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規制委シミュレーションを
大本営報道するメディアの大愚
青山貞一
掲載月日:2012年10月25日
 独立系メディア E−wave Tokyo

無断転載禁


 規制庁のシミュレーションは、私からしてみると地形を考慮した3次元流体シミュレーションの内容にくらべると幼稚園級ですが、この種のシミュレーションでもその技術的知識、手順のイロハがわかっていない圧倒的多くのひとびとまた新聞社の記者等にしてみると内容がブラックボックス化しており、情報操作による世論誘導を受けやすいものです。

◆青山貞一・鷹取敦:地形考慮なき稚拙な原子力規制委シミュレーション   
  数百億円かけたSPEEDIはどうなったのか?
  環境総合研究所3次元流体シミュレーションと対比し課題を解説

http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp20121024sim..html

 新聞各社が全面数頁費やす記事とすることは、私からしてみれば人身(心)を惑わす大本営発表を知ってか知らずかしていることと言えます。

 今回の規制庁のシミュレーションは、最初から最後まで物理学、気象学の原理から見て何ら根拠がなく、ましてあのような方法で積算線量を出すことの妥当性がまったくないのです。しかし、この分野がわからないひとびとにとっては、規制庁が大々的に出した情報だからと飛びつき、大きく取り上げたのだと思います。

 もっぱら、各社の取り上げ方が相当半端ではないことから、環境省なり規制庁からメディアに何らかのお土産や差し金があったのかも知れません(笑い)。

 地形が考慮されていないことはこの種のシミュレーションで致命的ですが、問題はそれだけではありません。

 将来積算線量の根拠として年間平均の風配図を使うことは原理的にナンセンスといえます。すなわち、放射性物質による汚染は、当初、原発から各地に風で運ばれ、降雨により大地など地面に沈着します。しかし、それはせいぜい1,2週間のことであり、雨や重力で沈降した放射性物質は、その場所から放射線を放射することになります。従って、過去の年間平均の風向、風速データをもとに、積算線量のポンチ図を作っても何の役にも立たないのです。そもそもこのシミュレーションの目的が最初の1週間の積算線量(被ばく)を予測することで、即時に必要な緊急時の対応(避難等)に備えるためのものですから、年間の気象を使っても意味がありません。

 上記は、ひとつひとつ何がどこまでわかっているのか、メディアの関係者らに私が質問を出してみればすぐにわかることです。

 一方、何100億円と30数年の歳月をかけた、SPEEDIは一体どうなったんでしょうか? このSPEEDIは私達が開発し利用している3次元流体シミュレーションモデルとほぼ同じシステムのはずです。

 このシステムの最大の特徴は、地形を考慮可能なことにあります。規制庁は、原発事故後2,3日後までしか使用できないなどと述べていますが、そんなことはありません。短期シミュレーションでは地形とともに、気象、すなわち風向、風速、大気安定度が決定的に重要なものとなります。

 SPEEDIは気象庁から得た気象データを元にシミュレーションし、警戒情報などに役立てるものですが、風向、風速は、せいぜい2,3日後までしか予測できないというだけの話であって、システムそのものは、気象データさえあれば、過去から将来までシミュレーションは可能です。

 たまたま私は今週の月曜日、早稲田大学理工3学部などを対象に、原発事故とその影響と題し、講義をしてきました。

http://eritokyo.jp/independent/aoyama-edw0101..html

 上記の後半でシミュレーションについても、その基礎を話しましたが、本来、マスコミは自ら判断できない、分からないことは、規制庁の言うことを鵜呑みにせず、それなりにわかるひと(少ないと思いますが)に、聞くべきです。

 たまたま今日は東京都市大学情報メディア学科で、世界各国と比べた日本のマスコミの問題点について、池田こみちさんをゲストに迎えお話ししてきました。

今週
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-ed01006..html

先週
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-ed01003..html