水産行政及び食品安全行政について(速報)
小川勝也参議院議員質疑分

参議院農林水産委員会
(2002年4月18日

      

        
中村議員の分はこちら→参議院農林水産委員会 水産行政及び食品安全行政について(速報)
                      (
2002年4月18日) (中村敦夫参議院議員)

  以下は、小川勝也参議院議員の質疑です。なお、以下に出てくる政府参考人の木下寛之氏は、水産庁長官、また国務大臣 武部勤氏は、農水大臣を意味します。

                       【経緯説明】

 この4月18日、参議院農水委員会で魚介類中ダイオキシン調査結果及び有害化学物質に関する食品安全行政のあり方について、水産庁長官、農水大臣との間での質疑がありました。その議事録の速報ができあがりましたのでお知らせします。

 この農水委員会における質疑は、もともと平成11年度に水産庁が行った魚介中ダイオキシン類調査で高濃度が検出された近海魚種が平成12年度調査からはずされていたことに端をはっしています。

 水産庁による平成11年度と平成12年度の魚介中のダイオキシン類濃度データ、産地データなどの全データは環境総合研究所の自主研究の魚介中ダイオキシン類の以下ページに掲載してあります。

 水産庁、平成11年度、平成12年度、魚介類中のダイオキシン類の実態調査結果について
(pdfファイル)

 環境総合研究所では、ここ数年水産庁はじめ国、自治体が行ってきた魚介類中ダイオキシン調査結果の評価、とくに米国環境保護庁の魚介摂取警報(指針)や世界保健機構(WHO)のTDIをもとに行政データを評価した研究報告を公表してきました。週刊金曜日がその研究報告特集を組み、編集部独自に行った水産庁取材記事とそれへの摂南大学宮田教授、愛媛大学脇本教授らのコメントを掲載しました。今回の国会質疑はそれらをベースに行われています。

                                     環境総合研究所

○小川勝也君

 引き続いて質問させていただきます。民主党・新緑風会の小川勝也です

 今日は、参考資料を配らせていただいて、魚、水産物とダイオキシンの関係を質問させていただきたいと思いますが、まず、先週から、先週というか前回からも引き続いて法案について質問させていただいておりますが、冒頭、水産庁長官に私の思いを込めて答弁をいただいて、それから入りたいと思います。

 一つは、今、谷林委員からも指摘があった点であります。農業、農産物においても化学肥料、農薬は使用しているわけでありまして、昨今は消費者の中から、有機農業ブームというのか、有機農産物がいい、あるいは低農薬のものを求めたいという、そんな意識も強くなってきています。水産物の世界でも全く同じだろうというふうに思います。抗生物質もワクチンも一切使うなとは言いませんけれども、なるべく使わなくて済むものは使わない方がいい、そういう気持ちだけは持っていていただきたいというのが要望の一点であります。

 そしてもう一点、養殖漁業も大分疲弊しているというそんな情報を伺っています。いわゆる生けすの底にヘドロがたまる、あるいは漁業由来ではない重金属が底質にある、あるいは例えば漁業の世界でいうと、ちょっと世代間の対立があって、いわゆる漁協の中で幹部と言われる役員をやっているようなお父さん方と、いわゆる青年部というのか後継者というのが意見が対立している、こんなこともあるやに聞いています。

 何を申し上げたいかというと、一つは、やる気のある人たちにきちっと融資をできるようにしていただきたいということであります。

 例えば、先日、委員会で視察をさせていただいたときに、かつおぶしの一貫工場を見させていただきました。そこは何がすばらしいかというと、いわゆるゼロエミッションということであります。魚というのは、先ほども委員から話がありましたように、頭の脂はこれはDHAといって非常にいいものであるし、いわゆる魚かすというのは土壌改良剤に非常にいいわけであります。

 そういったことを全国でやりたいという人たちがいればこれは支援をしていただきたいというふうに思うし、いわゆる古い制度の中、漁協の若い人たちが、おれたちがこういうことをやりたい、例えば付加価値を取るために水産加工を自分たちがやるんだといったり、あるいは残念な例で言うと前浜に魚が来なくなったので業種転換をしなきゃいけない、そういう意欲のある人たちに制度融資が受けられるようにしていただきたい、この要望を申し上げたいわけであります。

