次に石垣島の公共事業について見てみましょう。私たちは3月22日の午前中、白保海岸を視察した後、その北にあります新石垣空港の建設現場に向かいました。
■新石垣空港事業
この狭い日本に民間空港は現在98箇所もあり、最近出来た静岡空港、茨城空港はもとより、多くの空港が予測時の乗降客数を大幅に下回り、赤字経営となることが連日のように報道されています。
今後、JALが経営難から多くの地方空港への離発着をとりやめることも現実のものとなっています。
そんな中、既存空港の滑走路が短く、東京などからの直行便が降りれないとして、沖縄県や石垣市はかなり前から新空港の立地計画をコンサルタントの委託して練っていました。
しかし、当初の計画の最終候補地が世界的なサンゴの宝庫でもあります白保海岸を埋め立てる案であったため、一大反対運動が起こりました。
白保立地案は最終的に一旦、白紙に戻りました。
しかし、その後もの新石垣空港の建設予定地は二転三転しました。
、現空港の拡張を求める声もありました。しかし、現空港の周囲や滑走路の先には国指定遺跡や市街地があり、立退き費用などを考えると滑走路延長は困難という声もあったそうです。
2000年になり、下図にあります石垣島東部の海沿いの陸地に新空港を立地する計画が策定されました。
2000年3月、専門家の集まる位置選定委員会により、@カーラ岳の東側案、A宮良牧中案など複数の候補地の中からカーラ岳陸上案が選定されました。
最終計画案は白保集落の北部に空港を立地するため、海上の埋め立ては伴わない案とされていますが、沖縄県の資料にあるように下図にあるように滑走路の先端はサンゴの海近くに接近しています。
出典:沖縄県資料
さらに下は「見学台」の建屋に置いてあった空港の模型です。右側が滑走路の北端ですが、北端は白保の延長にあるサンゴの海に近接していることが分かります。
ちなみに下の模型にはカーラ岳はありませんでした。
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 22 March 2010
青山さんも理事をなさっている環境アセス学会では、当時、有志がこの新石垣空港の環境アセスに環境保全の観点からさまざまな意見を出し、側面から環境保全に留意するよう支援してきた経緯もあります。
そんなこともあり、青山さんにとっては昨年の現地視察に引き続き工事中の新石垣空港の現場を視察、監視することもひとつの大きな目的となっていました。
見学台にて
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 22 March 2010
下は現場の「見学台」から見た昨年の滑走路の工事現場です。この工事現場は滑走路のほぼ中央部にあります。写真から分かるように、滑走路の位置は海浜は非常に近く、盛り切り、覆土などによって土砂が海に流れこまないとはません。
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26
下は昨年、青山さんがカーラ岳の麓から撮影した滑走路北端の工事現場です。ココでもすぐ隣が海であることが分かります。
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26
下の写真の告知板では、空港建設に伴い赤土が海に流れでることに関連し流出防止条例に係わる表示を掲示していますが、空港の北端はサンゴ礁がある海に近いこともあり、赤土が海に流出することを防止するのは容易ではないことが分かりました。
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26
下の写真は海側の法面工事の現場。むき出しになった赤土をどう処理できるかが重要なポイントとなります。しかし、降雨による表土の流出以外に、盛り切りしたことによって土が構造的に流出しやすくなっていることも看過できません。
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26
以上は昨年の青山さんの現地視察の報告概要です。
下の写真は今年、「見学台」から見た滑走路やターミナルビル付近の工事現場です。やはり土砂の海への流失の懸念はぬぐいされません。
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 22 March 2010
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 22 March 2010
新空港のもうひとつの大きな課題は、滑走路の北端がカーラ岳に近接することです。そのため航空法で制限される高さに抵触し、カーラ岳を切り落と大工事が行われるそうです。
下は昨年同時期での切り崩される予定のカーラ岳です。
このカーラ岳は石垣島を象徴する由緒ある山であるだけに、単に自然景観や地形が破壊されるにとどまらず、歴史的・地質学的なランドマークを石垣島は喪失することになりかねません。
撮影:青山貞一 Nikon Cool Pix S10 2009.3.26
今回、現場を訪れて見ると遂にカーラ岳の東側を大幅に削除する工事がはじまっていました。
黄砂でご覧の通りぼんやりしか見えませんが、カーラ岳の右側にユンボなどの重機があるのが確認できます。
無惨にもカーラだけが壊されています
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 22 March 2010
ついに、カーラ岳も見納めでしょうか?
別の角度から撮影した2010年3月のカーラ岳
撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 22 March 2010
つづく
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