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2001/6/8掲載
国土交通省との「道路管理に影響及ぼさず」覚書が問題に。
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環境省の自動車NOx法改定案が今月1日、参議院本会議で原案通り全会派の賛成で可決され衆院に送付された。しかし前日の参院環境委員会(共産党・吉川春子委員長)では、法案の趣旨が「道路管理に対して影響を与えることを想定していない」などと確約した環境省環境管理局長と国土交通省道路局の担当課長レベルの「覚書」をめぐり審議が紛糾。30分ほどの中断をはさみ川口順子環境省が「法案の趣旨や国会答弁に反する覚書は破棄する」と答弁して、ようやく収拾される一幕もあった。結局、法案は原案通り可決されたものの(民主と共産が各修正案を提出→否決→原案に賛成)、衆院の審議でもひと波瀾ありそうだ。
また、法案の閣議決定を前に省庁間で覚書を交わす慣例は根強く残っているが、情報公開法の施行により、こうした役所間の慣行も問われることになりそうだ。
自動車NOx法改定案は3月に閣議決定→国会提出され、参院に付託、首相交代前の4月に趣旨説明がなされていた。実質審議は、新内閣発足の手続きもあって中断、先週29日に質疑が始まった。
法案審議での論点は、現行法が環境基準達成に繋がらなかったことを踏まえた改正案の実効性で、自治体の独自策への配慮や総量削減削減計画等の策定手続きの透明性などがただされた。これらは資料1のような附帯決議につながった。また国会質疑では、法施行後5年間は経年的な環境基準達成のチェックを行い、未達成の場合はさらなる法改正を行うことも確認された。
問題となったのは、国土交通省道路局の路政課長、地方道、環境課長と環境省自動車環境対策課長との覚書。これらは、参院の調査室が審議前に作成した同法案の参考資料集に収録されていた(資料2参照).覚書の相手先は警察庁、経済産業省、国土交通省、総務省の各局長級、課長級で、すべて閣議決定(3月6日)直前の3月2日にかわされていた。31日に参考人として発言した青山貞一環境総合研究所所長が「道路管理に環境省が口を出せないと法律が骨抜きになる」などと問題提起、その後の質疑で野党が追及した。
同覚書に対しては民主党(福山哲郎議員)だけでなく、社民党(清水澄子議員)、共産党(岩佐恵美議員)などからも強い批判が出された。それを集約すると、(1)現行法がうまくいかなかった原因が自動車走行量の増加といっているのに、道路管理に環境保全の観点からものがいえなくなると実効性があがらない、(2)法案が国会に提出される前に省庁間で法案内容に影響するような確約ができあがると国会審議の意味がなくなる、などというもの。
ところで、環境省は破棄すると言明した覚書の範囲についてはまだ明確にしていない。記者会見などの説明では資料2のうち(3)の破棄は言明したが、(1),(2)については「含むかもしれない」(石野耕也自動車環境対策課長)とあいまいな表現。また「覚書全般を破棄するわけでもない」ともしており、衆院の審議では、破棄する対象範囲を含めた覚書に対する再追求がなされることは必至だ。
(参考)
1. 大都市地域のNOx・SPM等の環境改善が遅れ、依然として深刻な状況にあることを反省し、できるだけ早期に環境基準が達成できるよう最善を尽くす。そのため、本法に基づく施策の進行管理を行い、必要に応じ法改正を含めた対策の見直しを行う。
2. 大都市地域での環境基準未達成の原因は自動車走行量の増加等にあることから、自動車交通量を抑制し、道路に係る環境保全対策の抜本的見直しに取り組む。 3. 地方自治体が当該地域の実情に応じて実施している自動車公害対策を十分尊重する。 4. 対策地域の設定にあたっては、関係都道府県の意見を十分に踏まえ、車種規制等の対策効果が十分に発揮できるよう、できるだけ広域的に指定を行う。 5. 対策地域内へ流入するディーゼル自動車対策についての検討を行い、必要に応じて規制措置を講ずる。
(1) 事業者の計画策定・提出等について・・・本改正法の15〜18条において、道路管理に関して影響を与えることが実施 されることは、現行法と同様、想定し得ないこと。また、環境省は国土交通省が行う道路管理に支障を及ぼすことがないよう、本改正法運用にあたる。
(2) 知事の事業者への指導・助言について・・・環境省は、法16条に規定する都道府県知事による指導・助言が、道路管理に関して影響を与えるものとは考えていないこと。環境省は、本法の施行に当たり、都道府県に対する説明会を行う際には、@上記趣旨、A指導・助言が道路管理に支障を及ぼす恐れがある場合には、事前に道路管理者に相談することが望ましいこと −−について説明する。 (3) 環境大臣・知事の資料請求関係・・・法24条1項の環境大臣が自治体の長に請求できる「必要な資料」「説明」には、環境影響評価に関する資料など個別・具体の道路事業に係るものは想定されない。
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