1 ダイオキシン国際会議の概要と特徴
2001年9月9日〜14日の6日間にわたり、韓国南部の古都、慶州(キョンジュ)で国際ダイオキシン学会(21st
International Symposium on Halogeneted Environmental Organic Pollutants
and Persistent Organic Pollutants (POPS))が開催された。
この会合は、ダイオキシン、環境ホルモン分野の専門家が年に一度、一堂に会する大きな国際学会であり、地元韓国はじめ中国、日本、台湾、米国、カナダ、ドイツ、オーストラリア、オーストリア、ノルウェー、イギリス、ベルギー、スウェーデン、スイス、オランダ、イタリア、CIS、フィンランド、エストニア、デンマーク、フランス、スペイン、アゼルバイジャン、エジプト、ブラジル、ベトナム、ポーランドなどからピーク時800人以上の研究者らが参加し、公式の発表だけでなく、ロビーやホテルで徹底した議論が展開された。
年々日本からの参加者が増加しているとのことだが、特に今年は、日本からも近い韓国での開催とあって、全出席者の半分弱の400人前後が日本からの参加となった。地元韓国からは約200名、残り200名が欧米、アジア各国からの参加となった。参加国の顔ぶれをみても、この問題はまだまだ先進国の課題であることがわかる。
9月10日月曜日から始まった研究発表会は、午前8:30から午後6:30まで、非常にタイトなプログラムとなっており、非常に密度が高いものであった。
ちなみに、研究発表分野は、当該分野の著名な研究者によるテーマ別基調講演に加え、(1)国際関係、(2)神経毒性、(3)分析手法、(4)食品、農作物及び動物中のダイオキシン等のPOPs、(5)POPs検出の生物分析アプローチ、(6)毒性学、(7)人間への暴露、(8)(化学物質の)輸送・移動、(9)発生源、(10)環境濃度、(11)リスクアセスメントなどに区分されており、各分野ごとに、口頭発表とポスター発表が用意されている。論文審査を経て受理された日本からの口頭発表は約30本、ポスター発表は150本程度と多く、全体ではおよそ600本を超える発表となった。
論文集は、実に5分冊、2500頁に及んでいる。会議場となった「現代ホテル」には、研究発表会場とともに、サンプリング機器、分析機器類や試薬類などの展示コーナーも設けられ、マーケティングとともに最新の技術をめぐる議論が繰り広げられた。来年はスペインのバルセロナで開催される予定となっている。
2.ダイオキシン会議での発表内容
環境総合研究所を中心とした国際グループ(環境総合研究所、摂南大学宮田秀明教授、カナダの分析機関マクサム社の分析技術者ら及び生協などの消費者グループ)は、ここ3年間継続して研究してきたダイオキシンに関する研究、すなわち松葉を生物指標とした環境大気中ダイオキシン類の計測、分析、解析、評価にかかわる英論文を4本提出した。これらの論文は、口頭発表が1本、ポスター発表が3本として受理され、市民参加により蓄積された貴重なデータと知見が国際舞台で発表される機会を得ることができた。発表論文のタイトル及び概要は以下の通りである。
(1) Correlation of Dioxin Analogues Concentrations between Ambient Air
and Pine Needle 1
厚木基地の長期大気モニタリング調査と松葉の調査から大気と松のダイオキシン濃度の関係がほぼ1:10であることを示した。
(2) Correlation of Dioxin Analogues Concentrations between Ambient Air
and Pine Needle 2 -Case Study in Greater Tokyo Area-
首都圏を対象に、複数地点から採取した松葉が地域の大気中のダイオキシン類濃度の長期平均・広域平均を反映することを示した。
(3) Correlation of Dioxin Analogues Concentrations between Ambient Air
and Pine Needle 3 -Trend and Its Estimated Source-
グリーンコープ管内の2年継続のデータをもとに、松葉のバイオモニターとしての妥当性と、地域平均と発生源近傍との関係について論じた。
(4) Correlation of Dioxin Concentrations between Ambient Air and Pine