 そしてもう一点、先ほどの焼津の工場に行って伺いましたら、融資を受けたのは中小企業金融公庫だということであります。せっかく農林漁業金融公庫があるのに、何でそういうところには行かないんだろうかと。これを含めて長官から御答弁をいただきたいと思います。


○政府参考人(木下寛之君(水産庁長官))

 まず、養殖業の問題でございますけれども、私どもも養殖業につきまして、例えば過剰な餌料投与の問題で養殖漁場が悪化をしている、あるいは魚病の発生なり養殖漁場の悪化が進行しているというような問題意識を持っております。そういう意味で、私ども、できるだけ適正な飼育管理はまず原則でございまして、そのようなことを通じまして魚病の発生を防止をする、あるいは抗生物質などの水産医薬品の使用を抑制するというのが基本であろうというふうに考えております。

 このような観点から漁場改善計画の策定を進めております。現段階で全国で百三十六ということでございますけれども、養殖漁場の皆さん方が従来のような単に生けすにたくさん魚を養殖するという観点からは相当程度意識の転換が図られつつあるなというふうに考えておりますし、私どもも食の安全という観点から、養殖水産物につきましてもトレーサビリティーにつきましてその導入について検討したいというふうに考えております。

 また、意欲のある漁業者の皆さん方がいろいろな工夫する際に、私ども、今回の法律改正に基づきまして、経営改善計画の認定を受けました皆さん方につきましていろいろな融資の道を開いていきたいというふうに考えているところでございます。

○小川勝也君 

 
それでは、お配りをしました資料を基に質疑を進めていきたいと思います。

 これは非常にナーバスなテーマでありまして、質問に取り上げるというのは非常に勇気が要ることでありました。食の安全というのが大変大きなテーマになったこと、そして武部農林水産大臣が消費者の方にしっかりと軸足を向けていくんだというその決意の表明がありました。ですから、大変気が重いんですけれども、このテーマを取り上げさせていただきました。

 これは、週刊金曜日という週刊誌から取った資料であります。水産庁が独自に魚介類中のダイオキシン類の実態調査をしたということであります。

 どういう目的でこの調査をされましたか。

○政府参考人(木下寛之君)

 私ども、平成十一年度から本年度、十四年度に掛けまして、我が国の国民が平均的に取っている魚類につきましてどの程度のダイオキシンが含有されているかということにつきまして調査を実施をしているところでございます。現在、十一年度から実施している、につきまして、それぞれについて結果が出ているというふうに考えております。

○小川勝也君

  様々な数字が出ておりますけれども、この数字に対してどういう思いというか、評価をしておられますか。

○政府参考人(木下寛之君)

 
現在、研究途上でございますけれども、四百検体を実施するという途上でございます。中にはかなりダイオキシンの含有率が高いような水産物もございますけれども、その水産物につきましてなかなか一定の傾向は出ていないと。地域によりまして、あるいは魚によりましていろいろな結果が出ているなというふうに考えております。

 したがいまして、私ども、十四年度で今回の四百検体の調査が終了するわけでございますけれども、更に今後、十一年度から十四年度に掛けて調査をした結果を踏まえまして、どのようなメカニズムでこのような蓄積が行われるのか等々含めまして、更に調査を深めていきたいというふうに考えております。

○小川勝也君 

 私なんかは、これ、単純に数字を見ると、大きい数字が出てきたらやばいなと思うわけであります。水産庁はそういうふうには思わないんですか。

○政府参考人(木下寛之君)

 
私ども、調査を実施するに際しまして、やはり客観的な数字を出すことがまず前提だろうというふうに思います。

 現在調査を実施しているところでございまして、中には、例えばアナゴ、コノシロ、スズキ等につきましては結果的に数値が大きいものもございます。

○小川勝也君

 
この調査をするに当たって、低い数字が出て安心するという考え方もあるけれども、高い数字が出たものは、これは引き続き調査をしていかなきゃならないなと思うのが僕は調査の当たり前の姿だろうというふうに思うわけであります。

