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2008年11月、愛犬を「保健所に処分された」ことを逆恨みして元厚生労働省次官らを殺傷するという事件が起き、社会全体が慄然としたことは記憶に新しい。この事件を受けて、動物愛護管理法を所管する環境大臣(斉藤鉄夫氏)は次のように述べている。「犬や猫の殺処分はこの20年でずいぶん減ってきている。できるだけ飼い主が見つかって愛情を持って飼育されるよう努力をしてきている。今回の事件で(方針に)何ら躊躇や変更はない」と。
環境省によると、1974年度(昭和49年度)に約120万匹だった犬猫の殺処分数は、2006年度(平成18年度)は約34万匹にまで減少しているので、仕事ぶりを評価して欲しいとでも言いたいのだろう。100万匹を超える殺処分はとんでもないが、34万匹は決して少ない数とは言えない。 みやざき市民オンブズマンは、犬猫の殺処分数を一定頭数維持することが宮崎県の動物管理センターの利権となっていることを指摘している。保護された犬猫の保護者が名乗り出ても返却されずに殺処分されたり、里親斡旋できそうな子犬を持ち込まれた翌日に殺処分するといった暴挙が続いている実態を見るにつけ、動物愛護後進国日本の実態がいかに酷いか、を思い知らされる。(告発状を参照のこと) 現代の日本社会は、高齢化、少子化などとも相まってペットの数が増加し、空前のペットブームとなっている。犬や猫ばかりでなく、野生動物を含めて多くの動物が愛玩用に飼育されているのである。 その陰で、ブランド犬、ブランド猫などが高額でペットショップに並び、ブリーダーの数も増えている。高額で売れる間は、流行の犬種や猫は無理な繁殖が繰り返され、ひとたびブームが去ると今度は一転して「売れない商品」となって処分のために動物管理センターに持ち込まれることも多いという。 今年になって、環境省は犬猫の殺処分数を2017年度(平成29年度)までに半減させることを目的に、2009年度から、飼い主のいない犬や猫を収容する施設(全国約400カ所)の新築や改修を後押しする事業を始めることを発表した。また、少し前には、マイクロチップを動物に埋め込んで保護施設に収容された際に、買い主が特定できるようにという対策も打ち出した。 しかし、本質的な問題は解決されないまま、毎年、30万匹以上の犬や猫たちが殺処分されているのが実態だ。殺処分数が減らないのは受け入れ施設の老朽化や不足が原因ではないことを直視しなければならない。 本気で殺処分される犬や猫を減らしたいのであれば、まず最初にやるべきことは、収容施設の新設や改修、マイクロチップの普及などではなく、ペットの販売規制やブリーダーの規制ではないだろうか。 入り口の規制をせずに、出口のハードを整備しても無意味である。 人の心や体を癒してくれる犬や猫を商品としてペットショップで販売するのではなく、しっかりとした犬、猫の管理プログラムのもとで法的にも科学的にも倫理的にも適正な繁殖、譲渡、飼育を行い、必要とする人々に手渡していく必要がある。そのためには、子供から大人まで、動物愛護に対する教育が不可欠である。 動物愛護先進国のイギリスでの取り組みに学ぶところも多い。 界動物保護協会(WSPA)は世界91ヶ国に400以上の加盟団体のネットワークを有する国際組織として、犬や猫の本来の管理のあり方について広く普及啓発活動を展開している。改めて犬や猫とどう付き合い、どう管理していくことが望ましいのか、この機会に学びたいものである。 WSPAの動物管理プログラムを紹介しているみやざき市民オンブズマン のサイト http://www.miyazaki-ombuds2.org |