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単純に考えて「避難」基準が7日間で100mSvとした場合、1時間当たり595μSv/hの実効線量となります。 以下は2011年3月15日に福島第一原発事故時に実際に測定された空間放射線量です。以下を見ると500μSv/hを超すような地域は、原発直近の大熊町大野(西南西約5km)か、原発敷地内しかないことが分かります。 出典:青山貞一、鷹取敦、環境総合研究所(東京都品川区) したがって、通常、7日間で100mSvという値は、せいぜい原発から5km、遠くても10kmの範囲となるはずです。よほど原発施設直近でもない限り、あり得ない放射線量(実効線量)であると言えます。 したがって福島第一原発事故クラスの事故の場合、30km圏ではありえないと思われます。 しかも、上記の計算は平均値を示しているので、実際にはヨウ素131の半減期(8日間)を考慮すると、事故直後の初期段階では30km離れた地点で1000μSv/hもの値がでることになります。 これから分かるように、2012年10月24日に公表した日本政府のUPZ地域(30km)において1週間で100mSvの屋外避難基準を超えた地域が日本中で4地域あったという内容は、何かの間違いではないかとしか思えないわけです。 福島第一原発事故を対象とした場合、シミュレーションによる30km地点での1時間当たりの予測放射線量は、通常、20μSv/h、多くても50μSvにしかなりません。実際原発から30km地点で実測された放射線はといえば、飯舘村などで50μSv/h程度であったはずです。 仮に50μSv/hとした場合、 50μSv/h×7日間×24時間=8.4mSv(1週間) であり、規制委員会のシミューションではそれより低い値となるので、1週間で100mSvは、シミュレーション結果から出てきた数値ではあり得ないのです。 今日、午後に電話取材してきた新聞記者とその件を話していたら、原子力規制委員会は残りは内部被曝であると言っていました。 50μSv/h×7日間×24時間=8.4mSv(1週間) と仮定すると、 100(mSv)ー8.4(mSv)=91.6mSv(1週間) となり、この91.6mSvが本当に内部被曝からのものだとすると、従来、日本政府や福島県などがさんざん表明していた「内部被曝はほとんどない」どころか、人体被曝の大部分が内部被曝となっていることになり、今まで政府や福島県が言ってきたことと大いに矛盾することになります。 もっぱら、30km圏で7日間で100mSvを超えた4つの地域が福島第一原発より遙かに爆発の規模が大きい場合、たとえば2倍、4倍を仮定すると30km圏で16.8mSv、33.6mSvとなります。 さらに、直接的な外部被曝線量とは別に、拡散する放射性物質を口や鼻から吸い込むタイプの内部被曝が外部被曝と同程度あると仮定した場合には、以下のような計算が成り立ちます。すなわち、シミュレーションで計算されるのは放射性物質が移流、拡散し、そこから直接外部被曝を受ける場合の値ですが、それと同程度を室外にて呼吸から体内に取り入れる内部被曝を想定するわけです。 以下の計算ではそれら外部被曝と内部被曝の両方を考慮しています。 ●福島第一原発事故の場合 原発から30km圏(7日間を想定) 時間線量 7日間積算 外部被曝予測線量 50μSv/h 8.4mSv 上記と同程度が呼吸からの内部被曝 8.4mSv ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 16.8mSv ●福島第一原発事故の2倍規模の場合 原発から30km圏 時間線量 7日間積算 外部被曝予測線量 100μSv/h 16.8mSv 上記と同程度が呼吸からの内部被曝 16.8mSv ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 33.6mSv ●福島第一原発事故の4倍規模の場合 原発から30km圏 時間線量 7日間積算 外部被曝予測線量 200μSv/h 33.6mSv 上記と同程度が呼吸からの内部被曝 33.6mSv ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 67.2mSv 上記を見ると、30km圏では一番過酷な場合、すなわち福島第一原発事故の4倍規模の場合でも、7日間で100mSvにははるかに届かないことが分かります。 シミュレーションで直接的に分かるのは実効線量の外部被曝と呼吸による内部被ばくです。これは規制委員会の稚拙なモデルであれ私達の地形を考慮した本格的な3次元流体モデルであっても変わりません。 屋内退避、屋外避難の日本の基準値は、他の諸国と比べると確かに甘いことはありますが、たとえばドイツなどの屋外避難基準と日本の屋外退避基準は同じレベルにあります。 となると、原発事故時1週間における放射線被曝は、いわゆる外部被曝より圧倒的に多くが内部被曝となることをこれは証明していると言えます。 規制委員会の公開報告書からは、どうしても、そうとしか理解できないできないことになります。 もし、それが事実だとすると規制委員会は、飯舘村などで事故から1週間に外部+内部(こちらが過半から8割)の合計で100mSvを住民が被曝することになると言っていることになり、過去、ほとんど内部被曝をまともに認めてこなかった国や福島県は、何ら修正も反省もなく、事故直後に内部被曝が圧倒的に重要性なことを自ら認めたことになります。 同時に、上記が国際的に見て事実だとすれば、仮に地形を考慮したまともなシミュレーション結果あるいは事故時の実効線量の実測値の約3倍から7倍が内部被曝となっていたことになり、従来の外部被曝+内部被曝の総量を根底から問い直さなければならなくなります。 これは諸外国がそうだからではすみません。過去、政府、福島県、いわゆる原子力村の御用学者、研究者等が言ってきたこと、公表してきたことを全面的に見直さなければならなくなるはずです。 以上は、今回原子力規制委員会が30km圏で7日間で100mSvを超す地域が4地域あると発表したこととに関連しての私見です。おそらく7日間で100mSvの避難指針は、5kmないし10km圏での話であって、30km圏で7日間で100mSvを超える地域は尋常ではありません。 当然のこととして30km圏ではなく20km圏、10km圏などより原発に近い地域にあっても、福島第一原発事故級の原発事故の場合には、7日で100mSvの避難基準は甘いと言わざるを得ません。せいぜい他国同様7日で50mSvとすべきでしょう。 |