 この週刊誌も指摘をしていたのは、例えば一九九九年に調査をして二〇〇〇年に調査しなかったものの中に大変大きな値を示しているものがあるということであります。そして、衆議院の決算委員会の答弁も聞いたりして、水産庁が幾つかの魚を四年間で一周させるように調査をするんだという言い訳も聞いていますけれども、私は何のために調査をしているのかなというふうに思うわけであります。例えば、一九九九年の調査で、大阪湾のコノシロ、九・一四八、大阪湾のアナゴ、八・三〇八などという高い数字のやつが二〇〇〇年には調査をされていないということであります。

 私は、低い数字であればいいわけで、高い数字のものがなぜ高い数字なのかというふうに引き続き調査するのが、これ、調査の趣旨だろうというふうに思います。そのことについて御答弁をお願いします。

○政府参考人(木下寛之君)

 
私どもが今回、十一年度から十四年度、四年間で調査を実施をしているところでございます。この調査は平均的な食事における魚介類からのダイオキシン類の摂取量を把握することを目的に実施をいたしております。主な魚介類が百種類、検体数については四百検体でございます。魚種ごとの消費量、それから産地分析などを考慮して調査を実施してきております。

 今、御指摘のアナゴ、コノシロ、スズキ等でございますけれども、全体の食料供給量に占める割合が相対的に少ないということで、そもそも当初から四百検体の中でそれぞれ二検体の計画ということでございました。これらにつきまして初年度で調査を行いました。したがいまして、二年目以降からは調査から外れておりますけれども、先ほど御説明申し上げましたように、十一年度から十四年度に掛けまして四百検体の調査をすると。今後、十五年度以降、この調査を踏まえまして、蓄積過程を含めた新たな調査を実施をしたいというふうに考えております。

○小川勝也君 

 
今までの行政の在り方というのは、これは私の想像ですけれども、例えば高い数値が独り歩きして、あるいは不買運動とか漁業関係者に迷惑が掛かるようなことがあってはいけないなというのがこれ、行政の出発点だったろうというふうに思います。しかし、小泉総理から強い指示を受けた武部農林水産大臣がやっていこうという行政はそれと違うわけであります。

 例えば、この調査はどこに依頼していますか。

○政府参考人(木下寛之君)

 調査の委託先でございますけれども、日本食品分析センター、それから日本冷凍食品検査協会、また食品環境検査協会の三団体でございます。

 これらの三団体でございますけれども、いずれもJAS法なり食品衛生法に基づきます検査機関でございます。食品に係る分析能力は十分信頼できるというふうに考えております。また、本委託業務でございますけれども、魚介類からの有害物質の分析が主な業務でございます。高い分析能力が必要だと、またデータの継続性の観点からも、この三団体に委託をしているところでございます。

○小川勝也君 

 
この三者に検査を依頼しているわけでありまして、この三者には、永田町の常識とでも言うんでしょうか、農林水産省を退官された方が役員になっておられる。そして、この契約あるいはどういうふうに受発注するのかというのが不透明だという指摘もあります。

 私は、今までの行政でいうと、悪い数字というのはこれは隠ぺいしていたんだと思うんですね。それはあらぬ混乱を招かないためにという知恵だったのかもしれません。私は、もし水産庁がまともな役所であれば、この高い数字であった一九九九年の魚介類を引き続き調査をしているはずだと思います、それを発表しているかどうかは別にして。本当に調査していませんか。

○政府参考人(木下寛之君)

 
スズキにつきましては、先ほど申し上げたような高濃度になっているわけでございまして、このような高濃度になっているメカニズムにつきまして調査を実施しております。

○小川勝也君 

 だから、二〇〇〇年とか二〇〇一年も調査をして、その値は持っているんですか。

○委員長(常田享詳君)

 
ちょっと止めてください。

   〔速記中止〕

○委員長(常田享詳君)

 はい、起こしてください。

○政府参考人(木下寛之君)

