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政権交代後、堰を切ったように八ッ場ダムの工事現場にマスコミが押し寄せ、今や全国知らない人がいないほど有名になった群馬県吾妻渓谷だが、そこは昔から美しい自然景観と豊かな自然の宝庫であり、群馬県だけでなく、関東地域、さらには日本全体にとっても貴重な自然環境資源であったはずである。 そこでは、この57年間、治水・利水のためと言いながら、ひたすら土木工事で自然破壊が続けられ、今や四季折々の美しい自然や渓谷の風景とは似てもにつかないコンクリート構造物が乱立する場となってしまった。まさに痛々しいとはこのことである。 ダムの建設には道路も必要なことは分かるが、なぜこの規模、この設計の道路や橋梁なのか、理解に苦しむほど過剰な工事が目に付く。 先週末、この間の八ッ場ダムの各種土木工事がいかに利権にまみれたものであったかを示す証拠として、工事規模の大小や内容を問わず、極めて不自然な高落札率で身内の公益法人に発注していたことが報じられた。 東京新聞の記事を以下に引用する。(記事全文は枠内を参照のこと)
まず、橋梁建設やトンネル建設といった内容が明確な土木工事はまだしも、「現場技術業務委託」といった内容が不明確な業務が98〜99%の高落札率で天下りの多い公益法人に発注されている。 しかもその額は一億円と巨額である。新聞ではその公益法人の名前が伏せられていたが、調べてみると、社団法人関東建設弘済会もそのひとつである。 なおかつ、入札どころか随意契約で発注されていたことも分かった。 以下に「平成18年度八ッ場ダム現場技術補助業務(その4)」の随意契約結果及び契約の内容が公表されている。この案件は、予定額103,246,500円(税込み)に対して、99,750,000円(税込み)で受注しているので受注額は予定額の96.6%となる。随意契約にも拘わらず、気持ち安くしているのもわざとらしい。 http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/nyuusatsu/nyusatsu/imgs/consul/h180403a.pdf 随意契約とした理由の説明の中に次のような一文がある。 「・・・上記業者は、ダム建設事業に関する幅広い知識と行政的な経験を持ち、ダムや河川に関するもの以外に国有林野に関する知識に加え、また、地元情勢にも精通していることから、本業務の目的を的確に実施できる唯一の契約対象である。」と。これをお手盛りと言わずして何というのだろうか。新聞に寄れば、「関東地方整備局は「八ッ場ダムの関連工事で、過去に談合と認定した事実はない」としている。」とのことだが、自分で自分のお手盛りを認めることはあり得ないので第三者のしっかりとした検証と調査が必要なことは間違いない。 事ほど左様に、八ッ場ダムを食い物にしてきた国土交通省だが、そのうえさらに、「ダム湖周辺施設実施検討業務」(落札金額四千万円)、「八ッ場ダム自然環境保全対策検討業務」(同三千九十万円)を100%の入札率で発注している。 入札率が100%ということは、官製談合そのものであり、言い訳のしようがない。しかもその内容が「自然環境保全対策検討調査」というからお笑いである。 さんざん自然を破壊しておいて、保全対策検討もないものだ。おそらく、橋梁や道路などで分断された動物の生息域や生活圏を守るため、動物のための横断通路や獣道を整備する必要がある、などというさらなるハードな工事を誘導するものではないかと勘ぐられても仕方がない。実際、私たちが沖縄のやんばる地域を視察したとき、「動物が横切るための通路を整備しています」という工事を何度も見かけているからだ。 本来、自然環境、動植物の生態系をできるだけ保全しながら地域と共生してこそ生きるすべがあるというのに、タコが自分の足を食べるように自然を破壊しつくし、人工的な構造物ばかり作り続けても地元に未来はない。 自民党時代、国交省は、八ッ場ダムに関してこれまで投入してきた費用の内訳を黒塗りにして開示していなかったようだが、新政権はまずはこの間の税金の使われ方を徹底的に明らかにし、全国の公共事業見直しのための検証材料とすべきである。 吾妻渓谷で進む八ツ場ダム関連工事(長野原町) 撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10 2008.11.1 YOU TUBE映像 八ツ場ダム工事現場にて 2008年9月 撮影:青山貞一、Victor Digital Hi-Visonカメラ GR-HD1 ――以下記事
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