環境総合研究所 自主調査研究 30年間の軌跡 山間地の地形を考慮した道路環境アセスメント (圏央道裏高尾編) Highway Environmental Impact Assessment on the topography of the mountains 概要、論考、論文、報告、記事、文献 主担当:鷹取敦 掲載月日:2017年6月10日 独立系メディア E−wave Tokyo 無断転載禁 |
<全体概要> 首都圏の最も外側の環状道路である圏央道(首都圏中央連絡自動車道)と、放射状の高速道路である中央自動車道を結ぶ八王子ジャンクション(JCT)計画が、八王子市の裏高尾地域に計画され、1989年に環境影響評価(環境アセスメント)が実施されました。 都心から近く多くの登山者が訪れる自然豊かで、修験道の霊山である、また植物等、固有種の存在する高尾山のふもとに計画されたJCTの計画に対して、地元住民が中心となって建設反対を表明し、建設差し止めの民事訴訟、行政訴訟等、複数の裁判を提起しました。 2001年に原告住民および原告団が、第三者の専門機関としての意見を求めて、環境総合研究所に事業者である東京都(実質的には建設省が実施)した環境影響評価書(環境アセスメントの報告書)を持って相談にみえられたので、評価書を精査したところ、多くの問題点があることが分かりました。もっとも大きな問題は、高尾山の複雑な山間部の地形を全く無視して、平坦地であることを前提として簡易化された予測モデルにより大気汚染の予測が行われていたことです。 地形、構造物、建物が存在することにより風や大気の流れ(移流・拡散)に影 響が及び、多くの場合には(道路や煙突の)周辺における大気汚染が平坦地形の場合より大幅に高濃度となります。ところが、日本では、ほとんど全ての環境アセスメントで地形を無視した簡易モデルで予測が行われています。 環境総合研究所では、裏高尾の圏央道の山間地形を考慮することのできる3次元流体モデルを用いて、大気汚染の予測計算を行い、さらには過去の大気汚染の実測値の再現性について検証を行いました。 その結果、従来の平坦地形を前提とした予測モデルでは、実際の大気汚染濃度より大幅に低くなること、地形を考慮した場合には実際の大気汚染濃度を再現でき、環境庁(当時)のマニュアルにおける再現性の条件を満たすことができることが分かりました。また、圏央道八王子JCT周辺の自然豊かな地域で、将来、 環境基準を超える可能性があることが明らかになりました。 環境総合研究所では、圏央道の事例の後、他の複数の地域で、事業者行った地形を考慮しない環境アセスメントに対して、地形を考慮した予測を第三者として実施し、その一部は裁判における証拠として採用されています。 執筆担当:鷹取敦 |
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