 現在、手元に資料を持ち合わせておりませんけれども、調査をいたしております。

○小川勝也君 

 こ
れ、食品、食べ物の安全ということがテーマになるということは、それにプラスする必須のアイテムは何かというと、情報公開なんです。情報を公開しない食の安全なんというのはあり得ません。

 じゃ、もう一点お伺いします。水産庁や農林水産省が情報をどれだけ公開するのか。例えば、今までに与党の議員と野党の議員とに情報の出し方に差を付けたことはありますか。

○政府参考人(木下寛之君)

 私どもは、基本的には、公開すべきものは与党、野党問わず公開をしているというふうに認識をいたしております。

○小川勝也君

 スズキに限らず、これに付随して、いわゆる各地域ごとの、あるいは魚種別の中で数字を持っていて公開していないものがありますね。それは是非、この委員会でもいいですので、出していただきたいと思います。

○政府参考人(木下寛之君)

 私ども、そのような点がありましたら、後ほど御提出をしたいというふうに考えております。

○小川勝也君

 調査していると言ったじゃないですか。

○政府参考人(木下寛之君

 私ども、今手元にございませんけれども、後ほど御報告したいというふうに思います。

○小川勝也君

 
これは別に追及しているんではありません。私は、明確にこのダイオキシンをめぐる問題に危機感を持っているから、今日は大臣に大きな提案をしたいと思ってこの質疑に立っています。

 この配付した資料の世界各国の国別ダイオキシンの排出量というところを見てください。日本は経済大国なんて言われていますけれども、実はダイオキシン大国であります。日本はアメリカ合衆国よりもダイオキシンの排出量が多い。そして、言うまでもなく、日本は狭い国土であります。そして、急峻な川。その日本国内で排出されたダイオキシンは、大体がこれ海に行ってしまいます。最も厳しい毒性が指摘されていますけれども、私たちのこの生活の周りにもダイオキシンは存在しています。ですから、空気中にダイオキシンがあって、我々は毎日かぶっているのかもしれない。しかし、このダイオキシンの摂取というのは、九割が食品から、そしてその七割が水産物からということであります。大変これ大きな問題だろうというふうに思います。

 日本にダイオキシンが多く発生しているのは、これは武部大臣のせいではありません。ついでながら披瀝をさせていただきますと、焼却炉が多いんですね、焼却炉の数。例えばヨーロッパの国々では、ドイツも含めて焼却炉の数というのは百以下であります。アメリカ合衆国が百五十、フランスが二百六十、そして何と日本には千八百四十か所あるんです。廃棄物処理場で燃やしてもダイオキシンがぼろぼろぼろぼろ出て、それが農地とかあるいは川とか、それが全部海に流れていくわけであります。これは、お魚も被害者であります。

 そんなことを考えますと、先ほど谷林委員が、「おさかな天国」という歌がヒットして、子供たちもお魚好きになってくれるかもしれない、おいしいお魚を毎日食べてくれるかもしれないという、そんな期待があると同時に、ダイオキシンを含んだお魚を食べて本当にいいんだろうか、こんな思いがあります。

 ダイオキシンという言葉の中に、例えば環境ホルモンと同じ性質があるというふうに言われています。その環境ホルモンが与える影響というのは、いわゆる男性の生殖能力を脅かすということであります。もう一つ、一番大きいのは、妊娠している女性が食べたときにその影響が出るということがはっきりしているわけであります。

 そして、先ほどお配りしたアメリカの環境保護局、EPA、ここでは、ダイオキシンは自然に存在しているし、我々は何げなしに食料を毎日摂取している中でみんなダイオキシンを食べているんだという前提でしっかりと情報を開示しています。そんな中で、どのぐらい食べていいのかという基準を作っています。

 このことには多分研究をされていると思いますけれども、水産庁として、このアメリカのEPAの摂取基準というのをどういうふうに読んでいますか。

○政府参考人(木下寛之君)

 
我が国ではダイオキシン類による健康に対する影響を防止するためにTDI、耐容一日摂取量というのを定めているところでございます。このようなTDIの制定に当たりましては、厚生労働省あるいは環境省で専門的な見地からの検討がなされたところでございます。

