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国基準三千倍の六価クロム
都立大島小松川公園
現地視察(速報-3)
青山貞一 Teiichi Aoyama  池田こみち Komichi Ikeda
環境総合研究所顧問(東京都目黒区)

掲載月日:2013年10月12日

 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 ところで、荒川区都立尾久の原公園といい、江戸川・江東にまたがる大公園(都立大島小松川公園)といい、70年代に都が購入した工場跡地にダイオキシン類や高濃度の六価クロムなどの基準値の1000倍以上もの超猛毒な化学物質が住民の生活に極めて近い土壌や池の水、側溝の泥などから検出されています。

 いずれも、この1年に見つかった土壌汚染は、超がつくほど高濃度の有害化学物質であるにもかかわらず、東京都の対応はなんとも「おそまつ」としか言いようがありませんr。

◆東京都の日本化学工業跡地の六価クロム対策概要

1 経過概要
 六価クロムによる土壌汚染問題は、昭和48年に東京都が日本化学工業(株)から買収した江東区大島9丁目の都営地下鉄用地及び市街地再開発用地で大量のクロム鉱さい埋め立てが判明したことを発端とします。

 昭和50年12月、都(交通局・都市計画局)は日本化学工業(株)に対し損害賠償を求めて提訴し、昭和61年4月両者和解が成立しました。また、他の民有地についても昭和54年3月「鉱さい土壌の処理に関する協定」(東京都知事、日本化学工業(株))を締結し、都の指導のもと同社の費用負担により恒久処理を実施しています。

2 処理状況
(1)和解に基づく処理
 平成2年11月から鉱さい処理工事が始まり、平成5年4月に8万6千m3の鉱さい封じ込め処理が完了し、現在は公園(わんさか広場)として開放されています。
(2)協定に基づく処理
 昭和55年からこれまでに34万7千m3の鉱さい封じ込め処理が完了し、現在は公園(風の広場、自由の広場)等として利用されています。

3 集中処理地(再開発地域内
 六価クロム鉱さいを処理するために昭和55年から平成12年にかけて、集中処理地を5箇所(@南北工場跡地(風の広場)A和解に基づく処理地(わんさか広場)B江戸川区処理地(自由の広場)C江東区処理地D日本化学工業(株)本社敷地内処理地)を設け鉱さいの封じ込め処理を行いました。

4 モニタリング
 亀戸・大島・小松川地区及び堀江地区においては、年間を通じて大気中の粉じん等を測定し、六価クロム汚染の広域的な影響の把握を行っています。さらに、集中処理地とその周辺において水質の六価クロム濃度を測定し、監視を行っています。

 なお、平成23年2月に船堀橋下の都道上で見られた滲出については、滲出水を還元処理し、その後掘削除去及び再舗装工事を実施しました。

 また、平成24年4月及び平成25年1月にわんさか広場の北側入口付近において見られた滲出については、滲出水の還元処理及び清掃等を行い、その後補修工事を実施しました。

出典:東京都

 東京都の対策を見ると、<対策は、封じ込め>とありますが、当然のこととして、汚染を除去しない対策は、後々、周辺土壌、雨水、地下水、たまり水、底泥などを汚染することになり 、びほうさく(弥縫策)でしかありません。住民の不安はいつまでも続くことになります。

 さらに、汚染は下水処理場を経由し、荒川や東京湾などの公共用水域を汚染する可能性もあります。またいわゆる濃度規制では川や海にたまる総量は規制できません。

 一口で言えば、臭いものに蓋をし、情報を隠蔽しているのです。これではリスクアセスメント、リスクマネージメント、リスクコミュニケーションのイロハがなされておらず、公園で遊ぶ子供や幼児、お年寄りなどが絶えずリスクにさらされることになります。

 どうしようもないほどお粗末な工場跡地政策であり、またEUなどで一般的な予防原則からほど遠い保身的な環境政策といえます。当然のこととして、まともなリスク管理とはなっておらず、社会的な責任をまったく果たしていないと思います。