needle 4-Categorization of Congener Pattern-
同族体パターンをクラスター分析し、高濃度地域と背景濃度地域のパターンについて分類し特徴と傾向を示した。
いずれの論文にも宮田先生が共著者として加わって頂き、論文執筆に当たりご指導を頂いた。この場を借りてお礼を申し上げる。審査の結果、上記4論文の内、3番目の継続データをもとにした解析評価結果が口頭発表論文として選ばれた。口頭発表はプレゼンテーション15分、質疑5分が割り当てられ、池田こみちが担当した。ポスターセッションには、ダイオキシン分析の実務を担当したカナダの分析機関のメンバー(3名)や厚木基地の産業廃棄物焼却炉のダイオキシン調査で協力してくれた米国の環境弁護士らも加わり、日本はもとより、アメリカ、カナダ、ドイツ、台湾、中国、韓国など諸外国の研究者らとの間で数時間に渡る議論を行うことができた。
海外のある専門家は、松葉によるダイオキシン汚染マップ作成プロジェクトは、国家研究プロジェクトに比肩するものであり、それを住民、消費者の費用負担をもとに全国規模で毎年継続して実施していることは驚嘆すべきことだ、と率直な感想を漏らしていた。実際、米国やイギリスなどの類似の発表はいずれも環境保護庁(EPA)など国が行っており、環境大気中のダイオキシン類の常時モニタリングは、焼却炉排ガス濃度の常時モニタリング同様に国際的関心事でもあるので、今回の経験・交流を基盤として今後、米国、カナダ、イギリス,ドイツ、スウェーデン、韓国などの研究者及びEPAなど政府関係者と情報交流しながら研究を継続して行きたいと考えている。
3.松葉のダイオキシン測定活動の経過と最近の広がり
3−1 背景
(1)高まる市民ニーズ
「ダイオキシン(以下DXNと略す)」の汚染が身近にあることを知った市民は、所沢(埼玉県)、龍ヶ崎(茨城県)、能勢(大阪府)、豊島(香川県)、小林(宮崎県)、橋本(和歌山県)、と全国のDXN汚染地域の実態が次々と明らかになるにつれ、自分たちが住む地域のDXN汚染状況を知りたいと思うようになった。行政に依存することなく、自動車排ガスのカプセル調査のように手軽に測定できる方法はないか、という相談が首都圏の生協(生活クラブ)からERIに持ちかけられたのは、99年春のことだった。
環境中に排出されるDXN類の9割以上は、廃棄物の焼却施設からと言われている。ひとつの焼却施設を例に取れば、煙突から排出される排ガスに2割、灰に8割のDXNが含まれるという。煙突から排出されたDXN類はたちまち大気中に拡散し希釈されて人々が呼吸することとなる。大気が汚染された場合には、体内への吸収率が85%と高いため、リスクは高まることとなる。
(2)大気中DXN類測定分析の課題
通常、行政及び事業者は、ハイボリュームエアサンプラーというサンプリング機器を用いて24時間大気を吸引し、機器内に装着したウレタンフォームと濾紙に大気中のガス状物質と粒子状物質を付着させ持ち帰り、測定分析するという方法を採用している。しかし、ハイボリュームサンプラーによるサンプリングでは、サンプリング時の気象条件や作業手順により、DXN類の揮散や捕捉率の低下が明かとなっており、正確な測定分析が難しく、分析費が高額であるにもかかわらず、住民にとって目安となるデータが得られにくいという課題がある。
(3)環境基準との適合性の評価の課題
また、我が国では、いわゆる「所沢事件」をきっかけに、国会でもDXN汚染が真剣に議論されるようになり、諸外国から遅れること10数年にして、ようやくDXN類特別措置法が99年に制定され、翌2000年1月15日から施行されている。
そこでは、法律のひとつの目玉として、一般環境大気(年間平均値で0.6pg-TEQ/m3)、公共用水域(年間平均値で1pg-TEQ/L)、土壌(一般住宅地で1,000pg-TEQ/g)について、DXN類の環境基準が定められた。
しかし、都道府県及び市町村による一般環境大気中のDXN類の測定は、相変わらず年間2日〜8日にすぎず、年間平均値として定められた環境基準との適合性を評価することは極めて困難と言わざるを得ない。
また、1日単位の試料採取による測定分析であるため、調査日の風向、風速などの気象状況、周囲の地形や発生源の稼働率、焼却物の組成などの焼却条件によって測定濃度が著しく変化するため、年間数日の大気中DXNの測定により地域を代表する長期平均的な汚染状況を把握することは極めて困難である。まして年平均値で設定されている大気中のDXN濃度に関する環境基準との対比は非現実的なものとなる。先進諸国の中でも、大気中のダイオキシン類濃度の環境基準を設定している国はない。