 妊婦なり胎児に対する健康影響が重要な課題であるというふうな観点からの慎重な検討が行われたというふうに聞いておりますけれども、最も感受性が高い胎児期に対する影響を考慮して指標として定められたというふうに承知をいたしております。

○小川勝也君

 
今までの縦割り行政でいいますと、食の安全は厚生労働省も所管しています。そして、先ほど申し上げましたように、ダイオキシンの摂取の九割が食品から、そしてそのうちの七割が水産物からということでいうと、大変重要な地位を占めているわけであります。例えば今までの行政で、厚生省から、おたくの水産庁が扱っている魚は危ないですよというようなことは、これはなかなか起こり得ないわけであります。

 ですから、僕は、武部大臣にやってほしいのは、自ら水産庁を代表して、農林水産省から、環境基準ということでいうと環境省も少し関係あるでしょう、厚生労働省も食の安全を所管しているでしょう、魚のダイオキシンの数値が上がってきていると、どういうふうに規制していったらいいだろうかというふうに相談を持ち掛けていただきたいんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(武部勤君(農水大臣))

 
食の安全と安心にかかわる問題に対してどう対応していくかということについては、BSEの問題を契機に調査検討委員会でも、やはり予防原則を含めるリスク分析に基づいてリスク評価をどうしていくか、またそれに基づいてリスク管理をどのようにやっていくか、さらには国民各界各層がともに向かい合うリスクコミュニケーションという、そういう組合せが大事だと、このように思いまして、情報開示をきちっとするということと同時に、その前提にはやはり専門的に、科学的にリスクをどう評価するかということが必要だと思います。

 これは、やっぱり独立性、一貫性ということを調査検討委員会でも提言されておりますが、そういったところは専門家でありますとか科学者でありますとか、そういった方々によるリスク評価という、独立した機関によってきちっと分析評価してもらうことが必要なんだろうと思います。

 そのために、農林水産省は、BSEだけじゃありませんで、このダイオキシンの問題、O157、トリインフルエンザ、もう食品関係様々ございます。そういったものは、きちっと現場からの情報は提供して分析をしてもらうと。そしてさらに、その分析に基づいてどのようにマネジメントしていくか、リスク管理していくかということについては、これは各省がそれぞれやっていくことなんだろうと思いますが、やはり縦割り行政の問題を今度つくづく感じましたので、独立したところできちっとリスク評価をするということが私は必要なんだろうと、このように思いますし、そのためには、大前提は、やはり情報というものを、生の情報を水産庁なりが直ちにプレスリリースすればいいというものではないんだろうと思うんです。やっぱり専門家に評価してもらうという、そういう場が必要なんじゃないかと、こう思っていまして、そのことは、関係閣僚会議が開かれまして、設置されまして、そこで今後、この食の安全にかかわるリスク分析、法整備あるいは行政組織の対応をどうすべきかというようなことを六月を目途に検討することになっておりますので、今、委員の様々な御指摘を踏まえて、私ども積極的な対応を試みていきたいと、このように思います。

○小川勝也君 

 
情報は公開するだけじゃなくて、情報をしっかり自分のものにしなきゃいけないと思うんです。わざわざこの参考資料を付けて、どれだけの数値が調査の結果出てきたか、そして海の向こうのアメリカではどうやっているのかというのを御丁寧にこの添付書類に付けているんですね。アメリカでは、どのぐらいのダイオキシンの濃度であれば一か月のうち何回食べていいですよという指標を作っています。そのとおりにしろとは言っていません。ただし、一・二を超えた魚は食っちゃ駄目と言っているんですよ。

 ところが、それの数十倍の値が水産庁の調査で分かっているんじゃないか。それで何のアクションも起こしてこなかったのが水産庁じゃないですか。武部さんが食の安全で小泉さんからも言われてがっちり変えますよと言うからこういう質問をしているんですよ。

 どう思います、これ。アメリカのこれ、一・二以上は食べませんと言っているんですよ。日本はこれ、水産庁は堂々と資料を出してきているじゃないですか。どう思います、これ

○国務大臣(武部勤君)