 2013年3月に東京農工大の研究グループの調査で分かった高架橋下の集水枡から採取した水試料の六価クロム濃度は、最高で153ppmとされ、環境基準1リットルあたり0.05ミリグラム(0.05mg/L=0.05ppm)の3千倍以上となりましたが、その後、東京都が周辺の土壌(泥土)を採取して溶出調査しています。その結果は、6月に発表されています。

◆六価クロムを含む集水ます内の泥土を処分します。
江戸川区小松川一丁目地内の集水ますへの対応

http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2013/06/20n6a300.htm

平成25年6月10日
建設局
環境局

 平成25年4月19日に発表した江戸川区小松川一丁目地内の集水ます内の泥土について、六価クロムの濃度分析結果と今後の泥土処分を、下記のとおり、お知らせします。 なお、集水ます内の泥土については、直接人体に触れる場所にはありませんが、道路利用者や沿道住民等の不安解消等を図るため、現在、周辺を保安柵で囲い、敷き鉄板を設置しております。

 記

濃度分析の結果
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律に定める特別管理産業廃棄物に相当する六価クロム化合物(溶出量)が20ミリグラム/リットル検出されました。(参考)特別管理産業廃棄物の判定基準:1.5ミリグラム/リットルその他の物質については、判定基準を下回りました(別紙参照)。

泥土の収集・処分
泥土の収集は、6月13日(木曜)10時00分より作業を開始します(小雨決行)。
収集した泥土は、特別管理産業廃棄物に準じて適切に処分します。

分析結果
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2013/06/DATA/20n6a300.pdf

 サンプルと分析方法が違う、すなわち東京農工大は水サンプルを分析しており、東京都は升(ます)の中の泥を溶出分析しているという違いがあるとしても、東京農工大の調査チームが環境基準(0.05mg/L)で評価しているのに対して、東京都は集水枡の泥土について「特別管理産業廃棄物」の判定基準である1.5mg/Lで評価していることは、都民には分かりずらいことになります。場合によっては情報操作による世論誘導と受け止められかねないものと思います。

 住民が普通に通行する歩道にある集水枡の底にある土が「特別管理産業廃棄物」というのは理解に苦しみます。こうした小手先の情報操作による汚染実態の隠蔽は極めて悪質であると言われても仕方がありません。

 そもそも、この問題は昨年2012年の暮れに東京都が六価クロムの漏出を発見していたにもかかわらず、都民に公表していなかった問題に端を発しています。以下、毎日新聞の記事を示しますが、環境基準の220倍が検出されているにもかかわらず、都の担当課長は「周辺への飛散はなく、公表の必要はないと判断した。」と述べていることが都の姿勢を表していると思います。

■六価クロム:漏出、非公表 公園周辺、基準の220倍−−東京・江東、江戸川
毎日新聞-2012/11/18
http://mainichi.jp/feature/news/20121118ddm041040067000c.html

 東京都江東区と江戸川区にまたがる都立公園周辺で昨年2月と今年4月、有害物質の六価クロムを含む地下水が漏れ出ていたことが都の調査で分かった。処理のため除去した土壌からは環境基準の約220倍の六価クロムが検出されたが、都は「健康に影響はない」として区や住民に連絡していなかった。

 漏出があったのは都立大島(おおじま)小松川公園周辺。この一帯は70年代、都が購入した工場跡地に高濃度の六価クロムを含む鉱滓(こうさい)(鉱物のくず)が大量投棄され土壌が汚染されていたことが発覚し問題化。鉱滓は毒性を取り除いた上で鉄板などで仕切った地中に埋められている。