3−2 有効な生物指標(Bio-monitor)を探せ
国や地方自治体はDXN類特別措置法の下で定められた政省令や通達などに従って、さまざまな試料についてDXN濃度を測定分析している。環境基準が設定された環境大気、土壌、水などについては、定期的に測定されホームページなどで公表されるようになった。また、耐容一日摂取量の推計のために、野菜、魚類、乳製品などの個別食品とともに、食事から摂取については、トータルダイエットスタディとしても分析されている。市民にとってわかりやすいデータは何を測定することによって得られるのだろうか。
EU諸国では、バイオモニターとして針葉の他に牛乳などに着目し、既にいくつかの国で測定されており、針葉中と大気中のDXN濃度との関係については、「大気中の濃度とこれらバイオモニターの濃度との直線的な相関関係についてはまだ明らかになっていないが、バイオモニターは地域の大気濃度を把握する有効な指標として活用されている。」と報告されている。オーストリアの工業都市では、大気中のDXN類の濃度分布を把握するため1996年に30検体の針葉がバイオモニターとして分析されている。
EUで測定された針葉中に含まれるDXN類の濃度幅、0.3〜1.9pg-TEQ/g1)と、北欧諸国の大気環境濃度2)との関係をみると、ドイツの大気濃度の低い地域
0.03〜0.07pg-TEQ/m3(農村地域)及び高い地域 0.15pg-TEQ/m3(工業地域)の値を見ても、針葉と大気の濃度の関係はおよそ10:1に近い関係がみてとれ、バイオモニターとしての有効性が伺える。
1)Compilation of EU Dioxin Exposure and Health Data Task1-Member State
Legislation and Programmes
Report produced for European Commission DG Environment UK Department of
the Environmnet,
Transport and the Regions(DETR) October 1999
2)表1.2 各国における大気中の(PCDD+PCDF)の濃度、宮田秀明著、ダイオキシン、岩波新書605、p7
3−3 日本でも測定されていたクロマツ
日本では、95年頃から、摂南大学薬学部、宮田秀明教授の研究室において、クロマツに含まれるDXNの測定分析が行われ、基礎的な研究が進められていた。また、97年には、旧環境庁が、全国一斉調査の一環として、各地のクロマツを測定分析している。それらの結果より、クロマツは大気中のDXN濃度を的確に反映する有効な生物指標であることが示唆された。
(1)大学での基礎的研究:松葉調査の原理(ダイオキシン蓄積過程)
松葉は従来より大気中の大気汚染、重金属類などの測定分析の環境指標として活用されている。本調査ではクロマツが大気中に存在するガス状、粒子状のDXNを呼吸(炭酸同化作用)を通じ生物組織内に長期にわたり蓄積することに着目している。
摂南大学薬学部宮田研究室が大阪府枚方市で2週間に一度、松の針葉を採取し分析した研究報告によると図3−1に示すように、大気中のDXNはクロマツの新葉から急速に蓄積され、約4ヶ月以降で濃度変化が少なくなり定常状態に達することが観察、確認されている。図からは、さらに一旦蓄積が安定すると、その後は大気中の平均濃度につれ松葉DXN濃度が上下することが確認されている。したがって、4ヶ月以上経過し蓄積量が安定する6ヶ月以降の針葉を試料に用いれば、地域の大気の平均濃度を推定することが可能となるものと考えられる。
図3−1 松の新葉中のダイオキシン類の蓄積経過
出典:Masaru Ikeda, Time trend on accumulation of PCDDs, PCDFs and Co-PCBs
in young pine needle, Setsunan University
(2)国による先行調査
図3−2は、環境庁が平成9年度の総合パイロット調査で行った埼玉県内の松葉調査の一部である。同族体パターン及び実測濃度はははっきりとした違いを示している。毒性等量濃度は、発生源の集中している狭山市赤坂付近が24pg-TEQ/g、発生源の少ない未汚染地域である秩父が2.3pg-TEQ/gである。ちなみに、土壌中DXN濃度は所沢周辺地域の狭山市赤坂が94.5pg-TEQ/g、秩父が7.5pg-TEQ/gであった。この結果は、クロマツが的確に一般環境大気中のDXN汚染を反映することを示している。