 ですから、ただいま申し上げましたように、この個別の問題に限らず、このダイオキシンの問題も含めて、私はきちっとした専門家や科学者によるリスク分析に基づく評価をしていただいて、それに対してどう向かい合っていくかというリスク管理という、その中で、その中で、アメリカがやっているような、これ以上のものは摂取しちゃならないとか、そういうのも出てくるんだろうと思います。それは今後、食の安全行政をどうするかというところで、私は、アメリカやヨーロッパ、そういったところの経験に学んで我が国もそういう対応をしていくということは当然のことだと、このように思っておりますよ。

○小川勝也君

 
これから学んでもしようがないんですよ、これ。もう水産庁の人は皆知っているんですよ。アメリカじゃどうしている、あるいはヨーロッパじゃどういう規制をしているのか。ヨーロッパで始めた規制なんというのはもう本当に厳しいものです。

 冒頭言ったように、このダイオキシン問題は農林水産省に別に責任があるわけじゃないんですよ。我々のこの暮らし、この社会の在り方がダイオキシン大国にしていったわけであります。そして、守らなきゃいけないのは、いわゆる消費者の安全、これは間違いのないことだろうというふうに思います。

 それで、この資料の左側の、左側の三番目の段、アサリのところを見ていただきたいんですけれども、東京湾のアサリが二回出てきます。数値が二個違います。これはどういうふうに説明できますでしょうか、長官。

○政府参考人(木下寛之君)

 
私ども、平成十一年から四か年の計画の中でダイオキシンの調査をしているわけでございますけれども、その中で、それぞれの検体によって相当幅があるというふうに考えております。したがいまして、同じような地域で取りましても、結果として相当程度の幅があると。

 そういう意味で、今回の東京湾の二つの検体についても、そのような幅があるデータの一つだろうというふうに考えております。

○小川勝也君

 じゃ、アサリ、シジミの国内の自給率はどのぐらいですか。

○政府参考人(木下寛之君)

 アサリの自給率でございますけれども、二〇〇〇年でございます、三二%、またシジミでございますけれども、五二%というような水準でございます。

○小川勝也君 

アサリとかシジミは、表示はいろいろあろうかと思いますけれども、中国とか北朝鮮から輸入しているわけであります。そして、この東京湾のアサリは、どう考えても、上の方のこの二・二二四のアサリは、これは正しいアサリだと思います。下の方の〇・一六二のこのアサリは東京湾に来たばかりだったんですよ、これ。別な国からアサリが運ばれてきて東京湾にまいた。だから、こんな小さな数字になっているんじゃないんですか。

 貝の表示に著しく問題点が私はあると思いますけれども、認識していますか。

○政府参考人(木下寛之君)

 先ほどお尋ねのように、中国なり韓国で取れたアサリにつきまして、原産地表示でございますけれども、私ども、輸入された二枚貝を出荷調整なり砂抜きという目的で短期間とどめ置いて、それを私ども、蓄養というふうに呼んでいるわけでございますけれども、そのような極めて短期間の蓄養されたものにつきましては、基本的には外国産だというふうに認識をいたしております。

 したがいまして、生鮮水産物の原産地表示に当たりましては、輸入品として原産国として表示すべきだろうというふうに考えております。

○小川勝也君

 自給が三割しかできないアサリで、七割が外国産という表示で売られていると思っているんですか。

政府参考人(木下寛之君)

 私ども、水産物の表示の問題、極めて重要な問題というふうに考えております。したがいまして、これまでも都道府県なり消費センターを通じまして、JAS法に基づく措置等々で品質表示の適正な運営に努めているところでございますけれども、更に一層、私どももいろいろな手だてを尽くしまして、水産物の表示の適正化に努めていきたいというふうに考えております。

