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除染の効果と処理方法については
慎重な検討が必要

池田こみち  
環境総合研究所副所長

掲載月日:2011年12月8日
 独立系メディア E−wave


 放射性物質汚染対処特措法の来年1月の全面施行に向け、国は福島県内の警戒区域と計画的避難区域で、効果的な除染方法を探る除染モデル実証事業が始めている。政府は、福島県の警戒区域と計画的避難区域にある4つの町と村の役場の、陸上自衛隊による除染作業を、明日12月7日から始めることを確認した。

 また、放射性物質の除染に関する関係閣僚会合が、12月6日朝開かれ、この中で、藤村官房長官は、「今年度の第3次補正予算の成立などで、およそ4600億円が確保でき、除染を加速させる条件が整いつつある。除染を進めるよう求める住民の声も高まっており本格的な除染のステップを着実に進めてもらいたい」(NHKニュース)と述べている。

 除染作業をする人手とお金が仮に整っても、高圧水洗浄で洗い流した放射性物質や重機で剥ぎ取った土壌中の放射性物質はいったいどこに処分しようというのか。
処分先や処分方法が決まらないままでは、つぎ込んだ人手と予算が無駄になる可能性もある。

 専門家の検討が行われていると言うが、「ドラム缶に入れて海に投棄するのが最も合理的」と政府に提言しようとしている研究者がいるという。「腐食しないで高圧に耐える容器」とのことだが、これまでの諸外国の調査などをみれば、海底に投棄された放射性物質の入ったドラム缶が腐食し流出して海洋生物や海洋生態系を汚染していることは明らかとなっている。

 フランスのテレビ番組「終わらない悪夢」では、海底に投棄された放射性廃棄物が入ったドラム缶の現状をグリーンピースが海底にもぐって調査した様子が映し出されている。海底に投棄されたドラム缶は朽ち果て、放射性物質が流出し、食物連鎖の中に取り込まれていく。壊れたドラム缶にはウナギなどが生息していた。

■フランスのテレビ番組「終わらない悪夢」(テキスト前編)
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp123..html

 「世論や国際社会の反発は必至」との見方がある中で敢えて、こうした提案をしようというのだから、よほど除染された放射性物質の処分先の検討が行き詰まっていると見るのが妥当だろう。

 福島県内では、土壌中の放射性物質濃度が冬場になって高くなってきているという報告もある。山の木々が葉を落とし、その上を流れた雨がまた山から放射性物質を里に運んでいるという状況は明らかで、除染の効果や処分先も定まらないまま、先の見えない作業を続けることには疑問を感じざるを得ない。

 除染作業によって放射性物質が拡散したり不安定な状態に置かれることだけは避けなければならない。

■朝日新聞:除染で出た汚染土、海へ投棄案 研究者が提唱
http://www.asahi.com/national/update/1204/TKY201112040327.html

 東京電力福島第一原発の事故で放射能に汚染された土を海に捨てる案が、一部の研究者の間で浮上している。除染のために削り取った土の保管・処分場所を確保することが難しいからだ。世論や国際社会の反発は必至だが、現実的な対応策の一つとして政府への提言を目指す。

 除染は、被曝(ひばく)線量が年1ミリシーベルト以上の地域は国の責任で行う。土壌を削り取り、各市町村の仮置き場に保管した後、福島県内につくる中間貯蔵施設に運ぶ方針だ。県内だけで1500万〜3100万立方メートルの汚染土が出る見込み。最終処分の方法が決まらなければ恒久的に置かれることになりかねず、用地確保の見通しは立っていない。

 こうした現状を踏まえ、文部科学省の土壌汚染マップ作成に携わった大阪大核物理研究センターの谷畑勇夫教授、中井浩二・元東京理科大教授らのグループが3日、大阪大で開かれた研究会で、深海への処分を提案した。海水で腐食せず高い水圧に耐えられる容器に汚染土を入れ、日本近海の水深2千メートル以下に沈める方法が最適とした。