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生ごみで花いっぱいの街作り
〜生ごみ100%資源化を
めざすプロジェクト発足会〜

(2)
池田こみち 鷹取敦

 2010年4月12日
初出;独立系メディア
 
無断転載禁

■吉田義枝 戸田市 環境クリーン室 副主幹



 生ごみで花いっぱいの街作りについて。

 戸田は競艇と倉庫の街、グレーの街と言われていた。他の市の職員に「グレーの街」と言われて「なにっ」と思ってから私の格闘が始まった。

 この4月に11万8千人。私が入った時は約6万人。戸田市には農業委員会はない、農地がない、全てが住宅地と工業地帯。駅が3つ出来てマンションが立ち並んでいる。大規模マンションがどんどん建っている。市民の平均年齢は37.5歳ぐらい。

 競艇の収入はほとんどない。だから競艇があるから金があると思ったら大間違い。でも財源力、貯蓄力では埼玉県でトップ、借金のない市では全国で5、6番目。それでも明日は夕張市かと思うほど職員は危機感を持って臨んでいる。

 私が来たときに17分別を始めた。平成14年4月に6ヶ月の周知をして始めた。1日に百件くらい電話が鳴って、分別が分からない、どうしてこんなことをするのかとおしかりと苦情があったが6ヶ月でピタっと止んだ。市民が慣れてきたから。

 戸田市はごみ有料化しない、粗大ゴミは一律200円(家電5品目以外)。物価も安い。転入者がどんどん入ってくる。保育園が足りない、学校を建てる。学校の校舎に人気があり転入者が増える。

 環境クリーン課から環境クリーン室に昇格した。ISO、政策、工場の公害、騒音、カラスの苦情から、リサイクル、生ごみ問題の解決まで担当している。分別表を毎日見て、どこに力を入れればいいか、どうやったら37.5歳の人達に分別してもらって、有料化しないでできるか考えている。麻薬と同じで、袋に一旦お金をかけ始めると減らすには額を上げる以外になくなる。上げれば一時的に減るが、間違いなくまた増える。それを取るか、分別を推し進めるかは、市民の一人一人の気持ちの矛先がどっちに向くか、どうすれば戸田市が生き延びられるか、合併しないでずっと生き延びるための施策を考えなければならない。うちの市長は、お金を使うのは誰でも出来る、頭を使え、アイディアを活かせと言う。

 生ごみを分別するのは至難の業。田舎は農地があるから出来るが、戸田市は持ち家率も埼玉県でも最低、みんなマンション、ベランダしかない。今日配ったパンフレット「リサイクルフラワーセンター」に載っている生ごみのバケツを無償で貸し出す。中には「ぼかし」(500円くらいする)もセット。野菜くずをいれていっぱいになったらフラワーセンターに持ってきてもらう。お花24個と交換する。

 フラワーセンターは1000万円くらいちょっとで立ち上げた。県の職員を2年間かけて説得した。850万円/2年間。150万円で26,000ポット/年の花を作ると言った。8500で4回作ればと思った。100個のバケツで生ごみを持ってくる人はいないと言いたそうな人がいっぱいいたが、100個バケツを購入した。

 40個/月、30個/月とバケツが出た。「タダ」というのは恐ろしいほどのコマーシャル。次から100個くらいみんなバケツを借りに来て、足りなくなった。余った予算で100個追加した。こうなると止まらない。市民がみんな宣伝してくれる。

 バケツを追加で買ったのはいいが、今度は花が足りなくなった。花は3ヶ月育てるのにかかる。今度は花の交換チケットを配った。「今はいい花がない。季節ものなので、2ヶ月後に来てください」と言うことにした。チケットが100枚出た。市長に「もう持ちません。このフラワーセンターでは持ちません。」と言った。

 フラワーセンターを大きくするためには議会を通さなければならない。議会にNOと言われない方法を考えた。障害者と高齢者に花の生産をお願いすることにした。議員が反対するわけがない。全ての党派が賛成した。2500坪、2億3千万円近いお金で戸田市と蕨市の衛生センターの裏の敷地にフラワーセンターを作った。

