2001年9月3日朝日新聞栃木県版 ◎聞きたい◎知りたい欄
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<リード>
上三川町で今秋、町民参加のダイオキシン測定調査が企画されている。分析に使うのはクロマツの葉。町内からボランティアを募り、サンプルを収集。町も協力し、分析を専門機関に委託する方針だ。自分たちの住む町がどの程度ダイオキシン汚染が進んでいるのかを知るだけでなく、企画を通じて住民の環境意識を高めるのがねらいだ。ボランティアグループの名も「くろまつ」。発起人の一人で同町ゆうきが丘、会社員大野恒夫さん(40)に聞いた。(澤井武次)
−なぜダイオキシン調査を。
「近年、ダイオキシン問題が取り上げられているが、身近ではない。自分たちの住んでいる所はいったいどのようなレベルの汚染なのか、知りたかった。首都圏より北関東の方が空気はきれなはず。それを数字で比べられれば。」
−発起人は。
「元高校教諭で現在民間稲作研究所を主宰する稲葉光国さん、高校教諭 の川俣将世さんと私の3人。」
−調査をはじめようとしたきっかけは。
「今春、宇都宮市、石橋町、上三川町の広域事業で稼動を始めた清掃工場建設をめぐり、地元自治会で97年7月に対策委員会を発足した。昨年の3周年記念総会で環境総合研究所の青山貞一所長を招き講演会を開いた際、松葉によるダイオキシン汚染モニターの紹介があった。稲葉先生も隣接の自治会の対策委員会を代表して講演会に出席しいて企画がまとまった。」
−調査に町民の参加を呼びかけた理由は。
「町民一人ひとりの生活環境に対する意識を高めることも調査の目的の一つだ。マツの葉をただ集めるだけなら2〜3人でできる。だが、それでは意味がない。」
−マツの葉測定の優れている点は。
「マツは自分で呼吸しながら大気中のダイオキシンを組織内に取り込むので、大気中の値が変動しても平均的な値が出る。測定時、風の強弱や風向きに左右されない。しかも1回の分析で結果が出る。今回の調査が広がり、周辺の自治体にも興味を持ってもらえるようになれば、データを比較することができる。」
「クロマツをサンプルに使うのは、技術的に優れた方法であることも理由の一つ。また、通常ダイオキシン測定は専門家しかできないが、マツの採取は素人でもでき、測定に携わっているという実感が持てる。業者に委託すると、サンプル採取だけでも費用がかさむが、ボランティアなら町の負担は分析費だけで済む。グループの名はクロマツそのものから取った。」
−調査の方法は。
「打ち合わせでは、町内をマス目のように2キロごとに南北に5分割、東西に4分割することにしている。各マス目で最低1ヶ所以上を調査地点とし、計数10ヶ所からサンプルのマツの葉を集める。具体的にには10月28日に『ダイオキシンって何? どうやって測る?』という青山所長らの環境講座を開いて説明することにしている。」
−この測定調査で期待するものは。
「清掃工場の問題を例にしても、そこで燃やしているごみはみんなが出している。しかし、周辺住民が声を出すだけで大多数の市民、町民は関心がとても低い。まして清掃工場はダイオキシン排出源のごく一部に過ぎない。お互いに安心して暮らせるように、みんなが意識を持たなければならないと思う。この測定調査で、みんながもっと環境を考えるようになればと願っている。」
写真:大野恒夫さんの経歴と顔写真