自然エネルギー財団 REvision2013 シンポ参加記 セッション1&2 青山貞一・池田こみち 環境総合研究所(東京都品川区)顧問 掲載月日:2013年2月27日 独立系メディア E-wave Tokyo |
昨日(2013年2月26日)は朝から東京都千代田区内幸町にあるイイノホールで開催されました自然エネルギー財団主催の「新しい自然エネルギーの未来を創造する」というシンポジウムに午前セッションを中心に参加してきました。 自然エネルギー財団は、3.11の福島第一原子力発電所事故後、ソフトバンクの孫正義氏が設立した公益財団法人です。現在、スウェーデンのエネルギー庁長官を勤めていたトーマス・コバリエル氏が理事長を勤めています。 このシンポの全容はUSTREAMに760pのハイビジョンでライブ配信され、さらにシンポが終了した直後から、自然エネルギー財団の以下のWebにすべてがアーカイブ化されているので、参加できなかった人もシンポジウムの全容をハイビジョン仕様で視聴することが可能です。 また当日の配付資料、パワーポイントもほぼその全部がpdfでWebに添付されているなど、大変親切な対応となっています。しかも、参加者は招待だけでなく、応募して当選した人もすべて参加費は無料、すべてのプレゼンテーションやパネル討論について、同時通訳のサービスが提供されていました。 ウィークデーの朝9時半から夕方5時までぎっしりのプログラムでしたが、会場は朝から満席の盛況となっており、この問題に対する関心の高さを示していました。 ◆国際シンポジウム: REvision2013 - 新しい自然エネルギーの未来を創造する http://jref.or.jp/activities/events_20130226.php 最初に以下の方々から開会の辞と基調講演がありました。 これはUSTREAMの動画で視聴できます。 以下は動画で開会挨拶をする自然エネルギー財団の孫正義会長です。 開会挨拶をする自然エネルギー財団の孫正義会長 ・エイモリー・B・ロビンス氏 (ロッキーマウンテン研究所 共同創設者・会長・ チーフサイエンティスト) 配付資料あるいはパワーポイント ・ハラルド・ナイツェル氏 ・ドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省KIII3部副部長) 配付資料あるいはパワーポイント ・ 高原一郎氏 (資源エネルギー庁長官(tbc)) 配付資料あるいはパワーポイント ・トーマス・コーベリエル氏 (自然エネルギー財団理事長) 最初にシンポジウムの基調講演にたったエイモリー・B.ロビズン氏は青山が35年以上前に「技術と経済」誌の編集長だった頃、ソフトエネルギーパスという著書を書かれ、何回か特集を組んだこともあり、その講演内容には大いに興味がありました。
青山が代表、池田が副代表をしている環境行政改革フォーラム(Eforum)の正会員の諏訪亜紀さん(現在、国連大学高等研究所)が英国のロンドン大学に留学されたときに研究された博士論文もこのロビンズ氏のソフトエネルギーパスに関連したものだったはずです。 ロビンズ氏はエネルギーの量とともにその質に着目し、エネルギーの熱としての利用と電気としての利用、またエネルギーのカスケード的利用などいろいろな提案を当時されていました。 今日の基調講演でも目からウロコのお話をされ、わずか30分の講演時間でしたが、できればロビンズ氏に1時間ほど講演を頂くと良かったと思います。 午前中の第二セッションのテーマは太陽光発電(PV)、風力発電、バイオマス利用、地熱利用の4つの自然エネルギーに関するものです。 とくにシンポジウムで焦点が当てられたのは、日本で立法化されたFIT(固定価格買取)制度の実施前後で、上記の自然エネルギーの導入がどう増えたか、また導入の形態、導入の課題、阻害要因は何かなどを日本、ドイツ、スペインなどの専門家、研究者、コンサルタントなどがそれぞれの分野に関連し報告されました。
午前中のセッション1、2では以下の方々が日本における各エネルギー毎のFIT導入前後における自然エネルギーの導入状況、実績、導入に伴う課題などについて報告されました。司会は自然エネルギー財団の大林ミカ氏です。 セッション1のアーカイブ動画 セッション1: 日本の状況 - FIT以前と以降 太陽光、風力、地熱、バイオマス、日本の自然エネルギー産業から ・太陽光 貝塚泉氏 (株式会社資源総合システム 調査事業部 部長) 配付資料あるいはパワーポイント ・風力 永田哲朗氏 (株式会社ユーラスエナジーホールディングス 相談役) 配付資料あるいはパワーポイント ・バイオマス 梶山恵司氏 (富士通総研上席主任研究員) 配付資料あるいはパワーポイント ・地熱 江原幸雄氏 (地熱情報研究所代表、九州大学名誉教授) 配付資料あるいはパワーポイント ひとつの大きな焦点は、基調講演で詳細が報告されましたドイツはじめ欧州諸国はじめ世界におけるこの分野の先進諸国と比べると日本はFITを導入したあとも、急速に自然エネルギーの導入が進んでいないという点にあります。 また日本では欧州諸国や米国、中国などに比べると導入コストがなぜ非常に高いのか、その原因、理由を探ることにあります。 