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戦争は最大の環境汚染源

青山貞一 

環境総合研究所所長
武蔵工業大学環境情報学部教授


初出:食べ物通信


 冷戦構造の終結後も世界各地で戦争が起きている。とくにここ数年は、中東地域を中心に次々と戦争が起きている。

 いかなる理由があろうとも戦争行為は肯定されるものではないと言うのが私の考えである。

 あの「9.11」以降、友人の音楽家、坂本龍一さんとともに「非戦」活動を行なっている。

 世界各国の哲学者、音楽家、研究者、NGOなど40名以上が参加して「非戦」と言う本も坂本さんと一緒に刊行し、印税は「国境なき医師団」などに寄付してきた。

 ところで、私は常々、戦争こそ最大の環境破壊行為であり、最大の環境汚染源であると考えている。

 その考えをもとに、戦争がもたらす著しい環境破壊、汚染について調べ、逐次公表し、社会警告している。

 戦争が深刻な環境問題を起こすことはベトナム戦争、湾岸戦争、コソボ戦争またここ数年次々に起ったアフガン戦争、イラク戦争でも間違いない。

 具体的に見ると、たとえばベトナム戦争では、米軍が上空から散布したオレンジ剤などの除草剤にダイオキシン類が多数含まれており、ベトナム国土全体を汚染してしまった。

 戦後、ベトちゃん、ドクちゃんに象徴される先天障害をもった子供が多数生まれることになった。さらに影響はベトナム人にとどまらず帰還した米兵や韓国兵などにも機能障害をもたらしている。

 戦争による環境破壊、汚染は大別して2つある。「戦争行為」そのものと「戦争に付随する行為」によって生ずる環境破壊、汚染である。

 湾岸戦争ではクウェートの膨大な数100本に及ぶ油井が炎上した。油井炎上は大気汚染として住民の健康をむしばむだけでなく、酸性雨を周辺諸国にもたらしペルシャ湾に流出した原油が甚大な環境破壊をもたらしたことは記憶に新しい。

 おびただしい原油の炎上はドイツ一国並の二酸化炭素を排出し、クウェートの原油埋蔵量の10%以上が消失したとされる。同時に炎上に伴うススが空を覆い、パラソル効果により地表で大幅な気温低下も起きた。

 湾岸戦争による環境負荷は、それまで世界各国が必死に行なってきた環境保全努力を帳消しにするほど大きなものとなった。

 さらに、湾岸戦争では米が使った最新鋭戦車M1A1が発射する砲弾に劣化ウラン(U238)が含まれていたことが戦後判明した。

 劣化ウラン弾はその後アフガン戦争、今回のイラク戦争でも使われていることが分ってきた。劣化ウラン弾は原子力発電所などから出る低レベル放射性廃棄物を使った兵器である。

 それは武器として強烈な貫通力をもつ、と同時に、その放射線は直接大気汚染としてひとの体内に入り、ガンや白内障などをもたらす。さらに放射性物質は土や水に浸透し、環境を汚染し続ける。

 その後遺症ははかり知れない。

 他方、あまり知られていないが、イラクにはチグリス川、ユーフラテス川が合流しペルシャ湾にそそぐ地域一体にすぐれた湿地など自然環境もある。米英軍の戦車、装甲車がそれらの自然生態系を破壊していたことも分ってきた。

 私たちは戦争がもたらす深刻な環境破壊、汚染にも目を向けることにより、何ら問題の解決にならない戦争を地球上から一掃するよう働きかけたい。