○小川勝也君 

 
私は今、皮肉な結果をお話をしたいと思います。

 私たちが摂取するダイオキシン量は、若干ながら減っているという報告があります。なぜかというと、輸入の魚介類が増えてきているからであります。当該、今私が問題にした東京湾のアサリも、韓国か中国で育ったアサリですのでダイオキシンが少ない。ところが、韓国産という表示よりも東京湾で取れました方が値段は高いわけであります。そうすると、我々は、もしその偽装表示をされたアサリを購入したと仮定して、本来は、安い方が安全なんですね。東京湾の高い方が危険だと。だまされて高い金を払わされたけれども、害の少ないものを買うという、こういう皮肉な結果になっているんです。

 ということは、どんどんどんどん輸入すればいいじゃないかという話になったらどうしますか。私は、この農林水産委員会にいて、できるだけ国内で水産物を取って自給したいと思っている。日本で取れたものは危ないから輸入した方がいいよという話になったらどうなっていくのか。

 ただし、輸入ということは、これは私、我ながらいい言葉を考えたなと思うんですけれども、水産物を輸入するということは汚染を輸出することになる、こういう言い方ができるんじゃないかと。例えば、養殖魚もどれだけ海に負担を掛けてその生けすが運営されているのか。とりわけ、富の象徴と呼ばれているエビの消費量です。エビ、ブラックタイガーなんて呼ばれているのは、これ高い、富が蓄積された国がたくさんの消費をする。日本も、だから東南アジアを中心にどんどん自然破壊をして、マングローブの林をつぶして、輸入してエビを食っている。余り札びらで海外の環境破壊をするというのは良くないことだと。

 我々の国は世界で一番水産物資源を食べる国です。これは伝統です。ですから、私たちの国の漁業を守るためにも、食の安全という点から進まなければいけない方向性があると私は訴えたいわけであります。

 先ほど、わざわざ廃棄物が多いからダイオキシンが多いんだという話をいたしました。当然、縦割り行政の弊害というのは今でもあるでしょう。農林水産業を担当する武部農林水産大臣が、日本のごみがおかしいよと、日本のごみ問題はおかしいよと、いろんなものをごみにしてしまう生活を変えていかないと、我々がずっと歩んできた水産物を大事にしていくそういう食文化も守っていけないんだということを閣議でもどこでも発言してもらいたいと思うんです。いかがですか。

○国務大臣(武部勤君)

 
農林水産省の行政を消費者に軸足を移して大胆に政策を見直していくというのが今般発表いたしました「「食」と「農」の再生プラン」の基本理念でございます。

 そのためには、一昨日以来、いろいろこの委員会でも議論がございました。農林水産省あるいは水産庁の仕事は、漁業者を守るということだけではありません。それは、漁業者は天然の資源をいただいてなりわいを立てていると、こういうふうに考えるべきだと、このように思うんです。自然生態系を崩してまで漁業第一ということにいかないのであって、やっぱり自然生態系をどう守っていくかということが大前提です。

 そのために、それともう一つは、消費者の命と健康ということに寄与していかなくちゃならぬわけでありますから、私は、これからの農林水産省の姿勢としては、至る所で、各省に対しましてもあるいは外国に対しましても、有限天然資源のいわゆる持続的な開発利用ということについてはやはり厳しい原理原則に基づいてやっていかなきゃいけないと、このように思いまして、そういう姿勢に大転換していきたいと、こう思っている次第でございます。

○小川勝也君

 
じゃ、長官に要望したいと思います。

 先ほど言ったように、この高い数値の出た個体というのか地域の魚、魚種、これはやっぱり継続して調査していかないと意味がないんだろうというふうに思います。今、どれだけ調査をしているのか分かりませんけれども、これは四年間で、ワンサイクルで調査をするという方向性も否定するわけではありませんけれども、特に気になる高いポイントを上げた魚種についてはきちっと調査をしていくというふうにしていただきたいと思います。いかがでしょうか。

○政府参考人(木下寛之君)

 国産の水産物に対する信頼を確保するという観点からも、私ども十一年度から実施をしている調査項目でございますけれども、本年度一年しかありませんけれども、この中でできる限り対応していきたいというふうに考えております

○小川勝也君

 
それで、今日の私の提案は、通告をしてあるわけでありますけれども、先ほどからその言い方が非常に難しいわけであります。ダイオキシンはこの空気中にも存在しているし、我々はいろんなところから摂取しているわけであります。ですから、高い数値の魚を一回食べたからどうのこうのという問題ではないのも事実であります。

