平成9年4月21日 衆議院環境委員会 環境影響評価法案に係わる地方公聴会陳述要旨 裁量からルールヘ 実効性と透明性のある制度づくりへ 青山 貞一 環境総合研究所所長 環境行政改革フォーラム代表幹事 |
1.代替案の明確化 (第1条、第14条等)
政府案は、環境影響評価の核心である代替案の分析についての明示的な規定がない。欧米の制度では「代替案の分析」が必須とされている。答申における複数計画の分析についての規定もなく事業アセスに後退している。法に明示的に代替案の分析に係わる規定を入れるべきである。
2.早期段階のアセスの明確化 (第2条、第4条等)
答申にあった個別事業の早期段階の環境配慮、及び欧米の先進国では常識となっている土地利用計画、全国総合開発計画、電源開発基本計画などの上位、総合、広域を対象とした計画への環境配慮、いわゆる計画アセスについての明確な規定を入れるべきである。
3.発電所以外の電源事業の対象化 (第2条、第4条等)
政府案では、発電所以外の電源開発関連事業(送電変電施設、原子力関連施設等)がアセスの対象から除外されている。ここ数年の動燃関連施設の放射能漏れ事故をみるまでもなく、放射能汚染関連施設こそ統一アセス法の対象とすべきである。
4.第三者審査の場の設置 (追 加)
答申案及び政府案は、ともに「第三者的な審査機関」が存在していない。環境庁といえど、政府の一員であることから第三者的な審査機関、組織が不可欠である。たとえば、中央環境審議会にアセス審査部会を設置し、環境庁長官が必要と認めた案件について公開審査を行うなどの方法がある。
5.事後調査規定の明確化 (第14条等)
従来のアセスは、予測、評価のしっぱなしであり、事後検証されていないことが大きな課題となっている。法案における事業着手後の調査に係わる規定は、難解であるだけでなく、義務規定化されていない。事後調査の公表規定もない。事後調査とその公表を明確に義務づけるべきである。
6.環境庁長官意見の透明性の確保 (第23条等)
答申案及び法は、環境庁の長官意見が事業者に対する最終的な環境配慮の担保手段となっている。しかし、環境庁の審査能力とともに、従来、審査をめぐる省庁間の調整経緯は一切公開されいないことが大きな課題である。長官意見に至る環境庁と他の省庁との間の審査経緯を文書として作成させ、公開することが不可欠である。近い将来、情報公開法が制定された場合にも備えるべきである。文書化を義務づけない場合、公開法の対象とならない恐れがある。
7.許認可への配慮の担保(法的統制措置の不備) (第33条等)
アセス結果を免許等に反映させるための基準及び事業者らがアセス結果を踏まえず許認可、免許を下した場合の法的統制措置が不明確である。また、第33条二における事業実施による「利益」と環境保全を併せて判断すると言う部分は、きわめて不明確なだけでなく、経済的あるいは公共的利益のもとに環境保全が配慮されない事態が生ずるおそれがある。
8.法案と地方制度の関係の明確化 (第60条、第61条)
現行条例とは別に、今後制定されるより先進的条例制定をアセス法が阻害することにならないことを明確にすべきである。分権社会化が叫ばれるおり、この法律の規定に反しないものに限るという規定は、東京都はじめ全国自治体の今後のアセス制度の改定を妨げる可能性が高い。