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日本ではすでにダイオキシン問題は終わったかのように言われて久しいが、今週は全米の環境問題、医療問題に取り組むNGO、NPOにとって大きな節目となる発表があり、大いに盛り上がった。 それは、日本ではすでに常識と考えられているダイオキシン類による発ガン性以外の健康影響がようやく米国環境保護庁(以下、EPAと略)によって評価され報告書が発表されたことに起因している。 米国EPAはこれまでダイオキシンのリスクとして、発ガン性(癌の誘発と癌への変異)を最も重視し、それ以外の健康影響には明確に認めていなかった。 27年の永きにわたり、多くの市民、市民団体が闘いを続けてきたが、化学工業界の強力なロビー活動により市民の訴えは阻まれてきたのだ。 そのため、2012年2月17日のEPAの発表は、まさに彼ら活動家たちにとっての「闘いの勝利」であり、大いに盛り上がり、全世界の仲間たちに情報が伝達された。 ◆EPAの関連サイト EPA’s Reanalysis of Key Issues Related to Dioxin Toxicity and Response to NAS Comments, Volume 1 EPA長官のリサ・P・ジャクソンさん EPA長官 リサ・ジャクソンさん ワシントンDCのEPAにて 2010年6月
これにより、ますますダイオキシンの低濃度曝露による多面的な健康被害が大きな問題になると思われる。 そんな中日本では依然として焼却主義が蔓延しているという状況を見るに付け、市民の意識の低下、市民活動の盛り上がりの欠如に忸怩たる思いがある。 以下、簡単に国際POPS低減ネットワーク(IPEN)のダイオキシンWGのMLに送られてきた報告を翻訳したので報告しておきたい。 翻訳は一部意訳となっていることをご承知の上ご覧いただきたい。 池田こみち 池田こみち at 米国環境保護庁(EPA) ワシントンDCのEPAにて 2010年6月 CHEJ:Center for Health, Environment and Justice Big news! EPA Health Report on Dioxin Released After Twenty Seven Years of Delays 27年の遅れの後、ようやく米国EPAによるダイオキシンについての健康影響に関する報告書が発表された。このレポートでは、ダイオキシンの有害性について、多くの深刻な慢性的な健康影響に言及しており、学習障害、不妊、先天的欠損症、および糖尿病なども含まれている。 この問題について長年運動を行ってきた市民グループや支持者たちは、ダイオキシンの健康影響に関する報告書を発表したEPA長官ジャクソンに拍手を送っている。そして、EPAに対して、ダイオキシン類の暴露されているアメリカ国民を守るための包括的な行動計画を開発するよう改めて求めている。 (フォールズチャーチ、バージニア州) 今日(2月17日)は米国環境保護庁(EPA)は、最終的にダイオキシンによる癌以外の健康影響に関する重要な報告書を発表した。 これは、これまで27年間、化学工業界の反対によって先延ばしにされてきたものである。 全国の環境と健康問題の市民グループは、この報告書の発表は重要かつ大きな節目であると歓迎している。 「我々は、地球上で最も有害な化学物質のひとつであるダイオキシン類について今回の重要な健康に関する報告書を完成させ発表したことについて、EPA長官リサ・ジャクソンとオバマ政権を称賛する。」と健康・環境と正義センター(CHEJ)の代表であるロイス・マリー・ギブス氏は語った。 27年間の遅れの後、今日、この報告書が日の目を見るとは、私は正直思ってもみなかった。数十年にわたってドアを閉め、ダイオキシンの危険性を隠蔽・歪曲してきた化学工業界に対して、アメリカ国民が勝利した記念すべき日である。 ダイオキシンは私たちの子供の健康と成長にとって有毒であることは科学的に明らかなのだ。 我々はEPAに対してダイオキシンと癌についての彼らの見解の検討を終えたことと、そして、一層、ダイオキシンの排出と曝露をへらすための包括的行動計画を開発することを強く求める。 これを始めるためには、EPAは、2010年以来、ホワイトハウスのOMB(Office of Management and Budget) において、なかなか進まなかったEPAが提案しているダイオキシン類についての浄化基準(クリーンアップ基準)を完成させる必要がある。 我々は、食糧に含まれるダイオキシンのレベルを低下させる革新的な政策を開発するため、食品中のダイオキシン類に関する有名な米国科学アカデミーの報告書のチリを払うようにオバマ政権に求める。 ダイオキシン類は食品を通じて我々の体内に蓄積される。EPAによれば人の体内に摂取され曝露されるダイオキシン類の90%は食品を経由して摂取される。ダイオキシンは肉類、魚類、乳製品の他脂肪分の多い食品の多く含まれる。 EPAは、環境、保健、環境正義、労働、健康影響、ベトナム退役軍人などさまざまな組織団体から癌以外の健康評価について報告を行うように、オバマ大統領はオフィスに入って数週間つい先日まで圧力を受けていた。 1月には、EPA長官であるジャクソンに2000を超える団体個人の署名が届けられた。この数ヶ月間、たくさんの団体が連携し、EPAに対して報告書を提出させるように求めてきた。 この中には、乳癌基金、健康・環境・正義センター、 子宮内膜症協会、環境防衛基金、グリーンピース、IPEN、米国退役軍人・会、シエラクラブ、・・・・・など多数の団体、NPO、NGOが含まれる。 (参加団体名) Breast Cancer Fund Center for Health, Environment & Justice (CHEJ) Endometriosis Association Environmental Defense Fund Greenpeace International Brotherhood of Teamsters National Medical Association Natural Resources Defense Council (NRDC) Sierra Club, Vietnam Veterans of America Alaska Community Action on Toxics Canadian Environmental Law Association Clean Water Action Ecology Center Edison Wetlands Association Environmental Working Group Global Alliance for Incinerator Alternatives Healthy Child Healthy World Institute for Agriculture and Trade Policy International POPS Elimination Network (IPEN) Ironbound Community Corporation Kentucky Environmental Foundation the Lone Tree Council National Asian Pacific American Women's Forum Physicians for Social Responsibility Reproductive Health Technologies Project Science & Environmental Health Network The Endocrine Disruption Exchange Union of Concerned Scientists Vietnam Agent Orange Relief & Responsibility Campaign Women's Voices for the Earth.
