察する。

 読売の記事ではシートベルトを着用しなかった乗客もいた可能性がある、とあるが、実際には、着用していなかった乗客の方が多かった可能性の方が高いのではないか。

 下の図は前頭部に衝撃を受けた場合である。この場合、前頭部に限局性の直撃損傷を生じ、後頭部に広範囲な反衝損傷を生じることになる。


前頭部に衝撃を受けた場合の脳挫傷
出典:Wikipedia

 ちなみに、脳挫傷とは、頭部を強打するなどの要因によって外傷を受けた際に、頭蓋骨内部で脳が衝撃を受けて脳本体に損傷を生じる病態である。死亡に至る確率が非常に高い病態である。

 また頸髄損傷は、交通事故や高所からの転落等での頸椎の脱臼・骨折や頸髄自体の病気(腫瘍等)等により、頸髄を損傷して手足を動かしたり、痛みや温度等を感じたりすることができなくなってしまう(四肢麻痺)後遺障害である。


頸椎とは 
出典:http://okeison.com/keison/keison2.html

 脊髄損傷で首の部分の脊髄の損傷を頸髄損傷、略して頸損とも呼ぶ。頸髄損傷も死亡に至る確率が高いが、死亡に至らない場合でも下半身不随などの不随となる可能性が高い。