 2市でやるのは困難が伴う。財政力が違うから。障害者を1週間に100名やとった。知的障害者と全国でも稀だが精神障害者もお願いした。時給735円、埼玉県の保証する最低賃金。3時間×20日/月以上働けば、自分の年金と合わせてグループホームに自分で行ける。親の援助なしで行ける。地元でずっと生きていける。彼らに仕事の場を与えることがなくてはならないが、どこの行政もお金がかかるから出来ない。なぜそれが出来たかといえば、生ごみをごみピットから外して燃やさない分、灰が減って処分場の費用が減る、助燃剤が減る、空気を汚さなくなる。だから、障害者と高齢者を雇ってもお釣りが来る。

 以前は草津、今は山形が最終処分地。今後、どこに行けばいいのか。今、センターの処理代は7億8千万円かかっている。これを燃やすのに使うのがいいのか、全部分別するのに使うのがいいのか、お釣りがなにか、空気を汚さないこと。生ごみを分別しつづけ燃えるごみを減らしつづければ、分別のお金は7億8千万円を減らした分で十分にまかなえる、市民の雇用にも繋がる、と議員に説明している。

 うちの広報に生ごみは宝だと言いなさい、ごみを制するものは市を制する、市の予算を制すると言いなさい、と言っている。環境と福祉の融合、ごみを分別して障害者と高齢者に手助けしていただく、戸田市はシルバーをプラチナに変える。

 資源の売り上げも20万円/月、年240万円だった。そんな馬鹿なことはないとネットで市場を調べて、最高に売れた年で年6000万円売り上げた。うち3200万円は町会に人口比で還元した。残りは貯金した、まもなく2億円になる。大口定期の利率が少しでも高いところでお願いしますと、会計管理者(収入役)に言った。職員はお金がもうかるわけではないが、それでは行政が務まらない。自分の貯金通帳だと思って、すこしでも利息の高いところで運用することを職員も考えるべき。行政はお金を使うことばかりが能ではない。

 私たちはゴミをお金にかえる。みなさんがゴミを捨てた瞬間に、お金を食うものになるか、お金を生み出すものになるか決まる。戸田市が変える。戸田市が埼玉を変える。戸田市が日本を変える、世界を変える。戸田市から発信しようではありませんかといって立ち上がるのは皆さん。私は魔法をかけるだけ。職員も一緒にやらなければついてこない。花を植えたり草むしりも四つんばいになってやってきた。

 堆肥化の機械1500万円ぐらいのものをショーウィンドウに飾ってあったものなので400万円くらい値下げしてもらった。市の職員が値切るんですかと言われたがそれはあたりまえ。1000万円で結構ですと言われた。本当に節約した。温室だけは立派なものを作った。障害者と高齢者を雇った。何が足りないかといえば園芸の技術者。ディズニーランドで障害者を雇ってやっている「舞浜サービス」という子会社の園芸技術者、ドイツ留学が決まっていた方にしつこく毎日電話して口説いて試験を受けてもらって来てもらった。

 イベント、町会、学校(今まで行政が買っていた)にフラワーセンターから花を提供する。1ポット10円から15円で出来る。学校に花を買っていたお金で節約できる分で障害者の雇用がまかなえる。

 人口が増えているのにピットのごみは減っている。重いごみを全部分別しなければならないから減っていく。200円徴収して収集した粗大ゴミは出来るだけ破砕しないで、直して出来るだけ売るようにした。300円、500円で入札して売る。余ったのはいくらでもいいから売る。ごみにするよりよっぽどいい。お金を使うのは誰でも出来る、お金を使わないでどうするか考える。ごみをピットに入れない、破砕機に入れない。それで人口が増えているのにごみは横ばい。

 転入者は入ってから粗大ゴミを捨てる、転出者は出る前に捨てる。200円で安いから。これを値上げしなきゃいけないという議論もあるが、とことんリサイクルすればいい。週末に即売会をやればいい。センターの人は土日に出てくるのをいやがっていたので、上に言って上から指示させた。売った中古家具は、粗大ゴミを回収している委託業者の週末に空いているトラックを使って数百円で運んであげればいい。

 市民がどうすればお金をかけないで楽しく住んでいただけるか。「住んで欲しい街」のレベルではなくて「出て行きたくない。住み続けたい街」。ごみを出すのもお金がかからない。その代わり「分別」していただく。

