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環境省は、去る2011年10月7日、全国の都道府県廃棄物担当責任者に対して一通の事務連絡を行った。その内容は「東日本大震災により生じた災害廃棄物の受入検討状況調査について」となっており、10月21日(金)17:00までに回答するように求めていた。別紙調査要領には、検討状況の回答として以下の3つの選択肢が記載されている。市町村の意向を都道府県がとりまとめて環境省に回答するように、という国からの依頼である。
環境省の担当者によれば、受入可能なところは協力して欲しいという趣旨だったとのことだが、この文書が出回ることによって住民から大きな反発を受け、環境省の信頼をさらに落とすことになったことは間違いない。 しかし、実際のところ、自治体が住民に黙って災害廃棄物の受入を決定することなど出来るはずもなく、自治体によっては選択肢を追加し、D:受入困難、住民の理解が得られない、などと回答したところも多いと聞いている。 さて、このような災害廃棄物広域処理促進のきっかけとなったのが、東京都のがれき処理受入決定の動きである。石原都知事は岩手県の達増知事の依頼を受け、9月30日に岩手県知事と協定を結び、岩手県宮古市の災害廃棄物を鉄道で都内に運搬し、中間処理(破砕・分別・焼却)及び最終処分を行うことを発表した。 平成23年10月19日東京都環境局発表によれば、岩手県宮古市の災害廃棄物について、
これらの事業者は、破砕と分別の中間処理が主な業務となり、分別により発生した可燃性廃棄物の焼却処理の委託先の選定は「募集要領に示された要件を満たした焼却施設」を受託した事業者が選定することになっていた。そして全ての業者が「東京臨海リサイクルパワー株式会社」(江東区青海3丁目地先)を選定した、と発表されている。ちなみに東京臨海リサイクルパワー株式会社は要件を満たす唯一の委託先(焼却施設)である。 なお、焼却されて生じた焼却灰などの焼却残渣は、東京都の最終処分場、すなわち東京湾中央防波堤沖廃棄物最終処分場に埋立処分することとなっている。(図参照) 災害廃棄物処理フロー(岩手県宮古市先行事業分)事業者に焼却施設として「選定」された、東京臨海リサイクルパワー株式会社は東京電力株式会社を筆頭株主とする民間5社が出資し、東京都のスーパーエコタウン事業を推進するために設立した会社である。まさに、東電の引き起こした福島第一原発の事故で資金難となっている東電を側面から応援するかのような仕組みと言われても仕方がない。 東京都は今回の岩手県宮古市の災害廃棄物の処理を皮切りに、今後宮城県内の災害廃棄物の処理にも協力する意向を示している。 災害廃棄物(がれき)の放射性物質による汚染については、搬出前に現地において災害廃棄物に含まれる放射能の分析や放射線量率などを測定し、十分に低いこと(東京都の廃棄物と変わらない程度)が確認されているとのことだが、現在は東京都の廃棄物そのものが放射性物質で汚染されて焼却灰等に高濃度に濃縮されて問題になっている事態である。このまま進めば焼却残渣に濃縮される放射能はいつまでたっても下がることはなく、東京湾への埋立が将来的に影響を及ぼさないのか危惧されるところである。 また、東京臨海リサイクルパワー株式会社が立地する東京湾臨海部には大規模な焼却炉が多数立地していることもあり、排ガス中の有害物質、放射性物質の影響も長期的には心配である。 |