図3−2 汚染地域と未汚染地域の松葉同族体パターン図
<埼玉県所沢周辺(狭山市赤坂)>
<埼玉県秩父>
(出典)環境庁、平成9年度総合パイロット調査
こうした先行調査や基礎研究を参考に、ERIでは、市民参加による松葉DXN測定分析調査を提案することとなった。
4.住民参加の全国松葉調査の実績
1999年3月、生活クラブ生協のスタッフからの相談がきっかけで始まった本調査は、九州、関西エリアの環境生協(グリーンコープ、エスーぷ大阪、Lコープ京都、生協都市生活)にも広がり、次第に大きなうねりとなって市民や行政ばかりでなく、学術面でも大きな貢献ができるまでに成長し、今年で3年目に入る。この間の測定サンプル数は2年間で
300余にも上る。2001年度もおよそ100サンプルが予定されており、合計400近いデータが蓄積されることになる。
図4−1 地域別の濃度比較(松葉)
<2001年度調査参加予定地域と検体数(予定も含)>
──────────────────────
・九州・中国(3年目に入ります) 55検体
・福岡県大野城太宰府環境施設組合 1検体
・関西(大阪南部地域:2年目) 8検体
・関西(西宮市:2年目) 2検体
・関西(京都市) 1検体
・静岡県福田町(2年目) 1検体
・千葉県(沼南町他) 10検体
・仙台市 13検体
・栃木県上三川町 1検体
・埼玉県川口市 2検体
・広島県福山市 2検体
・その他(諸外国を含む) 5検体
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● 松葉調査の社会的特徴 ●
@住民ひとりひとりが調査に参加できること
A住民ひとりひとりの経済的負担が大きくないこと
B結果が松葉調査に参加した住民に共有できること
Cインターネットで広域的な情報共有化が図れること
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■ 松葉調査の技術的特徴 ■
@測定結果が地域代表性をもつこと
A測定結果が長期平均特性をもつこと
B測定により大気中DXNの平均濃度がわかること
C得られた複数の点データから地域全体の面データ
として汚染状況が得られること |
何と言っても目に見えない、臭いもしないDXNの汚染実態を自分との距離、居住地との関係で見ることができることが、リスクコミュニケーションとして極めて大きな意味を持っている。どんなに正確な測定分析データがあっても、数値だけでは十分な理解が得られないからである。
この間、採取エリアも、広域地域平均を測定したところとともに、気になる焼却施設周辺に的を絞ったところなど、地域毎に工夫が行われてきた。最初は半信半疑だった市民も、次第に手応えを感じてきている。ダイオキシン問題の解決は人任せではいけないと。
市民参加の松葉ダイオキシン測定分析活動には次のような特徴がある。ここでは、リスクコミュニケーションのツールとしての松葉調査に着目して、その成果をまとめてみることとする。
5.市民活動としての成果と今後の方向性
本プロジェクトの最大の特徴は、一般市民や消費者と専門家(大学や調査研究機関)が連携したことである。日本ではとかく専門家による市民への支援が不足していることが指摘される中、松葉調査は画期的な例となったことは間違いない。
さて、松葉の測定を通じて、市民が毎日呼吸している大気に含まれるDXNの濃度を知ることはどんな意味があるのだろうか。
(1)現状認識
まず第一に、全国各地の濃度と比較して自分の町の汚染状況がどの程度か、について目安を得ることができる。また、人の健康を守るという観点から設定された環境基準を達成しているのかどうかについても目安を得ることができる。良好な住宅地であるべき都心から50km圏のエリア(相模原市、八王子市、所沢市に隣接する都県境、柏市など常磐線沿線など)にDXNの汚染が広がっていることが明らかになった。そんなはずではなかったのに、とショックを受けた市民も多かったが、現実を直視して立ち上がった市民もいた。
(2)原因追究/発生源の探索
他地域に比べて著しく高い場合や環境基準を上回っている場合には、その原因を考えることになる。DXNを発生させている施設はどこにあるのか、また、そこでは何をどのように焼却しているのか、に関心が集まる。現に、山口県下関市では、地域平均濃度が2年連続して高かったことがきっかけとなり、悪質な産業廃棄物焼却事業者が摘発されている。