 マイバッグ、PETボトル2.5本分で出来ている。日野市はマイバッグを作って700枚売れたという。戸田市は2万枚売れた。どうして売れたか。市長にマイバッグを作ります、5万5千世帯の十分の一の5千枚売ります、その分、レジ袋が減りますと説明した。デザインは私がした。斜めになって魚、肉が出ないように底の幅を合わせた。長財布、携帯が入る深さ。自転車が入る。肩にかけられるようにした。TODA530UNDOU(戸田ごみゼロ運動)という文字を紀伊国屋のデザインを真似て入れた。持ち手が取れないように3回折り返し、くちゃっとならないように回りにステッチをかける。三つに折って畳むと内ポケットに入るようにした。

 戸田市は指定袋はない。レジ袋で出していい。レジ袋がダメなのはごみになるからであって、ゴミ袋としてリサイクルすれば問題ない。うちの隣のマーケットはレジ袋に2円つけてくれたので、みんなこの袋を持ってきてくれるようになった。

 市民の要望を、どうやってお金をかけないで出来るか、どうやったらお金を生み出せるか考えている。うちの係の職員には、税金泥棒にならないように、と言っている。市民がどこに税金が使われたいと思っているのか、なにも生み出さない焼却に7億8千万円もかけていいのか、考えなければ。公務員はクビにならないのが民間と違うところなのだから、失敗をおそれずに挑戦すればいい。自分の子ども達や孫達にいい空気を残しましょう。目標は高く遠くに持つ。

 市民の肩には、市民として戸田市の分別に沿ってください、そうすれば市の環境に協力している、エコにしていることになる、そこのモチベーションを持ってください、と言っている。一人一人が変われば12万人の戸田市が出来ないことはない、と言っている。

 今日配った再生紙で作ったティッシュボックスの口にはビニールを付けていない。箱の両側にはオーナーをみつけて65円/箱×1万箱作る規格を決めている。
3千箱を市が取って今回のような講演、啓発に使っている。なくなったらオーナーをまた見つける。乱発はしない、欲しがってもあげない。

 役所では鼻かんだ汚れた紙以外は全部リサイクルに毎週水曜日に古紙問屋に持って行っている。ゴミ箱はほとんど撤去した。これがお金になると市民に言っている。これがお金になれば焼却の7億8千万円からの引き算になる。PETも飲み干して外ラベルをはがしてきれいにして分けて出せばA、B、CランクのAランクになる。Aならお金になる、Bは普通、Cはお金がかかる。どこを選ぶか捨てる時に考えてもらう。

 団扇も作っている。お祭りの団扇、裏が白い団扇(お絵かき用)等がある。白い団扇は学校教材用。これは捨てられない。反対側には牛乳パックを洗って広げて出すと書いてある。牛乳パックは高価な紙として売れる。子どもから親に言わせる。これ(広告)も一社独占でやる。乱発しない、そうすると次の時に競争になる。企画を買い上げてもらう。1枚120円出してもらっている。材料と障害者の工賃が入っている。駅の清掃にも障害者の雇用が仕様書に入っている。

 障害者も共に市民である。施設に入れてお金がかかるというだけでなく、彼らが必要とされているんだ、という仕事を差し上げることが必要。

 市民にとってどうすればいいか、公務員はカウンターの中にいるが、カウンターの外側から問いかけたらどうすればいいかを考えることで市が変わる。

 戸田市は今、本気モードで生ごみを分別します。4月2日から機械で堆肥化。約15トンをピットに入れなかった。蕨市はやってなくて戸田市がやっているのだから分担金を安くしてもらわないと。そこの切り込みを入れていきたい。

 友好都市、美里町に堆肥(今、成分を調べている)を持っていて、白菜を作り、戸田市民にあげる。みんなの生ごみが有機野菜になった。口コミで勝手に広がってくれる。「産直です」といったらロータリークラブが手を挙げた。今後は花、野菜、地域通貨と取り替えられるようにしていきたい。街のお金が循環する。国の言う「循環型社会」は口だけ。

 生ごみを堆肥化し、野菜の畑、花、市民農園への無料配布、畜産(豚)に使っていきたい。

 戸田市のフラワーセンター、屋上緑化を見に来てください。損はさせません。市役所の職員の方と見に来てください。


つづく