ここ数年、毎年のように沖縄本島にでかけている。調査や研究などの仕事ででかけているのだが、それとは別に沖縄に残された希有な自然を自分の目に焼き付け、そして記憶と写真に記録にとどめようとしている。
沖縄の自然環境やそれをとりまく海洋生態系は、世界的に見ても稀有なものであったはずだが、常軌を逸した米軍基地の存在、それに今や「常習化」している公共事業への依存症によって、次々に破壊され、見る影もない。
現在の沖縄、とくに本島で紺碧そしてマリンブルーの海や珊瑚の浜辺を見つけるのはそう容易でなくなっている。
私の「沖縄の記憶 Memory of Okinawa」シリーズでは、沖縄本当に残され同時に絶滅の危機に瀕している自然生態系や歴史文化遺産を写真を中心に紹介する。
その第7回目は、沖縄本島に見る「アジアのハブ港になれなかった那覇新港」である。
2009年2月13日〜15日の沖縄現地視察で訪問した場所・機関
沖縄本島は周りをすべて海に囲まれていることから、さぞかし港湾が発達していると思いきや、重要港湾となっているのはわずか那覇港だけである。その 那覇港は琉球時代の15世紀ごろから、アジア諸国の交易がさかんになり交易の拠点として発展してきた。
那覇港の港湾管理者は、沖縄県・那覇市・浦添市が設立する特別地方公共団体(一部事務組合)の那覇港管理組合である。
沖縄新港遠望
撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10
那覇港は、重要港湾・中核国際港湾に指定されており、沖縄県いや日本の西端の玄関口として国際コンテナ航路を含む50以上の航路を持ち、40以上の島々の経済活動を支えている港である。
2001年度における取扱貨物量は外国貨物が120万トン、内国貨物850万トンで合計970万トンの貨物を扱っている。
一方、米国との関係では、米軍にだけ恩典を与えるガントリークレーン料金引き下げ問題などが議員から次々と指摘されている。米軍関係貨物が大半を占めるにもかかわらずクレーン使用料を引き下げるのは、米軍への「思いやり」を増すだけで時期尚早であると批判されている。
- 1907年 - 本格的な湾岸工事を着手、
- 1915年 - 1200トン級の船舶3隻が同時に係留可能となる。
- 1941年頃 - 数回の拡張工事により、4500トン級1隻、2000トン級3隻が同時接岸できるようになった。
- 1944年 - 米軍の襲撃により、那覇港は使用不能となる。
- 第二次世界大戦後 那覇、泊港は米軍による大幅な改修工事は行われ、那覇港は2000級、泊港は3000トン級の船舶が係留可能となる。
- 1954年 - 那覇港が当時の琉球政府に、泊港が那覇市に返還され、それぞれ管理運営される。
- 1965年頃 - 沖縄本島の復興が進み、現在の港では対応できなくなってくる。そのため、安謝地先に新港の開発計画が進められる。
- 1969年 - 新港の工事着工
- 1971年 - 水深7.5m岸壁3バース、水深6.0m岸壁1バースがそれぞれ完成する。
- 1972年 - 那覇港北岸、泊港、新港を那覇市が管理するようになり、3港を一元化し那覇港は重要港湾の指定を受ける。
- 2002年 - 那覇港管理組合が設立。港湾管理者が従来の那覇市から沖縄県・那覇市・浦添市出資の一部事務組合に移管される。
- 2006年 - フィリピンと地元企業の合弁会社「那覇国際コンテナターミナル(NICTI)」が構造改革特区に基づき新港埠頭公共コンテナターミナルの運営業務を開始。
私がいる大学の学長は、那覇新港計画時、那覇港を東アジア、いやアジアの一大ハブ港湾とすることを提案したが、結局、日本のどの港湾同様また空港同様、アジアのハブたり得ないものとなってしまったと怒っていた。
確かに沖縄県の経済的自立を考えるとき、地政学的にみて沖縄県はアジア最大のハブ港湾やハブ空港を立地するに最適な場所であるはずである。米軍は未だ沖縄を実質的に手放さないのも、沖縄のアジアにおける軍事的、戦略的優位性があるからである。
結局、沖縄県はそれらの優位性を生かすことなく、国への極度の各種補助金依存、公共工事・公共事業依存を増しているのは非常に残念なことである。
那覇新港に浮かぶブイ
撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10
那覇新港を行く艀(はしけ)
撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10
那覇新港の土地利用図 出典:ライブドア地図情報
那覇新港の衛星画像 出典:グーグルマップ
■那覇新港の夕日
そうこうしているうちに、那覇新港にも夕暮れが訪れた。下は沖縄新港の夕日である!
那覇新港にて
撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10
那覇新港にて
撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10
つづく
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