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本特集では、2009年2月13日(金)から15日(日)に行った武蔵工業大学環境情報学部(この4月より東京都市大学環境情報学部)の青山研究室と株式会社環境総合研究所による合同沖縄県現地調査についてその概要を報告する。 産業廃棄物の安定型最終処分場は、稼働中も埋立終了後も、全国各地で様々な環境問題を引き起こしている。沖縄県読谷村では、長年にわたり広大な敷地が埋立処分場となっており、地下水の汚染や悪臭などによる汚染が周辺住民に不安を与えてきた。 環境総合研究所(ERI)は、地元住民の依頼により同処分場内で採取した水試料から高濃度のクロルデンやヒ素が検出されたことを受け、県の指導監督、検査などのあり方についても問題点を指摘してきた。 沖縄県にみる産廃安定型最終処分場の課題 http://eritokyo.jp/independent/ikeda-col0606.html 沖縄県は原因追求と対策を産廃処分場クロルデン検出 http://eritokyo.jp/independent/ikeda-col1004.html 地元住民の強い反対、要望を受け、沖縄県は、住民立ち会いの下で処分場内の大規模な調査を行い、このほど、その結果を受けて産廃業者に対して改善命令を出した。 グーグルアースで見た読谷村の安定型最終処分場 沖縄県読谷村にある安定型最終処分場左が沖広産業、右が森岡の 議業者が運用している。 出典:NHKより 埋め立てた廃棄物をユンボで掘り起こしている様子を映した映像を見たところ、まるで温泉でも掘り当てたように地中から湯気があがり、作業者や立ち会っている地元の方々が悪臭に顔をしかめている様子も見られた。 案の定、安定型処分場には埋め立てることができない木くずなどの有機物が大量に投棄されており、有害なガスが発生していることが明らかとなったのである。 沖縄県読谷村の安定型最終処分場 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 こうした県による大規模な調査はそれに先だって住民が行った調査がきっかけとなってようやく実施されることになったものであり、本来、日常的に指導監視を徹底していなかった県の責任が問われなければならない。 しかし、肝心のクロルデンなど有害化学物質については、まだ分析結果が揃わないとして、沖縄県はその原因や対策を明らかにしていない。 木くずなどが大量に処分されているとすれば、シロアリ駆除剤などが塗布された木材がそのまま埋め立てられている可能性も高く、処分場内のクロルデン濃度はかなり高濃度となっても不思議はない。そもそもクロルデンについては、廃棄物処分場の維持管理基準項目にもふくまれておらず、何の管理も監視も行われていないのが実態だ。 沖縄県読谷村の安定型最終処分場の廃棄物処理法に基づく告知 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 沖縄県読谷村の安定型最終処分場の廃棄物処理法に基づく告知 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 安定型処分場の「始末」をどうつけていくのか、まさに次世代に残された膨大な負の遺産である。一部の熱心な地元住民の意識や行動に依存しているだけでは問題の解決は不可能である。これ以上負の遺産を増やさないための抜本的な法制度の見直しが必要である。 写真は、2009年2月13日に現場を視察した際に撮影したものである。幹線道路から入ってすぐのところにある広大な敷地がすでに産廃で埋め立てられている。高台には学校もあり、周辺には住宅も広がっている。 沖縄県読谷村の安定型最終処分場 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 沖縄県読谷村の安定型最終処分場 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10 事業者は、新たに管理型処分場の建設を行うための許可申請をしたとのことだが、果たして処分場の実態を知った住民がそれを受け入れるかどうか、これからが正念場である。現場周辺には反対の立て看板も多く見られた。 処分場内は、整然と片付けられ、一見、適正に維持管理、運用されているように見えるが、その実態は地元にとって到底受け入れることのできない汚染の巣窟となっていることが明るみとなったのである。県の責任ある対応が今後注目されることとなる。 沖縄タイムス 2009.2.14(土)朝刊総合2面
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