神戸新聞 2003年5月15日朝刊 |
松葉を利用して地域のダイオキシン濃度を測定する取り組みが、市民の環境運動として全国に広がっている。四年前に首都圏から始まり、これまでに延べ六万人が参加。神戸・阪神間でも生協グループが四地域で調査した。「自分たちが吸う空気は自分たちで調べる」と参加者。ゴミ問題など自らの生活を見直す機会にもなっているようだ。(岸本達也) 首都圏の生協団体が一九九九年、調査を始めたのがきっかけ。採取した松葉を民間企業の「環境総合研究所」で分析、データをもとに汚染度マップを作成し、報告会などを開く。 調査に使う松葉はクロマツの葉。同研究所によると、葉の表面にある気孔が大気中の汚染物質を蓄積しやすく、欧州でも測定の指標として使われるケースが多いという。 運動は生協から市民グループ、自治会へと広がり、四年間で約五百五十カ所を測定。予算をつけて市民に測定を依頼する自治体も出てきた。 兵庫県では、西宮市に本部のある「生協都市生活」が二〇〇〇年度から実施。地元の環境グループなどと一緒に西宮や神戸市須磨区、市内東部の山手地区などで調べた。 いずれも焼却施設の周辺や風下で採取。数値は比較的低かったが、同生協の大沼和世常任理事は「続けていくことが大事。より多くの市民の協力を得て、県全体の濃度マップを作りたい」と言う。今年は秋に明石地域で計画している。 調査には六百本の松葉が必要で、分析費用は約十四万円。同研究所副所長で「松葉ダイオキシン調査実行委員会」の池田こみち事務局長は「行政任せではなく、自らの問題として行動する意義は大きい。今後、ゴミの出し方や焼却問題へと取り組みを広げていきたい」と話している。 写真:ポートアイランド地区で松葉を採取する中校生 |