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政府の冷温停止宣言、
海外各紙が批判をぞくぞく展開!
掲載月日:2011年12月17日
 独立系メディア E−wave Tokyo


 昨日(2011年12月16日)夕方、野田首相が記者会見を開き、福島第1原発の冷却が安定し放射性物質の放出が大幅に抑えられとして冷温停止宣言をした。これに対し国内の指揮者や海外メディアが一斉に冷笑とも言える批判を展開している。 独立系メディア編集部

 以下に海外メディアのいくつかを紹介する。

■「冷温停止宣言の裏の疑問」ニューヨークタイムズ
   http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/12/blog-post_15.html
  ニューヨークタイムズ マーティン・ファクラー  2011年12月14日

日本政府が原子炉制御成功を宣言しても、その裏には重大な疑問

 東京発−壊滅的な地震と津波が福島第1原発の原子炉冷却システムを破壊し、3つの原子炉でメルトダウンを起こしてから9ヶ月、日本政府は近々、原発の過熱した原子炉を再び制御することに成功した、と宣言すると見られている。 しかし、そのような宣言が出る前から、専門家は深い疑念を表明している。

 金曜日に、野田佳彦首相率いる災害対策本部は、福島原発の壊れた3つの原子炉が「冷温停止」と同様の状態になったと発表するかどうかを採決する予定だ。冷温停止とは技術用語で、通常は壊れていない原子炉で炉心が安全に安定している状態を指す。専門家は、政府が予想されるように冷温停止を宣言するとすれば、それは原発の冷却システムを年内に復旧するという約束を守ろうとする政府の努力を反映しているだけで、真の原発の状態を表したものではない、と言う。

 対策本部が冷温停止を宣言すると、次のステップは使用済み燃料をより安全に貯蔵するために共用
冷却プールに移し、いずれは原子炉自体を開けることになる。 しかし、多くの専門家が恐れるのは、政府の勝利宣言は事故についての国民の怒りを和らげるためだけのもので、原子炉の安全性を脅かす危険から注意をそらすのではないか、ということである。そんな危険の一つ−3月11日のマグニチュード9の地震の余震で、福島原発の運転者である東電が事故後に応急措置として急いで構築した新しい冷却システムが損傷してしまう −は、可能性が大きいものとして多くの地震学者が指摘する。

 専門家はまた、冷温停止という言葉自体、壊れた原子炉が安定しているかのような印象を与えかねない、と言う。壊れた原子炉の燃料炉心はメルトダウンを起こしただけでなく、圧力容器を溶融貫通して圧力容器の外側の格納容器のコンクリート製の構造物の床を侵食しているのだ。

「政府は、すべては制御されている、と言って人々を安心させたい。それで年末までにそうする、といっている」、というのは、九州大学原子力工学科の工藤和彦教授。「私が知りたいのは、本当にそんなこと言ってしまっていいのか、ということです」

 おそらく多少の余地を残すためだろうが、日本政府はあいまいな表現を使い、3基の破壊された原子炉は「冷温停止状態」にある、と宣言すると思われる。実際上は原子炉の温度を水の沸点以下に安全に保つことが出来るようになり、溶融した炉心が再び原子核連鎖反応を起こして再び原子炉の温度が制御不能の状態で上がってしまう危険性はすでにない、という主張に過ぎない、と専門家たちは言う。

 専門家は確かに、壊れた原子炉を再び制御するための東京電力による作業が進んでいる、と評価している。福島第1原発のにわか造りの原子炉冷却システムは米国、フランス、日本の企業の協力で造られたが、今のところ炉心を冷やすことが出来ている、と評価している。

 また彼らは、大破した1号機の原子炉建屋を覆う小屋のような構造物が原発からの放射能の大気中への拡散を抑えている、と言う。1号機建屋は3月の水素爆発で破壊された3つの原子炉建屋の一つで、この爆発のために東日本、北日本の広範囲にわたって危険な放射性粒子が拡散した。

 それでも専門家たちは、[冷温停止という]用語は通常は健全な原子炉に対して使うもので、原子炉が十分に安全で格納容器を開いて中の燃料棒を取り出すことが出来る状態を示すものである、と言う。しかし、福島第1原発の壊れた原子炉から溶融した燃料を取り出すには、日本政府が予定する3年よりもよほど長い期間が必要かもしれない、と警告する。一部の専門家は、冷温停止の宣言は福島原発があたかも収束に近づいているというような誤解を招きかねない、と言う。

「福島第1原発の原子炉のような壊れた原子炉に対して冷温停止を宣言しても、さほどの意味はない」と言うのは、International Access Corporationの原子力工学コンサルタントの中尾昇だ。

 実際、数十年前にメルトダウンした原発からでさえ損傷した炉心を取り出せていないのだ、と専門家は指摘する。チェルノブイリ事故の場合、1986年の爆発後ソ連政府は損傷した原子炉をコンクリの石棺で固めただけである。冷温停止の話は環境の放射能汚染というより深刻な問題から人々の注意をそらしている、という専門家もいる。特に、建屋の地下に溜まっている、あるいは原発の敷地内に保管されている9万トンの汚染水が太平洋に漏出する危険がまだある、と言う。

「現時点では、原子炉の中がどうなっているかよりも汚染の状況の方が心配だ」、というのはMurray E. Jennex、サンディエゴ州立大学の原子力封じ込めの専門家である。

