環境総合研究所 自主調査研究 30年間の軌跡 松葉大気中ダイオキシン関連国際学会発表論文 Presentation paper for pine needle dioxin analysis related international conference 概要、論考、論文、報告、記事、文献 主担当:池田こみち 掲載月日:2017年6月10日 独立系メディア E−wave Tokyo 無断転載禁 |
<概要> 1999年度から本格的にスタートした市民参加による松葉ダイオキシン類調査の結果を市民活動に活かすだけでなく、論文としてとりまとめ、ダイオキシン類を専門とする世界の科学者が一年に一度集まって情報交流、意見交換する場である「国際ダイオキシン会議」(正式名称は英語で :International Symposium on Halogenated Environmental Organic Pollutants and POPs)に発表することとしました。 まず、皮切りとして、1999年度の関東エリア(東京・神奈川・千葉)と中国・九州エリア(岡山・広島・山口+九州全県)、2000年度の中国・九州エリアで継続調査の2年分の結果を解析し、2001年9月に韓国の慶州で開催された「Dioxin-2001」において、以下の4本の論文を発表しました。 1.松葉中ダイオキシン類濃度と大気中ダイオキシン類濃度の 相関関係について1: 厚木基地周辺における大気の長期モニタリングと基地内の松葉の 測定結果に基づく解析。松葉と大気のダイオキシン類濃度は、同 一地点の松葉と長期の大気モニタリングの結果を分析し、対象エリ アの大気拡散シミュレーションを行い、概ね10:1であることが判明。 2.松葉中ダイオキシン類濃度と大気中ダイオキシン類濃度の 相関関係について2: 関東エリア(東京都・神奈川県・千葉県)の測定結果に基づく解析。 ここでは、行政区ごとの平均濃度を把握するための手法として、1 地域につき10〜30地点から松葉を採取し、等量ブレンドして1地域 1検体とすることの妥当性を検証。 3.松葉と大気のダイオキシン類濃度の関係について3:1999年度 と2000年度の中国・九州エリアの測定結果を用いた結果の解析 (濃度に影響を及ぼす要因について)。 本論文では、42地域(市町村)の2年間の測定結果を用いて、濃度 に影響を及ぼす要因を、松葉、発生源、気象条件などの側面から 検証。 4.松葉と大気のダイオキシン類濃度の関係について4:1999年度 と2000年度の中国・九州エリアの測定結果(同族体パターン)の 統計分析による発生源の解析。 ここでは、測定したPCDDとPCDFの同族体パターンを統計的に類 型化し、マツが影響を受けている発生源について同族体パターン から類推可能であることを検証。煙突が低く排ガス対策が不十分な 発生源の周辺、自治体が運営する煙突が高い大型焼却炉の周辺、 焼却施設はなく農薬の空中散布が行われている地域など。 これらの論文は、英文で執筆し、事前の審査を経て学会期間中に口頭及びポスターで発表します。いずれの発表でも世界各地からの参加している研究者や行政担当者らから高い関心と評価を得ることとなり、併せて日本のダイオキシン汚染の実態を世界に向けて発信する機会となりました。 その後、2004年9月にドイツ・ベルリンで開催された「Dioxin-2004」では、1999年度〜2001年度の3年間継続して調査が行われた中国・九州エリアの結果を解析し、市民参加による松葉を生物指標とした環境監視活動の成果について発表しました。 また、中国・九州エリアの6年間の継続調査が終了した2004年には同エリアの6年分の測定結果、同族体パターンを統計的に解析し、同族体パターンからわかる発生源との関係について発表しました。 また、2007年の東京大会では、ダイオキシン類だけでなく、ガス化溶融炉周辺を対象とした、松葉に含まれるPBDE(ポリ臭素化ビフェニルエーテル)の調査結果と、道路沿道の松葉を用いたPAH(多環芳香族炭化水素類)のパイロット調査結果を発表しました。 こうした調査により、焼却炉から排出される有害物質はダイオキシン類だけでなく、さまざまな未規制の有害物質が環境中に排出されていることを市民に示すことができました。 市民参加型調査によって得られたデータを学術的に解析して対外的に発表し、その成果や反応をまた市民にフィードバックすることにより、市民と研究者が連携したユニークな研究が可能となると考えています。 執筆担当:池田こみち |
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