 しかし、先ほど申し上げましたように、とりわけ胎児毒性が、非常にこのリスクが心配されておりますので、いわゆる妊娠している人たちにしっかりと指導をしていただきたいというのが私の願いであります。母乳というのは、これはダイオキシンの蓄積が非常に高いわけでありまして、数年前の新聞に、大阪の女性が世界で最も高い数値を母乳の中で記録したということであります。

 この問題で、非常に憂えている人たちの中に非常にジョークが好きな人がいまして、こんな言い方をしました。ダイオキシン問題をほっておくと日本民族が途絶えてしまう、だから、それぐらいその思いがある人たちはだれかというと、右翼の人たちにこの問題をやってもらったらどうかというぐらい、そのジョークがありました。

 これ、やはりこの母乳、それから胎児毒性の問題というのは、食と安全の問題の中で魚をどういうふうに食べるかということにとっては別格な問題だというふうに思います。いわゆる母子手帳をもらう人が保健婦さんに指導を受けます。特に妊娠中にはダイオキシンが高い食品は余り食べない方がいいですよというマニュアル、指導をしていただいて、それを僕は実現をしていただきたいと思います。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(武部勤君)

 
先ほども食育ということについてお話をいたしたところでございますが、この食の安全の問題については、リスク分析に基づくリスク評価をきちっとやると。それに基づいて、リスク管理をどうしていくか、そして一般国民の皆さん、消費者の皆さん、妊婦も含めて、どう対応していくかというリスクコミュニケーションということが非常に大事だということでございますので、これは当然のことながら、妊婦においても各種の食品に含まれる栄養素をバランスよく摂取することが大事なんだろうと、このように思います。

 今後とも、国民に対するダイオキシン類対策については、我々農林水産省だけじゃなくて、厚生労働省でありますとか環境省と連携して対応していかなきゃならないんだろうと、こう思いますが、やはり一番大事な人の生命ということにかかわることでありますので、委員御指摘のことについては真剣に対応していく必要があるというふうに私は認識しております。

○小川勝也君

 
まあ精一杯御答弁いただいたんでしょうけれども、余り分かっていただいていないのかなというふうに反省をするところであります。

 アメリカ合衆国では、先ほど参考資料の中に添付をさせていただいたように、ゼロ回だというふうに言っているんですね。一・二超えたらもう食べちゃいけないと言っている。それを私たちは、日本の行政もそれは一朝一夕に変わらない、本当は全部やってほしいんですよ、これと同じ基準で。でも、そこは無理だろうから、厚生労働省に働き掛けて、とりわけ妊婦にだけ先行してしっかりとした道筋を付けてほしいと。

 BSE問題で大変御苦労された武部大臣ですけれども、小泉総理からの信任も厚く、食の安全はおれがやるというふうに大きな決意をされて今に至っているわけでありますし、連日の新聞も武部大臣のそういう決意を評価して、新聞に出ています。

 これは僕は、敵に塩を送るじゃないですけれども、大臣がこの問題をきちっとやれば食の安全は本当に保たれる国になるんだというふうに、大きくこの国が一歩前進するんだと思うんです。それを、本来は余り教えたくなかったんですけれども、大臣にやってもらいたい。これをやったら本当に人気出ると思いますよ。もう一度決意を。

○国務大臣(武部勤君)

 はっきり答えているつもりなんですけれども、厚生労働省であろうと環境省であろうと、食の安全、安心にかかわる主管大臣といたしまして、委員から御激励をいただいたり御指導いただいたことについてはしっかりやりたいと、このように思います。

○小川勝也君

 坂口厚生労働大臣にもしっかりお話しいただいて、これは今までの、先ほども申し上げましたように、水産庁の魚について厚生省から茶々を入れるということはできない相談だったんですね、今までの行政の縄張争いというのは。水産庁の方からちょっとやばいんだけれどもどうするかと相談を持ち掛けるということで期待をして、質問を終わりたいと思います。