 原子炉自体が安定している、という日本政府の主張、、特に、核分裂と呼ばれる熱を発生する連鎖反応の再発はすでに不可能である、という主張は信用する、とJennex氏は言う。福島第1原発の原子炉の一つで先月、核分裂の副生物であるキセノンガスが検出され、連鎖反応が再開したのではないかとの危惧があったが、Jennex氏は、3月の事故から既に十分な量の核燃料[内の放射性物質]が崩壊しているので、それはまずないだろう、としている。

 それに反対する専門家もいる。九州大学の工藤教授は、核分裂の再開、これは再臨界と呼ばれる現象だが、原子炉を開いて中の溶融燃料を調査できるようになるまでは、その可能性を除外することは出来ない、と言う。しかし、教授を含めた専門家の一番の危惧は、地震や津波が再び襲って、東電の間に合わせの原子炉冷却システムを使用不能にしてしまう可能性である。冷却システムは地震安全基準に従って造られたものではない、と彼らは指摘する。このシステムは、原子炉と2キロ以上の長さの[プラスチックの]ホースでつながっている水の浄化装置やその他の脆弱な装置に頼っているのだ。

「地震か津波が一つ来ただけで、福島第1原発はまた振り出しに戻ってしまいます」、と工藤教授は言う。「このような危ない状態を、冷温停止、と本当に呼べるのでしょうか?」


■冷温停止宣言:ドイツ通信社が速報 批判的見解も紹介
  毎日新聞 2011年12 月16日
 http://mainichi.jp/select/world/news/20111217k0000m040032000c.html

【ベルリン篠田航一】

 東京電力福島第1原発の原子炉が冷温停止状態になったとの宣言について、ド イツのDPA通信は16日、「フクシマの原発の廃虚が制御された」と速報した。ドイツは福島第1原発 事故を受け、今年6月、国内17基の全原発を22年までに順次停止する「脱原発」を決めた。

 一方 でDPA通信は「燃料棒が溶融し、圧力容器を破って地上に漏れているともみられ、まだ安全な状態には程遠い。これで冷温停止を宣言するのは意図的なウソと紙一重。日本政府は国民をミスリードしている」と批判するオーストリアの専門家の見方も紹介した。


海外メディア 冷温停止を疑問視
  NHKニュース 2011年12月16日

 野田総理大臣が、「原子炉は『冷温停止状態』に達した」と述べ、事故の収束に向けた工程表の「ステ ップ2」を完了したことを宣言したことについて、海外のメディアは宣言の信ぴょう性を疑問視する見方や、 完全な収束には相当な時間がかかるという見方を伝えています。

 このうち、アメリカの新聞、 「ニューヨークタイムズ」は、電子版で「専門家は『冷温停止状態』の宣言を強く疑問視している」とした うえで、「年内にステップ2を達成するという公約を果たすための、現実を無視した宣言であり、原子炉の安全性への脅威から目をそらせることがねらいだ」とする専門家の見方を伝えています。また、イギリスのBBCは、野田総理大臣の記者会見の模様を生中継で放送し、「冷温停止は1つの節目だが、それは汚染された地域の除染や福島第一原発の廃炉といった今後の長い道のりの中の一歩にすぎない。

 避難を余儀なくされている人々が故郷に戻って普通の生活を始められるめどは立っていない」と伝えました。このほか、中国国営、新華社通信の英語版は、複数の専門家の話として、「損傷した原子炉内の温度を正確に測定することはできず、原子炉がどれほど安定した状態にあるかを断定することはできない」としたうえで、「世界の人々に間違った印象を与えるおそれがあり、日本政府は、ステップ2を年内に達成するということに固執しすぎるべきではない」と伝えています。


■政府の宣言 専門家からは批判の声
  NHKニュース 2011年12月16日 

 政府が東京電力福島第一原子力発電所の事故について「原子炉は『冷温停止状態』に達した」として、事故の収束に向けた工程表の「ステップ2」を完了したことを宣言したことについて、専門家から批判の声が上がっています。

 原子力の安全に詳しい九州大学の工藤和彦特任教授は「国や東京電力は『冷温停止状態』ということばを使っているが、原子炉では限られた手段での冷却しかできない状態にある。単なる区切りをつけるために宣言したものに過ぎない。正常に動いている原子炉を止めたときに使っている『冷温停止』とは相当違った状態であることをしっかり認識すべきだ」と述べました。そのうえで、工藤特任教授は「原子炉を安定的に維持できるようになったことは一定の評価はできる。 

 ただ、原子炉の状態や冷却方法が著しく改善されたわけではなく、安定した状態を再確認したに過ぎない。また、原子炉の溶けた燃料の状態がほとんど分かっていない状況で、今ある限られたデータに よる推測しかできていない以上、今後もデータの不確かさをカバーするために、新たに機器を設置して圧力や水位も測れるようにするなど、状況の把握を進める必要がある」と話しました。

 また、工藤特任教授は汚染水の処理施設からの水漏れを例に「今なされているのは事故の応急措置として『にわか作業』で作り上げたものであり、対策が十分でなかったことを示している。今の状態で仮設の施設を今後も使い続けなければならないこともあるわけで、あらゆる場所で水漏れが起きないことを示していく必要がある」と話しました。