 都環境局によると、昨年2月に都道の割れ目から黄色い水が流れているのを都職員が発見し、検査したところ六価クロムが含まれていた。今年4月には約700メートル離れた公園入り口でも黄色い水が流れた跡が見つかった。いずれも直ちに無害化処理したが、都道の下から除去した土壌からは水1リットル当たり11・1ミリグラム(国の環境基準は同0・05ミリグラム)の六価クロムが検出されたという。原因は不明としている。

 同局の成沢智司(なりさわさとし)担当課長は「周辺への飛散はなく、公表の必要はないと判断した。漏出が頻発するようなら区などと対策を考えたい」と話した。一方、周辺住民らで作る「公園のクロムを考える会」代表の中村まさ子・江東区議は「東日本大震災で地下の封じ込めが破れた可能性も考えられる。漏出は住民に知らせるべきだ」と批判した。

【清水健二】

 まぁ、今の日本いや東京では、オリンピック開催に舞い上がるあまり、おそらく人がバタバタと死なない限り、何らまともな対策とらず、まさに臭いものに蓋をするようなお粗末な対策をするのが精一杯なのでしょう。

 今回の現地調査地点のそばには、東京都千代田区から移ってきた東京都環境科学研究所(旧東京都公害研究所)があります。しかし、荒川区東尾久の超高濃度ダイオキシン問題でも、今回の江戸川区小松川の超高濃度六価クロム汚染でも、東京都環境科学研究所の研究員らは、オリンピック開催に舞い上がり、開催を制約するような環境問題には目をつむる保身的都行政に押され、何ら本来の役割を果たしているとは言えないのではないかと危惧します。

 その昔、東京の公害問題に敢然と立ち向かった頃、多くの友人が東京都公害研究所でがんばられていました。しかし、今や見る影もありません。

 下は調査完了後の池田です。


撮影:青山貞一 Nikon Coolpix S8 2013-10-11

◆六価クロムの環境問題

 日本国内の化学工場跡地には、高濃度の六価クロムが土壌内に大量に残留している場所が多数存在する。六価クロムの主な用途である印刷やめっき関連の産業において現在も使用されているため、これらに関連する施設の敷地で六価クロム汚染がたびたび問題となっている。

 低濃度・少量の六価クロムが土中に放置された場合、土中の至る所に膨大な数が生息する微生物と接触することで、短時間で安全な三価クロムに変わると考えられており、問題はないとされる。しかし、高濃度の六価クロムが地表付近に大量に放置された場合は、周辺の微生物を全滅させてなお残留するため、その後の微生物との接触が進行しなくなる。このため六価クロムのまま長期間残留し、粉末になって飛散したり、地下水を汚染したりして公害を引き起こす要因になる。 

 また、日本ではかつて「地盤強化剤」という名目で、クロム鉱滓(スラグ)を埋め立てることが奨励され、沖積低地で軟弱地盤である東京の下町地域(江東区など)に、広域に渡って埋め立てられていた。クロム鉱滓による土壌汚染・地下水汚染は現在でも発生している。有名な例に、1973年(昭和48年)に地下鉄工事における調査で、都営地下鉄新宿線大島車両検修場用地から大量の六価クロムの鉱滓が発見され、土壌汚染問題として全国に知られることとなった一件がある。東京都交通局が買収したその用地は、元は日本化学工業の工場跡地であった。しかし、他の有害物質と比べて処理が容易であったため、処理後の現在では同地から六価クロムは検出されなくなった。

 火葬場から出る火葬灰から六価クロムが検出されたこともあり、最大で国の基準の420倍が検出されている。人体を構成する鉄、銅、クロムなどの金属とカルシウムの酸化物が火葬灰として残留するが、人体中に約2ミリグラムほど存在するクロムが高熱で六価クロムに変化したために高濃度で検出されたと考えられている。また、大半の火葬場では、1000度超の温度に耐え、比較的安価なステンレス製のひつぎ台が、少なくとも20年から30年間使われていて、繰り返し高温にさらされているうちに、ステンレス内の一部のクロムが六価クロムに変化したという説もある。

出典:Wikipedia