埼玉県主導 「彩の国資源循環工場」 がもたらすリスク 池田こみち 掲載日:2006年6月22日 |
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本コラムでも言及してきたが、神奈川県山北町に計画されていた一大廃棄物処理施設整備計画「エコループ・プロジェクト」は、地元、山北町町長が2005年9月に「立地候補地としての検討を進めていくことを断念した」と発表したことを受け、白紙に戻った。 同事業は元環境庁事務次官そして神奈川県知事の岡崎洋氏が社長を務める「株式会社エコループ」が事業主体として計画を進めてきたが、地元を中心に反対運動が起こり、TBSの日曜午後の番組でも詳報された結果、候補地である山北町の同意が得られず、最終的に会社も解散を余儀なくされた。 完全撤退であり、完敗である。 それに対して、埼玉県の寄居町と小川町の境に計画され進められてきた「彩の国資源循環工場」は、内容的には神奈川県山北町を舞台に進められようとしたエコループプロジェクトとほぼ同じであるにもかかわらず、この6月17日、計画通りに完成し埼玉県知事も参加しての竣工式が賑々しく執り行われたという。 まさに、明暗を分けた格好だ。 エコループは事業主体が民間企業であり、かつ社長が元神奈川県知事・環境庁事務次官であったことからも話題となり、注目を集めたが、「彩の国資源循環工場」は埼玉県が肝いりで進めてきたいわば公的な事業として大きな抵抗や批判もなく着々と進められてきた感は否めない。 どのような事業なのか、まずは、その概要を簡単に紹介しよう。 詳細は埼玉県のWebサイト 「彩の国資源循環工場」をご覧頂きたい。
埼玉県は、同施設は、公共関与による全国初めての総合的「資源循環型モデル施設」であり、多くの先進性(http://www.pref.saitama.lg.jp/A09/BC01/jyunkan/sensin.html)があると自負している。それを受けて、地元自治体やマスコミ各社も完成を祝っているかに見える。 ところで、総合的資源循環型モデル施設とは一体何を指すのかといえば、上記のように、民間リサイクル施設(借地事業者)、PFIサーマルリサイクル施設(PFI事業者)、県営最終処分場(環境整備センター)、県と民間の研究施設などであり、確かに一部には、生ごみを堆肥化するといった「資源循環施設」も含まれるが、廃棄物発電や廃プラ固形燃料製造、焼却灰から人工砂、蛍光管から水銀回収など「資源循環」の名の下に相当危険を伴い、かつ資源循環かどうかも疑わしいプラントが集中立地して稼働することになる。果たして、これらの施設がフル稼働した時の環境影響はどこまで検証されているのだろうか。 埼玉県は平成14年3月、「埼玉県戦略的環境影響評価実施要綱」を制定しており、この事業についても「戦略的環境影響評価」が行われたが、その内容はおよそ「戦略的」というには程遠い内容であったことは、報告書を見れば一目瞭然である。筆者は同戦略的アセスメントの内容について、埼玉県に意見書を提出した経緯がある。 ◆埼玉県環境影響評価技術審議会委員名簿 ◆埼玉県戦略的環境影響評価技術委員会 寄居町・小川町といえば、「埼玉県の北西部、都心から70km圏に位置し、荒川の清流が秩父の山間から関東平野に流れ出す扇状地の要に発達した、山美しく水清らかな町」であり、都会に農作物と清浄な空気を供給するエリアでもある。地元住民の中には「資源循環型工場」の本格稼働に伴う環境影響を心配する人々も多く、稼働前の大気の状況などについて、松葉を使って地道に調査している。 今後、この施設に対して、どのような体制で環境監視、操業監視が行われるのか監視していく必要がある。 PFI制度は従来公共部門が提供していた公共サービスを民間主導で実施し民間のノウハウを活用することで、効率的な公共サービスの提供を図る事業手法として、2000年以降盛んに進められている。 しかし、まだまだ 日本のPFI制度は本家イギリスの制度と異なり、制度的にも未成熟であり、課題も多い。 事業者はどのように選定されたのか、公共施設としての管理はどのように行われるのか、税制・財政面のメリット、デメリットはどうなっているのか、などの課題に加え、なんと言っても複数事業が稼働した場合の総合的累積的な環境影響など、だれが責任を持って適切にアセスメントを行い、後々までその責任を負うのかである。また先の仙台地震の際、PFIで設置、運営していた総合プールの天井が大規模に崩落した際の責任体制など、課題が山積している。 このプロジェクトは、「資源循環」をハード依存で推進しようとする日本の体質を顕著に表した事業であることは間違いない。埼玉県の事業としてみるのではなく、日本の将来を占う事業として是非引き続き注目していきたい。 |