日本経済新聞 2003.3.22(土)夕刊 |
発ガン性などが指摘される猛毒の化学物質、ダイオキシンは主にごみ焼却時に発生する。大気中ほんのわずかに含まれたダイオキシンでも、土や水から食物を介して人体に取り込まれる恐れがある。
空気中の濃度自体は低いものの、その影響を考えれば決して無視できない。全国の生協や民間の研究機関「環境総合研究所」がつくった「松葉ダイオキシン調査実行委員会」では、松葉を利用してダイオキシン濃度を正確に割り出す取組みを進めている。
北海道から九州まで広く分布するクロマツの葉が、空気中の汚染物質を吸着しやすい特徴を利用。松葉のダイオキシン量から周辺の空気にどの程度のダイオキシンが含まれているのか推計する仕組みだ。空気を直接採取して濃度を測定する手法は、自治体の調査で使われるが、風の強さなどの影響を受けやすい。その点、松葉を使えば通年の平均濃度が正確に測定できるという。
同委員会では、全国の環境保護団体などから濃度調査の依頼を受けており、1999年のスタートからすでに550地域を測定。調査結果は他地域との比較や発生源の推定をつけて報告書にまとめてくれる。これまでの調査では、最高の濃度を測定した地域と最低の地域では約7倍の開きがあったと言い、人間の生活行動がダイオキシンと密接につながっている実態が改めて浮き彫りになった。
ダイオキシンの不安を解消するには国の規制強化だけでは不十分。身近な松葉からの訴えが、ごみ削減などライフスタイルを見直すきっかけにもなりそうだ。
(グローカルネイバーフッド代表 後藤浩成)
写真:集まった松葉は検査機関が入念に調べる