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 環境省所管の公益法人に
メスを入れるA

独法評価委員会

池田こみち
 環境行政改革フォーラム副代表

2009年6月24日 無断転載禁


 その@では、「行政と密接な関係にある公益法人への支出の無駄の集中点検について」(環境省発表)をもとに、93ある環境省所管の公益法人の中から随意契約の実績があった20団体を抽出して点検が行われたことを紹介した。この点検を誰がどのように行ったかが重要なことは間違いない。特例民法法人(社団・財団)に関する調査は引き続き継続中である。

 そのAでは、折しも、環境省における独立行政法人評価委員会の任期切れにともなって、新たな委員が任命されたとの報道発表があったので、特例民法法人(社団・財団)ではなく、独立行政法人を評価する制度について見てみたい。

 環境省所管の独立行政法人は、国立環境研究所と環境再生保全機構の二つである。環境再生保全機構は「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月19日閣議決定)に基づき、旧公害健康被害補償予防協会(公健協会)及び旧環境事業団について、事業、組織の見直しが行われ、新たに「独立行政法人 環境再生保全機構」として平成16年4月1日に設立された組織である。


−−−以下環境省の報道発表内容

「環境省独立行政法人評価委員会」の委員が任命されました。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=11264

 独立行政法人通則法第12条の規定に基づき環境省に置くこととされた「独立行政法人評価委員会」の委員の任期が平成21年6月20日をもって任期満了となることから、平成21年6月22日付けをもって、委員の任命を行うものです。 委員は学識経験のある者のうちから環境大臣が任命することとされ、任期は2年とされています。

<独立行政法人評価委員会委員名簿> 氏名(敬称略) 職名
有田 芳子  主婦連合会環境部長
沖  陽子  国立大学法人岡山大学大学院環境学研究科教授
桑野 園子  国立大学法人大阪大学名誉教授
佐野 角夫  ソニー株式会社社友
高月  紘  石川県立大学生物資源工学研究所教授
西間 三馨  独立行政法人国立病院機構福岡病院名誉院長
松尾 友矩  東洋大学長
−−−−

 任命された委員の職務(所掌事務)は法律で次のように定められている。

−−−−
[1] 業務の評価
・各事業年度ごとの業務実績の評価
・中期目標の期間における業務実績の評価(5年に1度)
[2] 勧告
・各事業年度の評価において、必要があると認める際の独立行政法人に対する業務改善等勧告
[3]意見及び通知
・環境大臣による「中期目標の策定」、「中期計画の認可」「業務方法書の認可」「財務諸表の承認」「剰余金の使途の承認」等に際しての意見 ・役員報酬について環境大臣からの通知に対する意見の申し出 ・総務省に設置される「政策評価・独立行政法人評価委員会」への [1]の評価結果の通知
−−−−
出典:環境省独立行政法人評価委員会について
   http://www.env.go.jp/council/15dokuho/gaiyo15.html
  (2)所掌事務(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第12条第2項等)


 所掌事務からして、委員の責任は極めて思い。例えば、国立環境研究所の毎年の業務実績が妥当かどうかについて、どのような資料に基づいて、どのような評価が行われるのか想像してみる。

 おそらく、事務局、すなわち環境省が用意した資料に目を通し、特段の意見がなければそれが了承されることになるといった程度のものではないのだろうか。民間研究機関や大学、海外の研究機関に所属する研究者などでなければ、本来の評価は難しいのではないだろうか。

 ここで、最も重要なことは、これらの委員の選出、任命を環境省が自ら行っていることである。日隅一雄翻訳、青山貞一監修の「審議会革命−英国の公職コミッショナー制度に学ぶ」(現代書館)にも紹介されているイギリスの公職コミッショナー制度を改めて見直してみた。

 今回の評価委員会に限らず、日本の行政が設置する審議会・委員会などの学識経験者を中心とするいわゆる委員は、多くの場合すべて、行政、すなわち役人が選び、首長あるいは大臣が任命する形となっている。これでは、行政にとって厳しい意見を出すような委員は選ばれるはずもなく、第三者的な立場からの意見が反映されることは期待できない。ましてや業務を評価する委員会の委員がお手盛りでは話にならない。

 しかし、イギリスでは、公職コミッショナー制度により、日本とは全く違った制度のもと、開かれた人選が行われ、透明性の高い議論と活動が行われている。以下、「審議会革命」より関連部分を抜粋する。

−−−−
「この制度は、詳細なルールで手続を透明化し、「独立した査定者」という第三者の関与のもと、公募による実力本位の人選を実現するものである。 

この制度を取り入れ、審議会の委員を公募した上で、実力本位で採用することができたら、日本の審議会も本格的に「審議をする場」に変貌するだろう。本当の専門家やNGOのメンバーらが採用され、法案の方向性や概要を決める段階から市民の声が反映される仕組みが実現するのだから。少なくとも、変な法律が知らないところでできてしまうってことはなくなる。」
−−−−

 一部自治体では、住民からの委員の公募を行っているところもあるが、そうしたケースは限られているし、住民から選ぶ場合でも選ぶのはやはり行政である。

 財政が厳しいなかで、どのような研究活動、業務が行われてきたのか、費用対効果の視点に加えて、国際的に通用するものかどうかといった質、国家国民のためになる社会性のある事業かどうか、情報公開や情報提供のあり方等も含めた国民的な視点からの評価も必要だろう。

 各委員の発言等について、議事録を確認してみる必要がありそうだ。


つづく