2011年1月、下院議員のEd Markey(天然資源委員会(NRDC)のメンバーであり、また、エネルギー・商務委員会のメンバーでもある)はEPAに対してダイオキシンの評価報告書を終結させるように求める手紙を出した。 4月には下院議員マーキーと72名の議員がEPAに対して要望書を提出していた。 ダイオキシンはヒトに対する発ガン性を有していることがよく知られている。しかし、ダイオキシンはまた、広い範囲の癌以外の影響を及ぼす。 例えば、ヒトや動物の妊娠・出産、発達成長、免疫、環境ホルモンとしての生体への毒性や障害などである。 動物実験では、ダイオキシンへの曝露が子宮内膜症と密接な関係があり、妊娠が減少していること、妊娠の維持が困難となること、男性ホルモンレベルを下げること、精子の数の減少、知能指数(IQ)にも影響を及ぼすこと、精神運動系や神経系の発達を送らせ、多動症などの行動異常を引き起すことが明らとなっている。 労働者についての研究では、枯れ葉剤(オレンジ剤)を浴びたベトナム帰還兵の子どもの出産異常(先天性欠損症)、男性ホルモンの機能低下、睾丸(精巣)の萎縮などが報告されている。 ダイオキシンの発達途中の機関(組織)に対する免疫機能への影響は最も敏感で先端的な研究の一つである。ヒトの研究では、ダイオキシン類は、免疫系の抑制と感染症の増加につながる免疫状態の変化と関連していた。 ダイオキシンはまた、身体の成長と抑制のために使用するホルモンや遺伝学的伝達物質の正常な機能を混乱させる。ダイオキシンは、幼児や成人の甲状腺レベルを妨げるを変化させ、耐糖能、や糖尿病にも影響を及ぼす。 健康・環境・正義(CHEJ)は、 食品中のダイオキシンについて、予想される懸念に対して、食品中のダイオキシンへの曝露を減らすための上位6つのヒントを提案している。 1。動物性脂肪を食べる量を減らすこと。赤身の肉や家禽を購入、調理しる前に脂肪を切り落とす。 2。無脂肪の乳製品を食べるまたは、またはできるだけ低い脂肪のものを選ぶ。牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品は避ける。 3。 魚は健康食品の選択肢のひとつであるが、魚も影響を受けている - 脂肪を含む魚(例・ばサーモンなど)を避けるために、調理前に脂肪を切りとってから食べる。 4。穀物や牧草飼育されている食品を購入する。農場の家畜で・動物の脂肪を含む・飼料、 動物飼育フードを与えられているものはダイオキシン濃度が増加しているため、消費者が購入する食肉・食品のダイオキシンの量も増加している。 5。より多くの果物や野菜を食べる。 6。母乳で育てる - 母乳は依然として赤ん坊にとって最も健康的な食品である EPAによれば、2009-2010年の間にダイオキシンの排出量は全国で18%増加しているという。大気中への排出は10%増加している。 2010年で最も排出量の多かった企業は、ダウケミカル社、ミズーリケミカルワークス、....である。 Missouri Chemical Works, Gerdau Ameristeel, Lehigh Southwest Cement, Formosa Plastics Corporation, Temple-Inland, Cahaba Pressure Treated Forest Products, and Clean Harbors Aragonite. これらの中の3つの施設は、ポリ塩化ビニールを製造している工場である。 市町村の廃棄物焼却炉、医療系廃棄物焼却炉、埋め立て地での火災、裏庭での藁の野焼などがアメリカにおける主なダイオキシンの発生源である。 以上 速報 池田こみち 環境総合研究所 |