(3)情報収集
そして、その次には、行政が測定している各種データを入手して検討してみたくなる。何と言っても税金で測定しているデータであり、市民のデータに他ならない。エリア内の一般廃棄物焼却施設の排ガス濃度はどの程度か、また、エリア内で測定された一般環境大気の季節ごとの濃度はどのようになっているか、発生源周辺の土壌や河川水質、魚類などその他の指標はどのような濃度となっているか、など国から市町村レベルまで行政が測定したデータを入手して検討してみたくなる。 場合によっては、測定費用や測定分析業者などについても調べてみて、分析精度の問題や分析費用の妥当性などについてまで言及する場合もある。
(4)廃棄物政策についてのチェック
自分の町や地域のごみの分別方法や減量化対策、リサイクル関連施策はどのようになっているか、また、一般廃棄物焼却施設の運転管理は適切に行われているか。産業廃棄物焼却施設への指導や監視はどのように行われているかについて情報収集を行ってみることになる。情報提供に消極的な行政の対応に接して、改めて疑問を感じる市民も多い。
(5)松葉のサンプリング調査に参加して
仲間だけでなく、子供や家族と一緒にダイオキシン汚染などについて話し合い、一緒にサンプリングを行うことにより、環境教育としても有効な活動となっている。クロマツを探しながら町を歩き、町のいろいろなことを再発見することもできた。
(6)政策提言のできる市民へ
問題がはっきりした地域では、問題解決に向けてさまざまな提言、活動を展開していくことができた。市民が行政や事業者、議員などとのコミュニケーションを繰り返し、少しずつ信頼を回復したところもある。また、市民グループが相互に連携して松葉調査に取り組むことによって新しい市民運動や消費者運動へと発展したところもあった。
相模原市では、産業廃棄物焼却施設をひとつ停止に追い込み、もう一つにはバグフィルターを付けさせるせることに成功した。2年間の継続調査でその成果は数値で把握することができた。また、市民の発案によるダイオキシン対策条例の制定を議会に提案した(残念ながら継続審議のあげく否決されたが)。
福岡県内の市や町では、ダイオキシンの測定分析をより有効なものとするために、「市民参加による松葉DXN調査」を議会に請願し、採択されたところもある(宗像市、前原市、三輪町、大川市、北野町、熊本県八代市など)。
柏市では、一般廃棄物焼却施設の新規立地をめぐり、市役所に松葉を使った大気中DXNのバックグランド濃度の測定を求め大きな成果を収めた。
(7)闘う市民にとって有力な証拠に
各地で頻発する廃棄物処理施設をめぐる紛争、係争に市民の手による松葉DXN調査が有力な証拠となり、裁判が前進した事例もあった。
(8)地方から国を動かす第一歩に
市民による松葉調査の成果は、現環境大臣にも届けられ、国による制度化について衆議院環境委員会で質問も行われた。国が決めたことが全て最善とは限らない。地域から一歩ずつ、市民の手でよりよい環境行政を求めて着実なあゆみを続けていくことが問われている。
最終処分場の立地が困難となり、国は益々焼却主義を強めようとしているなかで、引き続き、市民が大気中のダイオキシン濃度の監視をゆるめることのないよう、松葉ダイオキシン濃度による日本地図が描けるように、各地へにこの測定監視運動を広めて行きたい。
注)全国の濃度マップ及び詳細データについては、ホームページを参照して下さい。
URL:http://eritokyo.jp
<参考文献>
・Dioxin Bulletin & Review No.13-2, 20 August 2001、環境総合研究所
1999年度 松葉ダイオキシン分析研究報告−全国で3万人の住民・消費者が参加−
・Dioxin Bulletin & Review No.15, 10 September 2001、環境総合研究所
2000年度 松葉ダイオキシン分析研究報告−継続調査で広がる監視の輪−
・松葉調査で明らかになったダイオキシン汚染の実態 2000年度松葉ダイオキシン調査報告 グリーンコープ連合
・松葉を生物指標とした市民参加のダイオキシン全国測定調査〜1999年と2000年の調査を総括して〜、 池田こみち、環境行政改革フォーラム 2001年度総会 予稿集「公共事業と環境問題〜地方、地域からの 問題提起〜」
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