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   環境総合研究所
自主調査研究、30年間の軌跡


所沢ダイオキシン汚染調査
Research of Tokorozawa dioxin pollution
概要、論考、論文、報告、記事、文献

執筆主担当:青山貞一 Teiichi Aoyama
掲載月日:2017年6月10日
独立系メディア E−wave Tokyo

無断転載禁

 この原稿は未了です!!

 1990年代、所沢市、三芳町、狭山市、川越市など埼玉県西部地域に、首都圏の建設廃材などの産業廃棄物が流入し、埼玉県が多量の産業廃棄物の焼却施設の設置許可をだしたことにより、所沢市と三芳町を中心に産廃焼却によるダイオキシン類など有害化学物質、重金属類などの汚染が広がりました。

 これらの大気汚染を吸入することにより、上記地域で栽培されているほうれん草、小松菜、青梗菜などの葉物野菜、またいわゆる狭山茶がダイオキシン類により汚染されることになりました。

 環境総合研究所の青山貞一、池田こみちは、当時、所沢市航空公園近くにある環境庁の職員研修センターに講師として頻繁に行く中で、所沢市役所の職員や地域住民団体、農家などからダイオキシン汚染を危惧する声を聴くようになりました。その延長で、所沢市から自動車排ガス、産廃焼却などによる大気汚染の現状と将来についての予測調査を依頼されることになります。

 調査は、ダイオキシン類ではなく二酸化窒素などの大気汚染を対象としたものでしたが、情報開示請求などにより同報告書を入手された市議会議員や住民団体から、二酸化窒素大気汚染ではなく、主として産廃焼却施設、一般廃棄物焼却施設、下水汚泥焼却施設などの煙突から出るダイオキシン類についての現状及び将来をシミュレーションするとどうなるかを知りたいという要望が、研究所に寄せられました。

 焼却炉からの窒素酸化物については、埼玉県西部清掃事務所および所沢市などで基礎的データを整備しており、同時に排ガス濃度、排ガス量、気象データなども整備差rていましたが、ことダイオキシン類の汚染濃度をシミュレーションするためには、所沢市、三芳町、狭山市、川越市全体で60以上あった焼却炉それぞれについての排ガス濃度や現況再現として使用する大気中のダイオキシン類の環境濃度が必要となります。

 もちろん、大気汚染防止法、廃棄物処理法などにより、各焼却施設で焼却される廃棄物の時間当たりの量、排ガス量、排ガス温度、実煙突高などのデータはありましたが、肝心なダイオキシン類の排ガス濃度の測定は義務付けれいなかったのです。当時、ダイオキシン類は大気汚染防止法の指定物質ではなく、非ガス濃度、環境濃度ともに非常に限られており、地域全体の現状及び将来の汚染状況を推定するのはデータ面から非常に困難でした。事業者はダイオキシン濃度について法律なり条例の対象となっていなければ、当時そして現在でも高額な排ガス濃度を測定することはなかったのです。

 以下は、所沢市、三芳町、狭山市、川越市、大井町にある産廃焼却施設の位置と時間当たりの焼却量です。図よりわかるように、当時「産廃銀座」と呼称された所沢市、三芳町、狭山市、川越市、大井町が接する地域に多くの施設が集中していました。

図1 所沢周辺の焼却炉分布
出典:サイアス(旧科学朝日)、原典:環境総合研究所(当時、東京都品川区)

 そんな中、所沢市のある産業廃棄物処理業者がダイオキシン類の排ガス濃度を測定しており、住民団体がその排ガス濃度データの計量証明を持っていることが分かりました。その値は、100ng−TEQ/m3Nというものでした。当時も現在も世界各国の焼却炉のダイオキシン排ガス濃度の規制基準は、0.1ng−TEQ/m3Nですから、100ng−TEQ/m3Nはその1000倍と高いものでした。

 周知のように排ガス濃度は、焼却する産廃や一廃の組成、焼却温度などにより著しく異なることもあり、100ng−TEQ/m3Nというデータはあくまで参考値にすぎないことは言うまでもありません。ただし、当時の所沢市西部清掃事務所における一般廃棄焼却炉のダイオキシン排ガス濃度は、行政測定で最高で100000ng−TEQ/m3Nを超えていたこともあり、100ng−TEQ/m3Nはそれほど高い、あるいは低い値ではないと思われました。

 以下は、所沢市の土地利用図(上)と廃棄物処分場による環境汚染濃度図です。汚染図では、 産廃焼却炉のダイオキシン排ガス濃度を100ng−TEQ/m3Nとした場合の年間を通じての所沢市とその周辺自治体のダイオキシン排ガス濃度です。年間を通じてみると、すなわち年平均値では、分布図中赤、橙色部分が非常に高濃度トンることが分かります。


出典:環境総合研究所(当時、東京都品川区)