さらに、コストの問題に加え、国の省庁など関連する行政機関の規制とそれにともなうさまざまな手続が結果的に導入を阻害しているのではないかということについても、その実態を探ることにシンポジウムの大きなポイントがありました。 シンポジウムでは、太陽光発電(PV)、風力発電、バイオマス利用、地熱利用の4つの自然エネルギー分野で上記について報告がありました。 さらに上記4つの報告の後、日本の自然エネルギー:コスト - バリアと規制と題して、以下の2名の報告がありました。 セッション2: 日本の自然エネルギー:コスト - バリアと規制 動画はセッション1のあとに入っています。 ・中村有吾 (ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス リードアナリスト) 配付資料あるいはパワーポイント ・ハビエル・サンミゲル・アルメンダリス氏 (スペイン国立再生可能エネルギーセンター 戦略ビジネス開発部長) 配付資料あるいはパワーポイント しかし、個別分野の報告及びその後の報告のいずれにおいても、私見によればきわめて重要と推察される日本的な体質というか商慣行に深く食い入る報告がありませんでした。 日本的な体質や商慣行というのは、護送船団的な商慣行や談合体質を指しますが、それらについての言及が少なかったのは、装丁された個々とではありましたが、非常に残念でした。 これについては財団の理事長が冒頭の挨拶で触れ、また司会役の大林氏も各報告者への質問で若干触れていましたが、日本側発表者がほとんど正面から触れていませんでした。 たとえば、青山と環境総合研究所の同僚、鷹取敦が26年ほど前、太陽光発電モジュール(PV)を米国から平行輸入により6KW分購入したとき、日本では国の補助をメーカーと消費者双方が受けていながら、その価格は米国の当時の最高品質のモジュールの約2倍もしていました。当時、並行輸入業者が私達にこっそり本当のことを教えてくれました。 ◆鷹取敦:環境に優しい太陽光発電〜その期待と課題〜 月刊誌 晨(あした)、1995年5月、ぎょうせい http://www.eforum.jp/ashita/ashita-forum1995-05-takatori.pdf この体質はおそらくその後もずっと続いているはずです。またシンポジウムの報告にもありましたが、日本ではPVを例に取ると太陽光発電のモジュール単体価格が低下しても、インバーター、設置などを含めた総合的なシステムとしてのコストが他の諸外国に比べ非常に高いことがあります。 さらに自治体などがメガソーラーの事業者となる場合では、入札がうまく機能せず指名競争入札あるいは実質的に随意契約となっていることや、日本では、特殊な技術や装置について海外から調達することに消極的であったり、敢えて、そうした製品や技術をもつ海外企業の参加を排除するという商慣行が実質的な非関税障壁となっていることもあると推察できます。 これは何も、自然エネルギー分野だけでなく、廃棄物、大気汚染、水質汚濁などに関連する環境設備、装置についてもいえるはずです。ちなみに青山の知人が焼却炉分野の国際調査を行ったところ、同一の日本企業が東京と中華民国の台北に焼却炉を設置したとき、土地代を除外した単位処理量当たりの費用は日本国内の方が2〜3倍も高いことが分かっています(以下、参照)。 出典:青山貞一「廃棄物焼却主義」の実証的研究〜財政面からのアプローチ〜、東京都市大学環境情報学部紀要、No.5 http://www.yc.tcu.ac.jp/~kiyou/no5/P054-059.pdf 上記について青山は、中華民国に弁護士らを連れて現地調査を行っています。 他方、日本で風力発電が欧州のように活発に導入されない理由として、FITの価格設定にもあるかも知れませんが、環境省が所管する環境アセスメントに約3年、アセス費用が約2億円かかることが事業化や普及の障害となっているという報告が日本側発表者からありました。 以前から日本のアセスメント費用は非常に高額であることと時間がかかることが問題となっていますが、このことがスムースな自然エネルギーの導入を阻害しているとすれば大きな問題であり、アセスメント自体の内容や制度について抜本的な見直しが必要であると思います。この分野でも日本的な商慣行や談合体質、海外企業の排除などが指摘できると思います。 また私達が常々問題視している大規模PVや風力発電を農地を転用し立地する際、農水省が農地転用をなかなか許可しない問題も指摘されていました。 さらに日本における諸課題たとえば日本の再生可能エネルギーの研究開発、導入が他の先進国に比べて著しく遅れた理由に「政官業」さらに「政官業学報」が原発に一極集中的に関与してきた背景もあるはずです。これについては、廃棄物分野において、焼却炉や溶融炉に依存した焼却処理に偏重してきたことについても同じ背景があると思います。 「政官業学報」による既得権益の追求が極度に原発推進に偏ってきたことがあるはずです。学は大学などの研究者、報は報道を意味します。 「政官業学報」のペンタゴン 出典:青山貞一 午後のセッションにつづく |